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出口のない手順書  作者: アル治


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12/19

第12  面談

いつも読んでいただきありがとうございます。


違う工場から、新しい管理職が赴任してきた。

笹木部長。

交流が多い訳ではない。

だが、噂だけは流れてくる。

――かなり厄介な人らしい。

その噂は、赴任して2日で現実になる。

全社員との個人面談が始まった。

順番に呼ばれ、神谷の番になる。

会議室へ入ると、笹木部長が椅子に座っていた。

「笹木です。よろしく」

「神谷です。よろしくお願いします」

着席した瞬間だった。

笹木が唐突に口を開く。

「早速ですが、製造部で雰囲気を乱してるのは誰ですか?」

神谷は少し考え、答えた。

「私ですかね」

笹木が口元を歪める。

「ほう。それは何故?」

神谷は既に嫌な予感がしていた。

「話、聞いてるんですよね? それを言ってますよね?」

「あー、聞いてます。怒鳴るのは良くないよ」

神谷は眉をひそめる。

「え? 私は怒鳴ってないですよ」

「まぁまぁ、それはいいです」

話が通じない。

神谷は早くも疲れ始めていた。

すると笹木が、別の話を始める。

「あとは……フォークで設備壊してるよね?」

神谷は思い出す。

以前、強風の日にフォークリフトの荷が煽られ、設備へ接触した事故だった。

「はい。でもあれは事故です。風が強くて、当たった所が動いてしまって」

笹木が頷く。

「あー、自分は悪くないと?」

神谷は思わず言葉に詰まる。

「別にそういう訳では……。私がぶつけてますが、風は事故では?」

「風だから、自分は悪くないと。判りました」

神谷は違和感を覚えた。

――なんだこの人。考え方が変だ。

会話が成立していない。

神谷は諦め半分で言う。

「そういう事なら、フォーク乗る回数減らして、出来るだけ乗らないようにしますよ」

すると笹木が怪訝そうな顔をした。

「何の話?」

「え? だからフォークの――」

「その話終わってるから」

神谷は黙る。

頭の中が一瞬止まった。

意味が判らない。

笹木は時計を見る。

「あー、定時過ぎてるな。終わりにするよ。残業になっちゃうからね」

神谷は時計を見た。

既に15分以上過ぎている。

――いや、もう残業してますけど。

――残業付けるなってことか?

そう思ったが、口には出さなかった。

笹木が立ち上がる。

「じゃあ、まだ話残ってるので、来週にでももう1回面談ね」

神谷は冷めた声で答える。

「仕事の状況によります」

「判りました。じゃあ終わりです。お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

会議室を出る。

神谷には、明るい未来が一切見えなかった。

本当のブラック企業にお勤めの方には、大した事無いと思われますが、これはこれでなかなかキツいですよ。これからもよろしくお願い致します。

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