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出口のない手順書  作者: アル治


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5/19

第5話  選ばれた謝罪

いつも読んでいただきありがとうございます。

送られてきたURLにアクセスすると、簡素な画面が表示された。

そこにはこう書かれていた。

パワハラ。

いじめ。

セクハラ。

その他、お困りの方はご連絡ください。

私はしばらく画面を見つめていた。

そして、これまでのことを書いた。

任されるだけ任され、説明されなかったこと。

聞けば責められたこと。

調べることすら許されなかったこと。

責任を押しつけられそうになったこと。

工場長の不可解な言動。

全部、送った。

翌日、返信が届いた。

相談ありがとうございます。

内容を把握したいので、日時や状況を詳しくお聞かせください。

その文面を見たとき、少しだけ嬉しかった。

ちゃんと読んでもらえた。

ちゃんと聞こうとしてくれている。

そう思えた。

私は詳細を書いて送り返した。

するとさらに返信が来た。

ひとつ、ひとつ、より細かい確認だった。

いつ。

どこで。

誰が。

何を言ったか。

正直、少し面倒だった。

思い出したくないことを、何度も掘り返す作業だったからだ。

それでも答えた。

これで何かが変わるなら。

そう思っていた。

数度のやり取りのあと、ようやく決定的な返信が届いた。

これはパワハラの可能性が高いです。

工場長の上長である部長と話し合いのうえ、ご連絡いたします。

その文を読んだとき、胸が少し軽くなった。

やっと届いた。

そう思った。

しばらくして、今度は部長とのリモート面談の打診が届いた。

私は迷った。

こういうものは結局、うまく丸め込まれるだけではないか。

そんな不信感があった。

いつも相談している先輩に話すと、背中を押してくれた。

「ちゃんと話した方がいい。聞いてくれるはずだから」

私は面談を受けることにした。

画面越しの部長は、想像していたより静かに話を聞いてくれた。

途中で遮ることもなく、言い訳を挟むこともなく、最後まで。

そして面談の終わりに、はっきりと言った。

「これはパワハラに該当すると判断します」

その瞬間、私は心の底から安堵した。

嬉しかった。

これで終わる。

これでもう、こんなことはなくなる。

そう思った。

だが、その後届いたメールには、別の問いが書かれていた。

今回の件について、あなたが望むものを選択してください。

1、退職

2、配置転換

3、減給

4、謝罪

私は長い時間、画面を見つめた。

退職。

そこまで追い込みたいわけではない。

配置転換。

それも違う気がした。

減給。

そこまで求めたいわけでもなかった。

残ったのは、謝罪だった。

せめて、ひとこと。

悪かったと認めてもらえれば、それでよかった。

私は「4」を選んだ。

ほどなくして返信が届いた。

了解いたしました。

私は安心していた。

これで、きっと終わる。

そう信じていた。

1日が過ぎた。

2日が過ぎた。

1週間が過ぎた。

1か月が過ぎた。

何もなかった。

謝罪の「し」の字すらなかった。

それどころか、工場長は以前と変わらなかった。

ただ1つ違ったのは、時折先輩が冗談交じりに、

「それってパワハラじゃないですか?」

と言うようになったことだった。

そのたび工場長は、怯えたような顔をしてその場を離れた。

だが、それだけだった。

何も変わらない。

何も正されない。

謝罪は来ない。

私はそのとき、ようやく理解した。

この会社には相談窓口がある。

話を聞く人もいる。

問題を認定する仕組みもある。

だが、それでも何も変わらない。

出口は、たしかにそこにあるように見えた。

ただ、その扉は最初から開かないようにできていた。

気分は大丈夫でしょうか?読んでもらえるのは嬉しいのですが、精神気をつけてください。

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