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『追放された【無能鑑定士】実は″死亡フラグ″が見えるだけでした〜気付いたら世界の運命を変えていた件〜』  作者: 法月蓮


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第18話 招かれざる客

 オルカンは自分のことのように嬉しがっていた。

 この人が師匠で本当に良かったなと思った。

 他の元勇者パーティーの皆さんも祝福してくれている。


「俺はついにやったんですね!? 闘気が身体から出るようになったんですね!?」


「うむ。よくここまで頑張ったな」


 俺の中から力が湧いてくるのが分かる。

 今までにない、みなぎる力。

 込み上げてくる何か、言葉では上手く表現できない何かが溢れてくる。


「そこから更に発展させたのが、剣といった装備に闘気を送って解き放つ技だ」


 俺は試しにやってみる。


「はぁー!!」


 ――

 ――

 ――


 何も出てこない。


 もう一度――

 ――

 ――

 ――


 何度試してもやはり出てこない。


「まだ厳しいか……闘気を自在に操れるようになれば出来るはずだ」


 オルカンからのアドバイスはいつも的確だった。

 闘気を自在に操る……

 そんなこと出来るのか?


「おっ! ミリアもファルもフロックも出来るようになってきたな!」


 三人の身体から闘気が溢れてくるのが俺にも見えた。

 満足気にしているのが見て取れる。

 だが、やはり闘気を放出させることまでは出来ないようだ。


「闘気は中から湧き出てくるもので、それを外へ出すのが闘気の放出アルよ」


 武神ナッツだからこその説明に、一同は納得した。

 ナッツは武道を一通り抑えているので、身体の動かし方や五感を研ぎ澄ます方法など、かなり詳しかった。


「そうだな。魔法使いが魔法を使うのに似ているかもしれないな」


 大魔導士ユーベラスの説明は理路整然としている。

 こういう理屈で、こうすれば解き明かせるといった説明が分かりやすかった。


「神を信じ、我々が生きているということに喜びを感じ、幸せを相手に送る気持ちで解き放ってみては如何かな?」


 大神官のゾディは信仰心が強く、説明もどちらかと言えばそういう方面からの説明が多かった。


「一旦休憩にしよう! みんなで色んなことを言っても、逆に混乱させてしまうかもしれんからな」


 オルカンの言う通りだった。

 元勇者パーティーの皆様の説明で、分かったような分かってないような感覚だったからだ。

 頭では分かっているけど、身体が付いていかない。

 またその逆も然り、という感じだ。

 俺たち四人はその場で座り込んで、状況整理をしようと持ちかけた。

 ミリアは手応えを感じているが、何かが足りないと悩んでいた。

 ファルは元々レベルも高く、センスもあったが、あと一歩というところで躓いていると呟く。

 フロックは何が何やらという感じらしく、闘気が出るようになったのもまぐれという始末。

 俺も何か掴めそうで掴めないという歯痒さを感じていた。

 何が足りないんだろうか……

 ――

 その時、鑑定スキルを発動したわけではないのに、目の前に文字が表示された。


 【観測者:接続中】

 【オルカンの死亡フラグ:危険度上昇中】

 【死亡確率:60%→70%】

 【レイの介入次第で確率変化】

 

「……っ!?」


「おい、みんな。また観測者が俺に接続してきた。オルカンの死亡フラグが発生し始めている。みんなでオルカンを守るぞ」


 俺は小声で伝えた。

 あまり騒ぎすぎて、取り返しがつかなくなるのを避けたかったからだ。

 三人は頷き、自然体でオルカンらと接する方向で話がまとまった。

 敵はどこから来るのか?上から?下から?横から?

 それに、こんな穏やかな状況で、あんなに強いオルカンを殺すという未来が見えない。

 どうやって殺す?武器?魔法?

 考えても何も答えが出てこない。

 死亡フラグはいつ発生するのか?

 ――


「そろそろ休憩は終わりにしよう! 闘気を放出する練習の続きをしようじゃないか!」


 オルカンは楽しそうにしている。

 俺はその様子を見て安心した。

 まだ、オルカンが殺される未来は起こっていないのだから。


 グゴグゲゴゴゴ……


 なんか奇妙な声が近くから聞こえてきた。

 俺は周囲を見渡す。

 何も異常は無い――はずだった。

 一人だけおかしな動きをしている人がいた。

 ――

 その人は……

 ――


「グゲ……グゴゴゴゴ? ググ……ゲゴゴゴ……」


 大神官ゾディが奇妙な声の犯人だった。

 その場にいた元勇者パーティーは一旦離れた。

 俺たちはその様子に呆然としていた。

 何がどうなった?


「グゲグゲ……ケッケッケ?」


 自我を保とうとしているのか、その場で静止していたかと思えば、急に両手を振り回したり奇妙な動きをしている。


「ゾディ、大丈夫か? どうした!?」


 オルカンは叫んだ。

 だが、ゾディは全く反応しない。

 突然、変な角度に折れ曲がった。

 そのまま四つん這いになり、手足をバタつかせている。


「ゾディ!」《「ゾディ!」》


 ユーベラスとナッツもゾディに呼びかけた。


「私は魔王軍の一人、シルベスタインと申します。以後お見知り置きを。コイツの肉体は一年前に既に私が奪っていました。この時を待っていたのです」


「なんだと!」


 オルカンは怒りを露わにしながら言った。

 誰だってそうなるだろう。

 自分と近しい人間が敵に乗っ取られたなら。


「我らにとってあなたは邪魔者なのです。レイさん、あなたもです。あなた達を同時に始末するタイミングを伺っていました。ところが、コイツの抵抗がなかなかに強く、鍛錬前に消すつもりでしたが、一ヶ月も要してしまったではないですか……」


 残念そうに語るその言葉一つ一つに、非情な残忍さが滲み出ていた。


「ここでは他の人も巻き込んでしまう! テレポート!」


 ユーベラスは即座に移動魔法を使った。

 目を開けると、俺たちは見渡す限りの草原地帯に移動していた。


「賢明ですね、あなた。あの街ごと消してしまおうと思っていましたが、とても残念です」


「ペラペラとよく喋るヤツだな」


 オルカンは憤りを隠せない様子だった。

 その口調から怒りが滲み出ている。

 恐らく、冷静にならないと相手の思う壺だという状況を悟り、感情を沈めているのだろう。

 この広さならみんなでかかれば十分勝機はありそうだ。


「あっ、一つ忠告しておきますね。レイさん、あなた方はパープルモンキーさんを倒したそうですね。あの方は魔王軍の中でも一般兵よりちょっと抜けたくらいの強さしか無かったのですよ。私とはレベルが全く違いますので」


 こいつ、何を言ってやがる!

 倒すのに苦労したあいつとは比べ物にならないくらい強いっていうのか……

 俺は鑑定してみた。


 【鑑定結果:シルベスタイン】

 【レベル:???】

 【得意技:???】

 【弱点:???】


「……くっ!?」


 名前以外何も見えなかった。

 俺の鑑定レベルではまだ無理なのか……


「さぁ、それではショータイムの始まりとしましょう」


 シルベスタインは持っていた杖を巧みに回転させた。

 すると、さっきまで快晴だった天候が曇り始めてきた。

 頬に冷たい雫が滴る。

 上空を見上げると、雨が降り始めていた。

 次第に雷がうねりを上げて鳴り始める。


「さぁ、あの世へ連れて行って差し上げましょう」


 雷が俺たちの周りに落ち始めた。


「みんな、避けろ!」


 オルカンは叫びながら指示をした。

 雷が落ちたところには穴が空いている。

 あんなの直撃したらたまったものじゃないぞ。

 俺は必死にかわした。

 広大な草原……障害物が無いため、この地形に移動したのは失敗だったかもしれない。


「ストーンブロック」


 フロックが岩の壁を作ってくれた。

 だが、その生成された岩はいとも簡単に砕け散った。


「おいどんのガードが効かないとは」


 フロックの強固な防御魔法が効かないなんて……

 俺たちは避け続けなければならないのか。


「あいやー! あたしの体術技をお見舞いしてくれるアル」


 ナッツは雷をヒョイヒョイ避けながら、俊敏な動きでシルベスタインに接近した。


「あいやー! とぉーー!」


 ついていくのがやっとだった。

 あの鍛錬のお陰でレベルアップしたことで、一ヶ月前には見えなかったナッツの動きが見えるようになった。

 シルベスタインはほぼ動かずにそれらの攻撃をかわしている。

 なんてヤツだ……


「そんな鈍間な動きで私に攻撃が当たると思ったのですか?」


 シルベスタインは涼しい顔をしながら言った。

 おいおい、恐らくこのメンバーで一番動きが速いナッツの攻撃を軽々かわすなんて。


「わたしも続いてみるわ!」


 ミリアは俺たち四人の中では一番動きが速い。

 二人の俊敏な動きなら多少は変わるのではないか?

 ――

 全く光景は変わっていなかった。

 どうしたら良いんだ……


「二人は離れて! 俺が魔法を使ってみる!」


 ユーベラスだ。

 大魔導士の魔力なら……


「アイスストーム!」


 凍えるような寒さが伝わってきた。

 シルベスタインの周りだけにその風が吹いている。

 降り注ぐ雨が氷の刃となってシルベスタインへと向けられた。


 ズザザザザザ!


 氷の刃が突き刺さる音が鳴り響く。

 あの量の氷の刃だ。無傷ではいられないはずだ。

 煙が立ち込めていて中の様子が分からなかった。

 やったのか?

 ――

 ――

お忙しい中、貴重なお時間を使ってここまでご覧いただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたなら本望です。

引き続きどうぞよろしくお願いします!

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