第19話 決死の覚悟
シルベスタインのいる場所から白い煙が立ち込めている。
やったのか?
――
――
――
「……ん!?」
そこにいるはずのシルベスタインがいなくなっていた。
もし倒していたとしても、その場にいなければおかしい。
どこに消えた?
俺は周囲を見渡す。
――
「ククククク。面白いショーを見せていただいて光栄ですよ。ユーベラスさん」
シルベスタインの声が聞こえてきた。
どこだ、どこにいる?
風に吹かれて白い煙が徐々に薄くなっていく。
「あれは!?」
そこから現れた姿はユーベラスだった――
「ククククク。あの時私は、咄嗟にユーベラスさんと立ち位置を変えたのです。だから氷の刃は全てユーベラスさんが受けてくれたのですよ」
「なんだと!!」
オルカンは憤慨している。
俺も同じ気持ちだった。
ユーベラスはシルベスタインが立っていた場所で崩れ落ちていた。
ここからでは生死までは分からなかった。
「ユーベラス!」《「ユーベラスさん!」》
みんなが大声でユーベラスに声をかける。
だが、ユーベラスはピクリとも動かなかった。
「ククククク。残念ですね。まぁ、私の身代わりになって彼も本望じゃないでしょ……」
シルベスタインがお喋りに夢中になっていると、オルカンは猛スピードでシルベスタインへ斬りかかっていた。
ザシュッ!
シュバババババ!
俺の目では追えないほどの連撃がシルベスタインに向かって繰り出されている。
これならいけるか!?
――
だが、シルベスタインはその連撃よりも素早く動いて傷一つ受けていない様子だった。
オルカンのあの動きでもダメージを与えることができないなんて……
オルカンは一旦引き下がった。
「ククククク。あなた達の動きは本当に鈍間ですね。もうちょっと張り合いがないと楽しめないじゃないですか」
余裕を見せつけてきやがる。
文字が浮かび上がってきた。
【観測者:接続中】
【オルカンの死亡フラグ:危険度ピーク】
【死亡確率:70%→90%】
【レイの介入次第で確率変化】
まずいぞ。
俺が介入しているのに、死亡確率が上がってやがる。
どういうことだ?
まだ俺は攻撃をしていない。
攻撃をすれば何か変わるのか?
それともオルカンの盾になれとでも言うのか?
どう介入すれば最善を尽くせるのか、全く見当も付かなかった。
せめてシルベスタインの弱点が分かれば……
「我の攻撃も受けたまえ。ファイヤーボール!」
ファルが得意のファイヤーボールを放ってくれた。
火属性ならどうだ?
パンッ!
シルベスタインの杖の一振りで、一瞬にしてファイヤーボールは消滅した。
「なんの真似ですか? 虫が飛んできたくらいにしか私には感じられませんでした」
絶対絶命じゃないのか!?
ファルの火属性攻撃魔法でも何も与えられないなんて……
よし、俺も鍛錬の成果を見せてやる!
ダダッ!
「はぁーーーーーー!!」
パーン!
触れることさえ出来なかった。
俺は一瞬で弾かれてしまった。
体勢を元に戻してシルベスタインを見つめる。
「皆さん、もう思い残すことは無いですか? そろそろ飽きてきてしまいましたよ。終わりにしようかなと思いまして……」
オルカンは闘気を溜め始めている。
凄い闘気量だ。
「いや、まだだ。俺のこの一撃を受け止められるかな?」
オルカンは全身全霊の闘気を込めている様子だ。
シルベスタインはその様子を見て、薄ら笑いをしながら待ち構えている。
辺りから地響きが起こり始めた。
オルカンの闘気はそれほど凄まじいということだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「さっきの身代わりなんてつまらない技を使わずに、真正面から受け取れ!」
「面白そうですね。良いでしょう。特別に受け止めて差し上げます」
「一撃必殺。稲妻雷鳴斬り!」
グォーーーーーーーーーン!!
凄まじい威力の雷攻撃が凄まじいスピードでシルベスタインへと向かっていった。
「ククククク。なかなかやりますね。流石は元勇者殿」
シルベスタインは雷の塊のような攻撃を両手でまともに受け止めている。
さっきまでの余裕のある言葉は出てきていない。
オルカンを見くびっていて、計算が狂ったか?
――
――
――
だんだんとその塊が小さくなっていくのが見て分かった。
「ククククク。私の中に取り込んでいるのですよ」
「なんだと!」
オルカンの渾身の一撃がシルベスタインによって飲み込まれていった。
オルカンは肩で息をしながら呆然としている。
恐らく全ての力をあの一撃に込めたのだろう。
「ククククク。私は雷攻撃が得意なんですよ。だから雷の攻撃をされても吸収出来てしまうのです」
「くっ……」
オルカンは意気消沈している。
雷の塊は全てシルベスタインに吸収され、跡形もなくなっていた。
もう打つ手は残されていないのか。
「では、あなたにそっくりそのままお返しして差し上げますね」
シルベスタインはオルカンの放った雷の塊よりも更に大きな塊を作り出した。
その塊を余裕の笑みを浮かべながらオルカンに向かって放った。
「オルカン!」
俺は咄嗟にオルカンの元へと駆け寄る。
「来るな! 俺がここを離れたら街が消滅してしまう!俺が防いでる間にお前たちは逃げろ!」
「そんなこと出来ない! オルカンを一人置いていくなんて出来るわけないだろ!」
「うっ!」
身体に少しの痛みと、浮いている感覚があった。
気付いたら俺はユーベラスの近くまで飛ばされていた。
オルカンの残り僅かな闘気で俺を弾き飛ばしてくれたのだ。
「お前たち、もっともっと強くなれ! 俺はあの世からお前たちのことを見守ってるぞ。達者でな!」
オルカンは残っている力を振り絞って雷の塊を受け止めていた。
俺はオルカンの指示に従うことにした。
まずはユーベラスの生死を確かめなければ。
シルベスタインに気付かれないよう、匍匐前進でユーベラスの元へと向かう。
「ユーベラス、生きてますか?」
俺は小声でユーベラスに語りかける。
ユーベラスからは反応が無い。
右手を伸ばして身体をさすってみた。
「うっ……」
息があったようだ。
俺は急いで今の状況を伝えた。
ユーベラスは理解が早かった。
オルカンを一人残して、テレポートしてもらうように頼んだ。
オルカンは今も必死に雷の塊が街に当たらないよう耐えている。
オルカン……
「テレポート……」
シュン
俺たちは広大な草原から移動していた。
ここはどこだ?
「オルカーン!」
ナッツは子供のように泣きじゃくっていた。
ミリア、ファル、フロックもそれぞれ涙を流しながら物思いに耽っている。
当然、俺もそうだった。
自然と落涙しているのが頬を伝う液体の流れで分かる。
思い出が鮮明に甦ってくる。
鍛錬、食事、過去の話など、色々なことがあった。
まだまだ教えてもらいたいことが沢山あった。
おのれ、シルベスタインめ。
必ず敵を取ってやる。
俺は深く心に刻んだ。
そういえばユーベラスがまずい状況だった。
俺は涙を拭ってユーベラスに声をかける。
「ユーベラス、動けますか!?」
俺は問いかける。
「うぅ……なんとかな」
ユーベラスは深手の傷を負っているように見えるが、命に別状は無いといった感じなのか。
「とりあえずみんなで運んで、手当てしよう!」
力持ちのフロックにユーベラスを担いでもらい、俺たちは近くに街や村が無いか探した。
遠目に明かりが見えた。
「よし、あそこに明かりが見える。行ってみよう!」
俺たちはそこまで歩くことにした。
周りは砂だらけ、所謂砂漠というやつだ。
この辺り一帯、砂、砂、砂と、木や水といったものが確認できなかった。
一体どこにテレポートしたんだか……
あの状況ではそこまで言ってられなかったのかもしれないが。
どのくらいの時間歩いたのだろう。
ようやく街が見えてきた。
俺たちは見知らぬ街の中へと進んでいく。
鑑定してみよう。
【鑑定結果:砂漠の街デザートタウン】
お忙しい中、貴重なお時間を使ってここまでご覧いただきありがとうございます。
面白いと思っていただけたなら本望です。
引き続きどうぞよろしくお願いします!




