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出口のない手順書  作者: アル治


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15/19

第15話  中立

いつも読んでいただきありがとうございました。

笹木に呼び出された。

神谷は正直、少しだけ違和感を覚えていた。

会議室へ入ると、笹木が座っている。

「今回の件、話聞きましょうか」

神谷は状況を説明した。

婆のミス。

工場長とのやり取り。

確認してくださいの押し問答。

机を叩いた事。

全部。

笹木は黙って聞いていた。

そして口を開く。

「なるほど。じゃあ周りに人が居なかったら、どうなってたか判らないね」

神谷は一瞬止まる。

「……え? どうにもなりませんよ」

笹木は首を振る。

「周りに人が居たから、大事に至らなかったんでしょ?」

神谷は呆れた。

「いやいや、何もないですよ。手は出さないから」

だが笹木は聞いていない。

「周りの人が止めてくれたんだね」

神谷は黙った。

――もういいや。

――付き合いきれない。

何を言っても、結論が最初から決まっている。

笹木は淡々と続ける。

「この事は上に報告するので、懲戒処分になると思う。最悪、懲戒免職だね」

神谷はもう驚かなかった。

「そうですか。判りました」

「まぁ、懲戒免職までは行かないと思うけどね。さすがに」

――懲戒免職。

――懲戒処分。

何回その言葉を言うんだ。

神谷は感情を消したまま答える。

「判りました」

そのまま面談は終わった。

翌月。

工場長が神谷の所へ来た。

「明日仕事どうかな?」

「普通ですけど」

「明日、13時から本部長が来るから面談ね」

神谷は少しだけ眉をひそめる。

「あー、判りました」

――こういうの、もっと事前に言うんじゃないのか?

翌日、13時。

本部長が来た。

神谷との面談になった。

本部長は穏やかな口調だった。

「初めまして。よろしくお願い致します」

「よろしくお願い致します」

本部長は軽く頷く。

「今回、私が来た理由は判りますよね?」

「判ってます」

「最初に言っておきますが、私がどうこうする訳じゃないですから。私は中立なので」

神谷は内心少し笑いそうになった。

――中立。

「そうなんですね。判りました」

本部長と状況の擦り合わせが始まった。

だが神谷は途中で気付く。

もう結論は決まっている。

本部長が口を開く。

「そうですか。かなり旗色が悪いですね。このままだと懲戒処分、酷いと免職ですね」

またその言葉だった。

神谷はもう感情が動かなかった。

「そうですか。判りました」

本部長が最後に聞く。

「他に何か言う事ありますか?」

神谷は考えた。

でも、すぐにやめた。

――何を言っても変わらない。

「特にありません」

「ではこれで終わりです。もし何かあれば、メールしてくれて大丈夫なので」

「判りました」

面談は終わった。

だが神谷は、この時まだ知らなかった。

後日、本当にメールを送った時。

“やっぱりな”

と思う出来事が待っている事を。

今後もよろしくお願い致します。

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