第9話 勇者側のズレ
同時刻。
勇者パーティー側――
勇者パーティーは、予定通り廃城へ向かっていた。
かつては四人だった隊列も、今では半分に減っている。
レイを追放し、ミリアまでレイの後を追ってしまったので、戦力だけでなく空気までもが変わってしまっていた。
道中は、拍子抜けするほど静かだった。
風が木々の葉を揺らす音と、靴底が地面を踏みしめる音だけが、やけに耳に残る。
「……妙だな」
不意にアルドは呟いた。
その声には拭いきれない不安が滲んでいた。
「敵の気配がまるで感じられない。」
アルドは足を止め、周囲を見渡してみる。
後方には、さきほどまで歩いてきた街道が細く伸び、その向こうに小さく町の影が見える。
手前には鬱蒼とした林が広がり、そこから何かが飛び出してきてもおかしくない雰囲気を醸し出している。
再び前方へ振り返る。
この道は大人が五、六人横に並んで歩くのがギリギリくらいの幅となっており、左右は崖となっていた。
落下したら、まず無事では済まないだろう。
逃げ場のない一本道だ。
「罠かもね」
リナは震える腕を押さえながら冷静に言った。
アルド同様、異変を肌で感じ取っているようで、今までにないほど緊張している面持ちだった。
本来なら、この辺りで襲撃があってもおかしくはない。
行商人の馬車が盗賊に襲われることがあるため、ギルドへの依頼が絶えないからだ。
だが――
何も起きない。
誰も現れないことが、逆にこれほどまでに不自然だとは思わなかった。
「……進むぞ」
こういう時は嫌なことが脳裏をよぎる。
あれこれ考えていても仕方がない。
違和感を抱えたまま、廃城へと足を早めた。
「――どうしてこうなった……やつらはどこに……」
「何ブツブツ言ってるの?」
訝しげな視線を感じた。隣を見ると腕を組んだリナが目を細めてアルドを見ていた。
「いや、何でもない」
様々な思考を張り巡らせていた矢先、ついに廃城へ辿り着いた。
「ようやく廃城に着いたわね」
「そうだな」
勇者パーティーの二人が辿り着いた廃城は、今まで何度も見てきたそれとは全く異なる外観だった。
「……なんだ、これは」
門は歪み、城壁はねじ曲がり、窓という窓は不自然な角度で傾いている。
まるで空間そのものが歪んでいるかのように、城全体が異様に捻じれていた。
そしてその城門付近に――
“見たことのない何か”があった。
「何あれ?」
「こんなの、聞いてないぞ」
ギルドからの依頼によると、魔王軍が廃城を乗っ取り、勢力を蓄えているので、その勢力が強大な力になる前に討ってほしいとのことだった。
当初の予定では、使えないレイを追放し、新たに仲間を追加しようと考えていたが、魔王軍がどれほどの戦力か未知数だったため、立候補する者は現れなかった。
痺れを切らしたアルドは、偵察部隊として様子を見に行くことを提案し、帰還後、討伐部隊を結成するため、勇敢な者を仲間に引き入れて廃城へ向かう計画を思いついたのだ。
しかし、予定外でミリアまで追いかけて行ってしまったので、アルドたちの戦力は大幅ダウンとなってしまい、皆の前で提案した手前、仕方なく二人で行くことになってしまった。
だが――
「歪んだ城門近くに別の入口があるぞ!」
アルドたちを手招いてるかのようにぽっかりと空間が空いていた。
「あの中に入れってことかしら?」
アルドは一瞬躊躇したが、心を奮い立たせて言った。
「とりあえず進むしかないな……」
ミリアは頷くと、アルドと歩幅を合わせながら一歩、また一歩と入口へ向かって行った。
どうしてこうなったのか――
それは、本来起こる″はず″だった予定が変化したからだ。
静かに二人の頭上には“文字″が浮かび上がってきた。
彼らには見えない表示――
【アルドの死亡予定:再計算中】
【リナの瀕死の重傷予定:再計算中】
まるで運命そのものが書き換えられるかのように。
だが、現時点では二人に知る由も無かった。
鳥がざわめく。
凍てつくような風が吹く……
感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております!
評価は↓の☆☆☆☆☆を押していただければ出来ます!
あなたの評価がモチベーションアップに繋がります!
よろしくお願いいたしますm(_ _)m




