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出口のない手順書  作者: アル治


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14/19

第14話  確認してください

いつも読んでいただきありがとうございます。

神谷が我慢の限界を迎えてきます。

その日は何事もなく終わるはずだった。

夕方。

工場長が慌てた様子で神谷の所へやって来る。

「神谷さん、婆が間違えてたんですが」

神谷は手を止める。

「……え? 何を間違えるんですか?」

「ボトルに貼らなきゃいけないラベル、貼ってなかったんですが」

神谷は一瞬黙った。

「日報に書いてありますよね?」

「書いてありました」

工場長はすぐ続ける。

「でも間違えてたので、今後確認して貰えますか?」

神谷は眉をひそめた。

「確認って、何を確認するんですか?」

「ちゃんと出来ているかです。あと、初めての時はちゃんと教えてください」

神谷は理解が追い付かなかった。

「……え? 初めて? 何がですか?」

「今回の仕事、初めてって言ってましたよ」

「何回もやってますけど」

工場長は表情を変えずに言う。

「確認してください」

神谷の中で、何かが軋む。

「だから、何をですか?」

「色々含めて」

嘘。

誤魔化し。

丸投げ。

全部が混ざっていた。

神谷は苛立ちを抑えながら言う。

「じゃあ、日本語読めるか確認するんですか?」

「それも含めて確認してください」

「それも私がですか?」

「こちらでも確認しますが、教えてください」

神谷は頭を押さえた。

「その仕事、私は判らないですし、日本語を教えるんですか?」

工場長は同じ言葉を繰り返す。

「確認してください」

「だから、私は初めてなんです。婆は初めてじゃないんです!」

「確認してください」

その瞬間。

神谷の中で何かが切れた。

バンッ!!

机を叩く音が事務所に響く。

工場長が一歩引いた。

「……それは何ですか? 脅しですか?」

神谷は思わず笑いそうになる。

「何の脅しですか?」

「じゃあ何ですか?」

「イライラしたんですよ」

「イライラしたらやるんですか?」

神谷は即答した。

「やりますね」

――お前がイライラさせたんだろ。

喉まで出掛かったが、飲み込む。

工場長は呆れたように言う。

「そういうのはどうかと思いますけどね」

神谷は心の中で吐き捨てた。

――お前が言うな。

「……はい、すみません」

工場長は何も言わず去っていく。

だが神谷には判っていた。

絶対に笹木へ報告する。

数日後。

案の定、神谷は笹木に呼び出された。

読んでいただきありがとうございます。

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