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『追放された【無能鑑定士】実は″死亡フラグ″が見えるだけでした〜気付いたら世界の運命を変えていた件〜』  作者: 法月蓮


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第2話 監視と選択

 【観測者:接続中】


「……は?」


 さっき見えた文字が消えずに残っていた。

 いや、それどころか――

 更に増えている。


 【対象:レイ】

 【状態:対象を監視中】

 【レイ介入リスク:上昇中】


「……なんだよ、これ」


 思わず声に出る。

 今までの“フラグ”とは明らかに違う。

 説明じゃない。

 これは――誰かの視点だ。


「ちょっと、聞いてるの?」


 ミリアの声で我に返った。

 この表示について思考を張り巡らせていたら、いつの間にか集中し過ぎていたようだ。

 目の前には、腕を組んでこちらを睨む彼女。

 

「さっきの話、ちゃんと説明してよね」


 ……まずいな。

 完全に詰められている。

 だが、今はそれどころじゃない。

 視界の端で、文字がまた更新される。


 【ミリア:重要な分岐点に立たされる】

 【選択肢:真実を話す/隠す】


「……?」


 重要な分岐点?選択肢?

 また追加されやがった。

 一体なんなんだ?

 ――

 ミリアが近付いてきた。


「さっき、俺が未来を変えたとか言ってたけど、一体どういうこと?」


 ミリアは俺から目を逸らさない。

 嘘やごまかしは通じないといった表情だ。

 ――そして。

 視界には、分岐点の選択肢が表示されている。


 【選択:真実を話す】

 【結果:信頼度上昇】

 

 【選択:隠し通す】

 【結果:裏切りフラグ強化】


「……チッ」


 思わず舌打ちした。

 選ばされている。

 この二択しか選択肢が無いのか……


「どうしたの?」


 ミリアが訝しむ。

 ……仕方がない。

 俺は深呼吸をし、小さく息を吐いた。


「信じるかどうかは、お前に任せるが――」


 そう前置きして――


「どうやら俺の鑑定スキルは、起こる予定のことが見えるらしい……」


 ――

 ――

 ――

 ミリアは、俺の話を黙って聞いていた。

 途中で話の腰を折ることも、否定することもなく。

 ただずっと頷いてくれた……


「……つまり」


 暫くして、ミリアはゆっくりと口を開いた。


「レイは、先の先の未来まで見えるってこと?」


「いや、今の俺の能力だとそこまででは無い」


 俺は首を振った。


「“少し先の起こる予定”が見えるだけだ」


「少し先の起こる予定が見えるだけ……?」


 ミリアがオウム返しをした。

 思考を張り巡らせて理解しようとしている表情だった。

 恐らくこの世の中で、少し先の起こる予定を見ることが出来るスキルを持っている者はいないのかもしれないな。


「さっきのアルドの件もそうなの?」


「ああ、そうさ」


 俺は短めに答えた。


「このままだと三日後にあいつは死ぬ」


 空気が、わずかに張り詰めた。

 だがそれでもミリアは目を逸らさなかった。


「……それも、予定なの?」


「そう書いてある」


 俺は肩をすくめた。


「少なくとも、何もしなければな」


 ――

 ――

 ――

 数秒の沈黙。

 やがてミリアが、口を開いた。


「それって変えられるの?」


 その問いに、俺は一瞬言葉を詰まらせた。

 少し先の起こる予定を変えられた人間なんてこの世にいるのか?

 俺はもう一度さっきの表示を思い出す。

 死亡確率。

 裏切りフラグの分岐。

 そして――監視……


「……そんなことを成し遂げたヤツが世の中にいるのかも不明だ。正直、それを俺が成し遂げられるのかはわからない」


 胸中を打ち明けた。


「でも、少なくとも……」


 俺は視線を上げた。


 【選択:真実を話す】

 【結果:信頼度上昇】

 【ミリア:裏切りフラグが折られる寸前まで来ている】


「実は今、俺が選んだ選択肢によって、少しだけ変わったことがある」


 ミリアの表情が変わる。


「えっ? 本当?」


「ああ」


 確信はある。

 あの表示は見間違いじゃないはずだ。


「じゃあ……」


 ミリアは一歩詰め寄ってきた。


「アルドたちを助けられるかもしれないってこと?」


 ……その言葉に、少しだけ引っかかった。

 ″助ける″か……

 俺のことを追放したアイツらを助けるという選択肢に、俺は戸惑っていた。


「どうだろうな」


 俺は曖昧に答えてみた。


「結果的にそうなる可能性もあるが、そうならない可能性もある」


「はっきりしないのね」


「当たり前だ。変えられる保証なんてどこにも無いんだからな」


 俺は苦笑した。


「未来が見えるわけじゃない。あくまでもただの“予定表”だからな」


「予定表ね……」


 ミリアは少し考え込む仕草を見せる。

 そして――俺の顔を覗き込む。


「それでも」


 はっきりと言い切る。


「行く価値はあると思うの」


「……北の廃城にか?」


「そう」


 ミリアは迷い無く断言する。


「このまま何もしなければ、アルドは死んじゃうんでしょ?」


「恐らくそうなるな」


「だったら、ジタバタもがいた方がいい」


 シンプルな理屈だった。

 だが、全く間違ってはいない。


「レイは、どうしたいの?」


 ミリアが目をキラキラさせながら聞いてくる。

 そんな目をされたら断れないじゃないか……


「もちろん、決まってる!」


 俺は自信を持って答えた。


「死亡フラグが立ってるなら、それをへし折るまでだ!」


 それだけだ。それだけのはずだった……

 俺はこういう時のミリアに昔から弱い。


「……本当に本当に本気で言ってる?」


「ああ、本気だ」


 少なくとも、現時点では。

 ミリアはしばらく俺を見つめて――

 やがて、小さく息を吐いた。


「良かった! レイ一人に任せてられないわ。仕方ないわね、私も一緒に行ってあげる!」


「はぁ?」


 思わず聞き返してしまった。


「一人より、二人の方がいいでしょ?」


 同行するのが当たり前といった口調だ。


「それに――」


 一瞬だけ言葉を切り、そのまま続けた。


「わたし、確かめたいの。あなたの言ってることが、本当の話なのか」


 ……なるほどな。


 完全に信用したわけじゃない、ってことか。

 追放された身だからそれも仕方ないか。

 嘘を言って、みんなの興味を惹いているだけと思われるのも癪だな。


「好きにしろ。俺に止める権利は無い」


 俺はあえて突き放すように言った。

 ミリアは今も目を輝かせていた。

 その瞬間。

 視界に文字が浮かんできた。


 【裏切りフラグ:消滅】

 【同行フラグ:発生】


「……」


 やっぱり俺の選択で変わったか。

 良い方向に進んでいるのは間違いないようだ。


「どうしたの? 何かあった?」


 ミリアが首をかしげる。


「い、いや、何でもない」


 俺は軽く首を振った。

 ミリアには裏切りフラグの件は黙っておこうと思った。

 余計なことを考えさせたくないからだ。

 ……だが。

 問題はそこじゃない。

 視線を上の方へ向けた。

 そこにはまだ表示されている。


 【観測者:接続中】

 【監視レベル:上昇中】


 そして。

 新しく追加された一行。


 【次回介入予測:低】


「……は?」


 思わず眉をひそめる。

 介入?

 監視レベル上昇?

 分からないことが多すぎる――

 さらに文字が更新されていく。


 【訂正】

 【次回介入予測:低→高】


「……」


 変わった。

 俺の思考に反応したかのように。


「……なあ、ミリア。もし、この世界が誰かに見られているとしたらどう思う?」


 さすがに変な顔をされた。

 まあ、当然か。


「急に何言ってるの?」


「いや、なんでもない」


 今は言わない方がいい。

 下手に不安を煽るだけだ。


「とりあえず、行ってみよう」


 俺は歩き出した。

 街から北東にある廃城へ向かって。

 そして――

 “予定された少し先の未来”を変えるために。

 ――

 数歩進んだところで、足を止めた。

 視界の端に、また文字が現れたのだ。


 【イベント更新】

 【北東の廃城】

 【状態:未発生 → 変化→発生中】


「……変化?」


 思わず声が漏れる。

 そんな表示、初めて見た。

 その下に、ゆっくりと文字が浮かんできた。


 【難易度:C → B】

 【観測者の影響を確認中】


「……おいおい」


 思わず笑いそうになる。


「難易度が上がりやがった」


「難易度?」


 ミリアが不思議そうに聞いてきた。


「いや、こっちの話だ」


 俺は空を見上げた。

 もちろん、何もいない。

 ……はずなのに。

 妙な感覚だけが残る。

 見られているような。

 試されているような。


「……まあいい」


 小さく呟く。

 どうせやることは変わらない。

 フラグを見つけて、へし折る。

 それだけだ。

 ――たとえそれが、

 “誰かの考えたシナリオ”だとしても。

 その瞬間。

 最後に、ひとつだけ。

 静かに文字が浮かんだ。


 【観測者:興味を示しました】

お忙しい中、貴重なお時間を使ってここまでご覧いただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたなら本望です。

引き続きどうぞよろしくお願いします!

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