第11話 勝者の代償
「たす……けて……」
倒したはずの″それ″から声が聞こえてきた。
俺は耳を傾けた。
「我は……何者じゃ……」
「うわっ! なんか喋りだしたぞ!」
みんなに確認するが、首を横に振るばかりで、今の声は俺にしか聞こえていなかったようだ。
じっと見つめてみる。
すると――
キュイーーーーーーーン!!
目を開けていられないくらいの眩しい光と共に、甲高い音が聞こえる。
俺はとっさに手をかざして光を防いだ。
――
静寂が訪れる。
そろそろ大丈夫か。
恐る恐る目を開けてみた。
さっきまでとは何も変わっていない景色……のように思えた。
再び″それ″に目を向けると蠢動を始めていた。
右に捻ったかと思えば、左に捻る、不思議な動きをしている。
その流れを静かに見守っていると――
「キュピ!」
「うわっ! なんだ!!」
さっきまで″それ″だったものが、なんと赤い火の玉のような形に変化した。
「キュピピー!」
「おいおい、一体なんなんだよ……」
奇抜な鳴き声が聞こえてきた。
「おいお前、我を仲間に加えろ!」
「おーー! 喋ったぞ」
さっきまでの可愛い鳴き声はどこにいったんだ。
開口一番それかよ。
なんだか随分偉そうなヤツだな……
「おい聞いてるのか! 我はきっとお前の助けになるぞよ!」
なんか言ってるよ……
「ミリア、こいつ仲間になりたいって言ってるけど、どうする?」
「可愛い! 私は賛成よ」
「おいおい、まじかよ」
俺は仕方なしにゴーサインを出した。
「キュピピピー!!!」
とても嬉しそうに笑っている。
「そうと決まれば、この子に名前を付けなきゃ」
ミリアは顎に手を当てて考え始めた。
なんかブツブツ言っている。
行ったり来たりし始めた。
――
「決めた! 火の玉だからヒノタンってどう?」
あれだけ考えて、これか……
思わず苦笑いした。
「それだと、そのまますぎないか?」
「なによ、他にもっと良い名前でもあるの?」
俺は天井を見上げながら考える。
そして再び火の玉を見つめた。
「ファイヤーソウル……ファイル……ファル!?」
「ファルってのはどうかな?」
「ソウルってどこから出てきたの??」
「魂みたいにも見えないか?」
「まぁ、そう見えなくもないけど……なんかそれもそのままじゃない?」
「お互い様だろ」
俺は少し照れ臭そうに言った。
「キュピピピピー!」
「おっ、なんか気に入ったみたいだな」
「我の名はファルじゃ。ファル様と呼べ」
コツン!
「調子に乗るんじゃない」
俺は軽く小突いた。
「イテテ。何すんだよ〜」
アハハハハハ《アハハハハハ》
みんな一斉に笑い出した。
――
「とんだお荷物を抱えることになったな」
アルドからそんな声が飛んでくる。
「これからの冒険が楽しみね」
リナも笑いながら言ってきた。
「こう見えても我は強いぞ」
負けじとファルがアピールしてきた。
「まぁ、本当に強いかはこれからの活躍次第だけどな。念のため鑑定してみるか」
俺はファルに向かって集中した。
【鑑定結果:ファル。レベル300。火属性攻撃が得意】
「レベル300!?」
確か俺がレベル60で、ミリアが62、アルドが65でリナが63だったような……
「俺たちの五倍もあるのかよ」
「だから言ったろう。我は強いのじゃ」
「ん? なんか他にも鑑定結果が出てきてるぞ」
【鑑定結果:ファル。隠しパラメータあり。隠し技あり。隠し形態あり。鑑定レベル不足のためこれ以上解析不能】
「おい、ファル。なんか鑑定結果に隠しパラメータと隠し技と隠し形態があるって出てるんだけど、今の俺の鑑定レベルじゃ見れないみたいなんだが、他に何かあるのか?」
「我は我自身のことをあまり知らないのじゃ」
「なんだと!?」
「まぁ、冒険していくうちに分かるかもしれないのぅ」
「楽観主義なヤツだな」
まぁ、レベルが分かっただけでも良しとするか。
「ところで……」
アルドが何か畏まった表情で話を始めた。
「お前のことを追放した手前もあるが、また仲間になってくれ……とは言えないよな?」
なんか畏まったと思ったらそれか。
「気持ちは嬉しいが、悪い、アルド。あの時追放されたことで気がついたんだ。今までお前の強さに惹かれて共に歩んで行きたいと思っていたが、それは俺が本当に望む冒険じゃなかったって……俺は俺の冒険をしたいと思ったんだ。だから、その誘いは断る。でも、またいずれ会おう」
俺はきっぱりと自分の意思を伝えた。
今までアルドたちにおんぶに抱っこの状態だった。
自分の力では何も出来ず、みんなのおかげでただ″なんとなく″日常が過ぎ、冒険した気になっていただけだった。
そんな状況を変えたいと心の奥底では思っていた。
追放がきっかけで能力が開花したように、それがきっかけで自分自身と向き合いたいと思うようになった。
「お前の信念は伝わったよ。今更虫が良すぎるし、自分探しの旅がしたいと言われたら俺もそこまで強く誘えないな」
アルドは頭をかきながら言った。
この人は俺の中で芽生えた気持ちまで汲んでくれた。
やっぱりこれぞ勇者という感じの人間だな。
だから俺はアルドに惹かれたんだろう……
「お前らの行く先々でいつか再会できることを願っている。俺たちも強くなるが、お前たちも強くなってろよな」
「ファル、わたしの火属性魔法の方が強くなるんだからね」
二人からは俺たちに″生きて再会しよう″という気持ちが伝わってきた。
「お前らも強くなってろよ!」
俺がそう伝えると、二人は笑顔のまま踵を返し、城門の方へと手を振りながら歩き出した。
二人のことが心配だから念のため鑑定してみるか。
【鑑定結果:アルドの生死不明】
【鑑定結果:リナの生死不明】
「ふぅ……」
安堵のため息が出る。
なんとか″予定された未来″を変えることができたようだな。
今の俺の能力だと、少し先の予定された未来しか見えない。
だが、それでいい。
二人が直近で死亡するというフラグは回避できたのだから――
「これからどうするの?」
ミリアは俺に問いかける。
「とりあえず街に戻ろう。まずは情報収集だ」
「それもそうね。わかったわ」
「キュピピー!」
俺たち二人と一匹?の冒険はここからが本当のスタートだ。
まだ何も分からない。
だからこそ真実を解き明かすために、俺は、俺たちは進んでいくしかない。
まだ見ぬ観測者を探しだして倒すために。
そして世界の平穏を取り戻すめに……
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