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『追放された【無能鑑定士】実は″死亡フラグ″が見えるだけでした〜気付いたら世界の運命を変えていた件〜』  作者: 法月蓮


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第16話 ギルドマスターとの鍛錬

 ギルドマスターは身長が高い分、歩幅も長かった。

 俺たちは早足気味に歩いている。

 何軒の家を通り過ぎただろう。

 割と奥の方に大きな家が見えた。


「あそこだ! そんなに遠くなかっただろう?」


「い、いや。だいぶ遠いです」


 マスターの歩幅なら遠く感じないのだろう。

 一般的な身長だと追いつくのが大変だった。

 そうこうしてる間に玄関まで辿り着いた。


「さあ、上がってくれ」


 俺たちは家の中に招いてもらった。


「あら、あなた。今日は早いわね。あらっ? そちらの皆様は?」


「ああ、今日から俺の鍛錬に付き合ってくれることになった冒険者御一行だ」


「初めまして。レイと申します」


 各自簡単な挨拶が始まった。

 マスターは結婚して奥さんと子供一人の三人暮らしらしい。


 タタタタタタタタ……


 走ってこちらに向かってくる音が聞こえてきた。


「わぁ! おいら、とーちゃんの息子のライムっていうんだ! よろしくな!」


「おいおい、お客さんに向かってその口の利き方はないだろう」


「いえ、お気になさらず」


 マスターのお子さんはとても元気そうな男の子だった。

 将来はマスターのように屈強な体付きの大男になるのか……

 想像しただけで恐ろしくなってきた。


「風呂とトイレはあそこに、食事スペースはこっちだ。俺たちの部屋はあそこにあるから、他に空いてる部屋を好きに使ってくれて良いぞ」


 マスターはテキパキと指を差しながら説明してくれた。

 家は2階建で、部屋数はかなりあった。

 恐らく、元勇者パーティーや来訪者などをもてなすために部屋数を多くしたのだろう。

 とりあえず荷物を置きたい。

 俺たちはお礼を言って、適当な部屋を選んだ。

 部屋の中はシンプルで、寝泊まりするのには何も不自由しなさそうだった。


「ふぅ。疲れたな」


「そうね。立て続けに戦闘してたからなぁ。とりあえずお風呂入ってくるね」


 ミリアは嬉しそうに走っていった。

 俺たちはミリアの帰りを待つことにした。

 ……

 ……

 ……

 ……

 やっぱり女性のお風呂は長いな。

 そんなことを考えていると、ミリアが戻ってきていた。


「お待たせ! お風呂とっても気持ちよかったよ! レイたちも入ってきたら?」


 そうだな。

 数日入れていなかった。

 気分転換に入ってくるか。


「じゃあ、俺も入ってくるぜ」


「いってらっしゃーい」


 俺はお風呂場へと向かう。

 中は一人で入るには十分過ぎるほど広かった。

 手際よく髪と体を洗い、湯船に浸かる。


「はぁ〜。気持ち良いな。今までの疲れが癒やされるようだ」


 思わず独り言を呟いてしまった。

 十分体が温まったので、俺はお風呂を上がることにした。

 部屋に戻ると三人とものんびりしていた。

 

「ファルとフロックはどうする?」


 二人は首を横にブルブル振っていた。

 どうやら、お風呂に入るという概念がないそうだ。

 そもそも体臭という類のものすら無いらしい。

 便利な生き物だな。


「明日から大変だろうから、そろそろ寝るか」


「そうね。私は隣の部屋で寝るね」


 俺は軽く頷いた。

 異性と一緒に寝るのは抵抗があって当然だろう。


「我もミリアと同じ部屋で寝ることにしよう」


 意外だったのはファルの言葉だった。

 性別不明だからどっちで寝たら良いか分からないというのも頷けるが、やっぱりファルは女性なんじゃないのか……

 まぁ、どっちでも良いけどな。

 この世界は自由でもあり、不自由でもある。

 自由……不自由……

 ――

 ――

 ――


 チュンチュン

 チュンチュンチュン


 いつの間にか寝てしまっていたらしい。

 気付いたらフロックのいびきだけが部屋中に響き渡っていた。

 まだ起こすには早いと思ったので、一人で部屋を出て様子を見に行くことにした。

 一階の方から芳しい匂いが漂ってきた。

 誰かが何か作っているのか?


「あらっ、レイ。起きるの早いのね」


 背後からミリアの声がした。


「ああ。意識は起きてるつもりだったから、明るくなって目が覚めたんだろう」


 疲れ果てて寝たことに気付かなかった時はいつもこうだ。


「ちょっと様子を見つつ風でも浴びてこようと思ってたところだ」


「わたしも行く!」


 俺は首を縦に振り、一階へと向かって歩き出した。

 食事スペースを見ると、マスターの奥さんが手料理に腕を振るっていた。


「良い匂いね。朝食が楽しみだわ」


 ミリアはピョンピョン飛び跳ねながら言った。

 そのまま玄関へ向かい、外に出た。


「はぁ! てや! とぉ!」


 外に出ると、何やら声が聞こえてきた。

 俺はその声の方へ向かった。

 ちょうど家の裏側に稽古場が見えた。

 マスターのお子さん――確か名はライムと言ったな。

 ライムが木刀で素振りしていた。


「ライム、こんな朝早くから素振りなんて偉いな」


 こんな小さな子供が朝から鍛錬に励むなんて、将来が楽しみだな。


「おー! レイの兄ちゃん! どうだ、おいらの素振り凄いだろ!」


 俺は手を叩いて賞賛した。


「おいら、将来強くなって父ちゃんみたいになりてーんだ!」


 目標とする存在が近くにいて、それが実の父親というのは恵まれた環境にいる。

 この子はきっと良いスキルを授かるだろうと思った。


「そうだ! 今からおいらと勝負しろ!」


「んっ!?」


 ライムは立てかけてある木刀を指差し、俺たちにお願いしてきた。


「いやいや、まだ早いんじゃないか?」


 流石に歳の差がありすぎる。

 弱いものいじめはしたくない。


「あー! おいらを馬鹿にしてるなー! おいら強いんだぞ!」


「わかったわ! わたしで良ければお相手してあげる!」


 ミリアは木刀置き場へ向かいながら言った。

 流石に手加減はするだろう……


「やったぜ! おいら、本気で行くから、ミリアも本気で来いよ!」


 年上なのに相変わらず呼び捨てだ。

 まぁ、この年代の子ならみんなそうなのかもしれない。


「良いわよ。わたしの剣捌き、よく見てなさい!」


 バチバチ!

 バンバン!

 ガキーン!


 凄い気迫だ。

 ミリアの素早い太刀筋をライムが反応している。

 あの子、意外とやるな。


「ミリア、やっぱり強いな。色々修羅場を潜ってきてるって感じがした」


「ライムもやるわね。わたしの攻撃を全て防ぐなんて」


 二人ともお互いを賞賛している。


 パチパチパチパチ


 後方から拍手が聞こえてきた。


「朝から鍛錬するなんて偉いな!お前たち」


 声の主はマスターだった。


「俺も若い頃はライムのように朝から晩まで鍛錬したものだ」


 マスターはしみじみと語った。

 ライムはお父さんの元へ駆け寄ると、頭を撫でられ嬉しそうな表情をしていた。


「そうだな。今のお前らの力を知っておきたい。俺とも手合わせ願えぬか?」


 マスターは笑顔で言う。

 俺もマスターがどれほどか気になっていたのでちょうど良い。


「じゃあ、まずは俺からお願いします!」


 俺は剣術自体は苦手分野だった。

 魔法なんてもっての外だ。

 だからこそ、それ以外の鑑定スキルが選ばれたのであろう――


「うむ。わかった。本気できたまえ」


 闘気が伝わってくる。

 なんだ、この迫力は。

 人間からこれほどの圧を感じたことは今までなかった。

 これが元勇者パーティーの力なのか。


「いきます!」


 俺は右斜め上から切りかかった。

 微動だにしないマスターの左肩を剣先が捉えた――


「はぁーーーーーーー!!!」


「うわーーーーーーー!!!」


 俺は跳ね返されて、空中で回転しながら地面に叩きつけられた。

 なんとも言えない痛みが身体中に広がった。


「ハッハッハッハッ。まだ俺は何もしていないぞ。こんなものか」


「くっ……」


 元勇者パーティーのメンバーと言えど、だいぶ昔の話と聞いていたので見くびっていた。

 まさか闘気だけでここまでなんて。


「わたしもいきます!」


 ミリアは俺よりも遥かに剣技に優れている。

 その上俊敏さも併せ持っているので、勝機はあるはず――


「きゃーーー!」


 俺の目では途中までしか追えなかった。

 ミリアの素早い動き、滑らかな斬撃の数々。

 だが、結果は俺と同じだった。


「お前ら、筋はありそうだな。俺が鍛え直してやろう」


 元勇者パーティーは化け物揃いなのか!?

 こんなに強い人間がいるなんて想像もしてなかったぜ。

 興味が湧いたので鑑定してみることにした。


 【鑑定結果:元勇者オルカン】

 【レベル:777】

 【得意技:剣技と雷魔法】


 おいおい、マジかよ……

 元勇者パーティーメンバーで、現在はギルドマスターをしているこの人が、元″勇者″だったなんて……

お忙しい中、貴重なお時間を使ってここまでご覧いただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたなら本望です。

引き続きどうぞよろしくお願いします!

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