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群像について ユグドラシルいわく  作者: まいち
第2幕 第1場 謎のウォーキー・ドゥーヒキー
15/58

(15)歳月について プーカいわく

 かりそめの芸術は、崩壊によって完成を迎えるのかもしれない。巨大木像はバランスが最悪で、今日も今日とてはかなく消えていく。ケダモノが咆哮するような崩壊音をとどろかせて。


「ンヴエエエエエェェェェエ……ェエェェェ……ェェ……ェ……」


 大木が枯れ、倒壊していく。片ツノのヒツジ顔に亀裂が走り、アゴが外れるように木のコブが割れる。亀裂は徐々に全身へと回っていき、無数の木片を雨と降らせた。


「ドンガラガラ、ガッシャンッ……ドンガラガラ……ガララ……」


 そんな雨の中には、ひとつの人影が。傘も差さずに悠々とシャツへそでを通すのは、わたしのおにいのパックだ。

 天気雨は通り過ぎ、枯れた丸太の山に腰をかけてひと息つくパック。そんな背中へコッソリと忍び寄り、わたしはパックの肩をつついた。


「つんつん……」


 いつものシカメッツラが、のっそりとこちらへ向く。その目に映してあげるのは、とっても、とーっても愛らしいねぎらいの笑顔。


「にま!」


 わたしたちがユグレナの隠れ里で暮らすようになってから、それなりに時が経った。もちろんその当時のことなんて覚えてないけれど、とにかくストレンジャーのオシアンなんてシワシワのおじいになってしまうほどの、そんな年月。かわいそうな短命のストレンジャーとは違い、ユグレナの血肉を継いでいるわたしとパックは、花も恥じらう青年のお年頃になっていた。

 わたしは、わたしのスカートをバサっと蹴り上げた。そのまま片足で振り向き、身体を後ろへ投げだす。おにいの丸まった背中へ、どっかと無事に着席。


「ぎゅぎゅうぅ……」


 お尻の座り位置を調整するためにのしかかりながら、わたしは言った。


「追っかけないのぉ? 放っといちゃってぇ」


 そこそこ座り具合のよくなったイスが、いつものぶっきらぼうな調子で返してきた。


「あんだけ脅かしときゃ、十分だろ」

「いいのかなぁー。またアーチンに怒られるよぉ?」

「んー」


 パックはあんまりストレンジャー狩りに積極的ではなく、なんやかんやとアーチンにどやされることがよくあった。まったく仕方がないおにいだ。やる気がないのなら――


「よし、わたしが行こう!……っかな」


 パックの肩から立ち上がり、わたしは直角に折った両腕を前後に構えた。交互に振って勇ましく行進を始める。


「ぶんッ……ぶん!……」


 ただし両足は共に大地へ貼りつけ、その場に不動のままで。今まさに旅立とうとする妹を、あろうことか適当にあしらうおにい。


「言ってらぁ」

「本当に行くもん。さて……っとぉ!」

「へいへい」

「うおーッ!」


 湧き上がるトキの声が、わたし自身を鼓舞する。この旅路は困難なものになるだろう。しかし栄光を我が手につかむまで、決してあきらめるわけにはいかない。

 わたしの裸足が第一歩目を踏みしめる。


「のっし!」


 そして第二歩目。さらに三歩目。


「のっしッ……のっしッ……」


 大股開きで堂々と、カメの速度で歩みを進める。パックは立ち上がり、ヤレヤレなんて顔をしながら言った。


「分かったよ、オレが行くから――」


 わたしの歩みを阻むおにいに告ぐ。


「いってらっしゃい!」

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