第12話 ギルドミッション発生
俺たちは元来た道を歩いていた。
林道を越え、街道を越え、街が見えてきた。
「特に変わりはなさそうね」
「街というのはこんなに賑やかな場所なんじゃな」
「そっかぁ、ファルは街とか初めてなんだね!」
ミリアとファルは他愛もない会話で盛り上がっている。
「街で活動するなら人型になったほうが動きやすそうじゃな」
ファルはそう言うと、変身を始めた。
ムクムクムク……
「じゃーん! どうじゃ、我の人型の姿は」
「えっ、お前……男じゃなかったのか?」
端正な顔立ち、スラっとした体型、髪は綺麗な赤髪で長く、胸の辺りも膨らんでるように見えなくもない……
「ホントだ! 私も男の子だと思ってた。実は女の子だったんだね」
ミリアも驚いた表情をしている。
「なんじゃ? 男の子? 女の子?」
「人間には男と女っていう性別っていうものがあるの」
「ふむふむ。我は性別なんていうものは存じておらぬぞ」
なるほど……
見た目は女性にも見えるが、性別を超越した存在なのか?
「そんなことより、なんか腹減ったぞ」
「そういえばそうね。色々動いたからお腹空いちゃったかも」
無理もない。
今まで散々歩いて、戦ってきて、何も口にしていなかった。
「そうだな。どっかで腹ごしらえするとするか!」
周りを見渡してみる。
左には武器屋、防具屋、魔法関係の雑貨屋、洋服屋などが立ち並ぶ。
右にはレストラン、酒場、野菜や魚や肉など食材を売ってるお店が立ち並んでいた。
「こっちだ!」
俺は右手を上げて方向を示した。
「よし、行くぜー!」
「行こー! 行こー!」
二人は嬉しそうに駆け出した。
「待ってくれ〜」
こういう時は動きが早い。
俺は二人の背中を追いかけた。
「こことか良いんじゃない?」
急にミリアが立ち止まった。
看板の方に目をやると【毎日飯店】という名前が書いてある。
なんかそのままだな。
「じゃあ、ここに入ろうか」
「我は食べられれば何でも良いぞよ」
とりあえず三人で暖簾を潜って中に入ってみることにした。
中に入ると受付の女性が出迎えてくれた。
そのまま四人席へ通される。
内装は特に目新しい装飾は無く、先客は二組。普通のレストランだった。
俺たちは着席すると同時にメニュー表に目が行った。
「わぁ、これとかこれも美味しそう」
「我は食べられれば良いので、何かオススメを頼んでくれたまえ」
二人は個性的な反応をしている。
俺はメニュー表の中から竜の柔らかステーキセットを注文することにした。
ミリアはスライムのそうめん風パスタとチョコレートパフェ、ファルは突撃バッファローの乳から取れたチーズをふんだんに使ったリゾットとその肉を使ったサイコロステーキを注文した。
「うわっ、これ美味しい。ほっぺが落ちそう」
ミリアは満面の笑みで美味しさを伝えてきた。
「うむ、悪くないのう。これが人間の食すものなのじゃな」
ファルは何もかもが初めてらしく、俺が食べ方を教えながら美味しそうに食べている。
「俺の方も上手いぞ」
竜のステーキは前に食べたことはあるが、この柔らか肉という謎の部位が、口の中でとろけるほどの柔らかさで、きっと食べた者を魅了するだろう。
「いや〜食った食った」
他の二人も満足気な表情をしている。
「さて、お腹も満たされたし、お会計を済ませてギルドに寄ってみるか」
二人は頷いて、立ち上がった。
俺はさっきの受付のお姉さんを呼んで会計を済ませた。
「ギルドは確か……あっちの方だったよね?」
ミリアが指差した方向は、ギルドや闘技場や城などがある場所だ。
「そうだな。このままそこの脇道を進めばすぐだ」
俺は道案内するために、みんなより先に歩き始めた。
脇道を真っ直ぐ進むとすぐに建物が見える。
【冒険者のための憩いのギルドへようこそ】
というキャッチフレーズが見えた。
俺たちはそのままスイングドアを開き、中へと足を踏み入れた。
中は賑やかだった。
ギルドの受付のお姉さんが大きな声で挨拶をしてくれた。
壁には複数枚のお尋ね者の貼り紙、テーブル席が5セット、ギルドの受付のお姉さんが一人。
奥には他のギルド店員さんが見える。
俺は真っ先にギルドの受付のお姉さんに声をかけた。
「突然ですが、観測者って何者かご存知ですか?」
ギルドのお姉さんはきょとんとした顔をしている。
何のことだか分からないという反応だ。
「俺たちはその観測者という得体の知れない何者かを探しているんだ」
俺は必死にアピールした。
「それなら奥にいるギルドマスターに相談してみるのも良いかも知れないわね。マスター! マスター!」
ギルドのお姉さんに呼ばれて奥の部屋から大男が近付いてきた。
見上げるくらい高い身長で、恐らく2mくらいはありそうだ。
丁寧に整えてある長い髭をこしらえ、筋肉隆々なたくましい身体付き。
歴戦を掻い潜ってきたと思わせる風貌に圧倒されそうになる。
「観測者に会うためのミッションを受けたいってーのはお前らか」
とてつもない迫力だ。
「新入りに頼めるミッションじゃねーが、受けたいヤツもいねーから、仕方ねー、お前らに受けてもらおう」
願ったり叶ったりだ。
俺たちはギルドマスターからミッション内容を聞いた。
どうやら、北西にある塔に魔物が現れたらしい。
塔には、元々その辺り周辺を観測する人がいたそうで、魔物が出現したことで困り果てていたという。
現在その観測者は、塔から近い場所で野宿しているらしく、一刻も早く魔物が退散しないか願っているそうだ。
――なんか観測者違いの気がしなくもないが……
「――ということだ。まずは観測者に会ってみてくれ」
ギルドマスターは″お前らならきっとやれる″と言わんばかりのグーサインを出した。
「なんか方向性が変わってきた気がするが、ギルドミッションをこなしていけば、何かしら情報に辿り着くかもしれないから、とりあえず向かってみよう」
あまり気は乗らないが、何もしないよりはマシだろう。
俺たちは北西へ向かうことにした。
北西から街を出ると、遠くの方に塔が見える。
「あれだな」
街道沿いに進んでいく。
周りは野原で、何か襲いかかってきてもすぐに気付けるくらい広大な土地が広がっていた。
ひたすら歩く。
目視できる距離にテントが見えた。
「あそこね!」
ミリアはやっと見つけた野宿場所を認識して嬉しそうに言った。
「キュピピー!」
いつの間にか火の玉スタイルに戻っていたファルがいつもの鳴き声を発した。
「さぁ、あと一息だ!」
俺は激励し、足早にそのテントまで近付いた。
「すみませーん。ギルドから依頼された者ですけど――」
テントがガサゴソと音を立てる。
その様子を観察していると、一人の老人が姿を現した。
「なんじゃね。君たちがギルドの使者かね」
「はい! そうです」
「わしはあの塔の観測者じゃ。あそこに魔物が現れて困っておる。なんとかしてくれ〜」
観測者のお爺さんは目を見開いて懇願する。
「分かりました。とりあえず今から行ってみます」
お爺さんは満面の笑みで一礼をした。
俺はその笑顔に少し違和感を覚えたが、気にせず塔へと向かって歩き出した。
ミリアとファルも付いてくる。
テントから塔までは割と近いところにあった。
「これが魔物が出現した塔か」
周りを見渡すと、特に変わりは無かった。
念のため鑑定しておくか。
【鑑定結果:ゴブリン10匹。レベル30】
「なんか大したこと無さそうな魔物だな」
「我が一瞬で終わらせてやろう」
ファルが自信満々に言ってきた。
「わかった。頼んだぞ、ファル」
塔の入り口を開けると、ゴブリンたちが一斉にこっちを見た。
グゥウェーーー!!
ゴブリンたちは変な奇声を発する。
その瞬間、ファルが攻撃を開始した。
「ファイヤーストーム!!」
辺り一帯に熱風が吹き、ゴブリンたちは奇声を発しながら消えていった。
「手応えがないぞよ」
「流石ファルだな! これで討伐は終わりか?」
俺は改めて鑑定をする。
【鑑定結果:塔自体が魔物化】
【危険度:70%】
「なんだと!」
更にぼんやりと表示が追加されていく――
【死亡フラグ発生:致死率30%】
「おいおい、マジかよ」
ファルという強力な戦力を持ってしても、死亡フラグが立つなんて……
″予定された未来″を乗り越えるべく俺は思考を張り巡らせた……
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