第17話 ギルドマスターとの鍛錬②
【鑑定結果:元勇者オルカン】
【レベル:777】
【得意技:剣技と雷魔法】
「えーーーーー!!!あなたが元勇者だったんですね!!!」
俺は目玉が飛び出るほど驚いた。
まさか目の前にいるこの人が元勇者だったなんて。
しかも、オルカンって言ったらあの伝説の勇者じゃないか!
冒険者をしているなら知らない人はいない、それほど有名な人が今目の前にいるなんて――
俺は思わず興奮してしまった。
「バレちまったか! お前、鑑定士だったんだな」
オルカンは照れ笑いしながら語り出した。
そうだ。俺たちはスキルとか特に伝えずに依頼を受けたんだった。
そりゃ、知らないわけだ。
「昔のことだからよ。あんまりペラペラと周りの連中に語るようなもんじゃねーだろ」
普通なら俺が元勇者だー!などと言いふらしてもおかしくない。この人は特に偉ぶらず、自然体でとても人間ができている。
だからこそ、勇者だったのかもしれないな。
オルカンによれば、元魔王らを討伐した後、メンバーそれぞれが自分のやりたい方向へと進んでいったらしい。
オルカンは国を守るためにギルドを設立し、冒険者の育成や周辺の平和維持などが自分の使命と感じて現在に至るそうだ。
「まぁ、俺の昔話は興味があったらいつでも聞かせてやるから、今は鍛錬に励むぞ」
俺とミリアは朝食の時間までオルカンにしごかれた。
◇
俺とミリアは部屋に戻ってファルとフロックを起こしに行った。
フロックは寝起きが悪く、家が壊れるんじゃないかと思うほどの揺れを感じながらなんとか起こすことができた。
ミリアによると、人型のファルはとてもお上品にすやすや寝ていたそうで、起こすのも楽だったらしい。
みんなが揃ったところで、食事スペースへと向かった。
各自適当に席に着く。目の前には料理が綺麗に並べられていた。
俺たちが料理を見つめているのを奥さんは感じ取ったようだ。
「どうぞ、召し上がれ」
俺たちは挨拶をして、食べ始めた。
オルカンの奥さんが作ってくれた手料理は格別だった。
こんな美味しい料理を毎日食べながら鍛錬できたら最高だろう。
「ごちそうさまでした!」
あっという間だった。
俺たちはペロリと平らげてしまった。
余程お腹が空いていたのだろう。
「奥さん、とっても美味しかったです! 今度料理教えてください!」
ミリアはそうお願いすると、奥さんは快諾していた。
確かに、ミリアがこれほどの料理を作れるようになると、我々の冒険もより一層向上しそうだ。
「さぁ、腹も満たされたところで、午後の鍛錬とでもいくか!」
俺たちはオルカンに誘導されて稽古場へと戻った。
「今度は俺の奥義を伝授してやろう」
奥義……
なんとも良い響きだ。
俺たちには決め技という強烈な技が無かった。
ただ普通に切り、ただ普通に戦うだけ。
オルカンからの提案は願ったり叶ったりだ。
「まずはこうやって闘気を出す。その後にこの纏った闘気を剣に伝えて……切る」
ドゴーーーーーン!
凄まじい破壊力だった。
事前に用意されていた巻藁は木っ端微塵になった。
「今のは相当加減したがな。まぁ、こんな感じだ」
オルカンはその後、闘気を出すやり方、それを剣に伝える方法など、事細かに教えてくれた。
「そもそも闘気が出ないわ……」
ミリアは呟く。
俺含めて他のみんなも同様の状況だった。
「闘気は鍛錬によって生まれてくるものだからなぁ。まだ早かったか。それなら鍛錬を……」
シュン!
オルカンが喋っていると、目の前に見知らぬ三人が現れた。
「久しぶりだな、オルカン」
突然現れた一人がそう言った。
「おー! ユーベラス! おっ! ナッツにゾディも一緒か! 久しぶりだなー!」
名前を呼ばれた人物たちが、久しぶりの再会で談笑に花が咲いている。
とても仲が良いパーティーだったんだなと思った。
それなのに各自別々の道を歩むことになるなんて、人生何が起こるか分からないものだな。
「この方々が例の……」
ユーベラスはオルカンに質問した。
端正な顔立ちで、随分と落ち着いている方だな。
その辺を歩いているだけできっと女性なら声をかけたくなるくらい整った顔だ。
「そうだ! 俺の命が危ないと教えてくれてな。ただ、どう見ても弱そうだったから俺たちで鍛錬してやろうと思ってだな」
オルカンは楽しそうに語った。
弱そう……
確かにそうだ。何も反論できる余地はない。
レベルの差もそうだが、守ると言っておいて、守られる側になったら本末転倒だ。
それにしても、自分の命が狙われているというのに、随分余裕がある。
余程自信があるのか、それとも……
「あいやー! あたしにも喋らせろい!」
ナッツと呼ばれた女性が口を挟んだ。
可愛らしい顔に似合わず押しが強そうだ。
格好から見て、明らかに武道に精通している感じがする。
「私もよろしいかな」
ゾディという名を名乗った紳士みたいな方。
独特の雰囲気を出していて、何かの信仰をしていそうな格好をしている。
このメンバーの中だと一人だけ浮いていると感じた。
俺はいつも通り順番に鑑定をしてみる。
【鑑定結果:元大魔導士ユーベラス】
【レベル:755】
【得意技:魔法全般、テレポート】
【鑑定結果:元武神ナッツ】
【レベル:760】
【得意技:体術技全般】
【鑑定結果:元大神官ゾディ】
【レベル:???】
【得意技:???】
おいおい。
こちらの御三方も伝説の方々じゃないか。
冒険者の間では語り継がれていたので知らない人はいないほどの有名人だった。
ユーベラスは大魔導士の名の如く、火、水、風、土など、あらゆる属性の魔法を使いこなし、行ったことがある場所へ周囲の人含めて移動することができるテレポートを得意としている。
テレポートは数万人に一人くらいしか習得できない超レア魔法だったため、冒険者からは憧れの存在として語られてきた。
ナッツは己の肉体を極限まで強化し、剣や鎧などの装備すら素手で破壊できる、武道家の頂点を極めし者として、武器防具を装備して戦うことが苦手な人達の目標とされる存在だ。
まさかこんなに可愛らしく、一見細くて貧弱そうな方がそこまでのパワーを秘めているなんて夢にも思わないだろう。
ゾディは大神官として、バフデバフ、状態異常回復などのプロフェッショナルで、サポーターとしてパーティーメンバーには欠かせない存在だ。
″ゾディ無くして冒険ならず″とまで言わしめたサポーターだったため、冒険者を志す者がパーティーを組む場合、神官のスキルを持っている者が人気だった。
ゾディだけレベルも得意技も見えなかったのは、大神官の能力で守られているからなのか……
やはり伝説の勇者パーティーは凄い人揃いだな。
「みんな揃ったことだし、早速鍛錬の続きをしようか」
この後俺たちは、元勇者パーティーの面々から各自の能力に合った鍛錬やアドバイスを授かった。
だが、一朝一夕では習得することなど難しく、夕刻を迎えたため、初日はお開きとなった。
「明日から忙しくなるぞ! 今日はしっかりと休んでおくが良い」
元勇者パーティーと一つ屋根の下で過ごせることに興奮していたが、鍛錬の疲れが溜まっていたのでとりあえずお風呂に入ることにした。
お風呂を出ると、夕食の時間になっていた。
みんなが集まり、談笑しながらお腹を満たす。
今まで何をしていたか、これからどうするのか、など各自の心境も一緒に聞くことができた。
その話の中で気になることもいくつかあったが、今はあまり気に留めないようにした。
「さあ、明日も朝から鍛錬だ! みんな早く寝ると良い」
オルカンに促され、各自部屋に戻ることにした。
俺はベッドに横たわると、今日一日のことを振り返った。
闘気の出し方……
ユーベラスのテレポート……
みんな凄いな……
夕食の時の会話を振り返る。
ユーベラスは現在魔法学校の校長をされていて、魔法適正のある生徒に様々な魔法を教えているそうだ。
ナッツは道場を開いて、体術適正のある生徒に武道を教えているとのこと。
ゾディは信仰心が強くなりすぎたため、山奥で一人静かに暮らしながら精神を清めているらしい。
唯一ゾディだけが一人の世界に入ってしまっているのが気になった。
まぁ、それぞれの道を極めし者というのは、それぞれ思うところがあるのだろう。
――
俺たちはその後一ヶ月間鍛錬に励み続けた。
「どうだ。そろそろ闘気が出るようになってきた頃か?」
オルカンは言う。
俺たちはだいぶ強くなったと思う。
だが、未だに闘気を出せた者はいなかった。
俺は自分の中にある″何か″を引き出そうとした。
全てを身体中から解き放つように……
何かが湧き出てくる感覚がある。
◇
あなたにはわたしがついてるわ……
それを信じなさい……
さあ、今こそ力を解き放つ瞬間よ……
◇
また″何か″の声が聞こえてくる。
どこか懐かしい声。
この声の主は一体誰なんだろう。
グゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
力がみなぎってくる。
「おー! レイ、やったな! お前から闘気が出てくるのが分かるぞ」
オルカンは嬉しそうにはしゃいでいる。
俺はついにやったのか?
お忙しい中、貴重なお時間を使ってここまでご覧いただきありがとうございます。
面白いと思っていただけたなら本望です。
引き続きどうぞよろしくお願いします!




