第11話 新人
いつも読んでいただきありがとうございます。
翌日、また事件は起きた。
神谷はパートへ資材準備を頼んでいた。
すると女性パートの1人が提案してくる。
「充填作業は私達だけでやれば、1日で終わると思います。だから、爺に準備を覚えてもらえませんか?」
理由は単純だった。
爺は普段から準備をしない。
ただ立っているだけ。
覚える気もない。
だから、1日かけてでも覚えさせたいという話だった。
神谷は了承した。
「判りました。1日あるので、判らなければいつでも聞きに来てください」
爺へそう伝え、作業を任せる。
最初のうちは2、3回ほど質問に来た。
だが、途中から来なくなった。
少しは慣れたのかと思っていた時だった。
何故か、工場長が現場へやって来る。
どうやら爺が「判らない」と工場長へ泣き付いたらしい。
神谷は事情を説明した。
工場長も一度は納得したように見えた。
だが、何故かそのまま工場長自身が爺と一緒に資材探しを始める。
しばらくして、工場長が神谷の所へ戻ってきた。
「資材が見当たりませんが、どこにありますか?」
神谷は一瞬言葉を失った。
「……それも覚えてもらいたいのですが?」
「探したのですが、無いんです」
神谷は頭を押さえたくなった。
「棚に名前付きのマグネット貼ってありますよね? 見つかりませんか?」
「無いですね」
仕方なく神谷も探しに向かう。
現場へ行くと、爺が棚を背にして突っ立っていた。
その姿を見た瞬間、神谷は落胆する。
爺の背後の棚。
そこに、探している資材名のマグネットが貼られていた。
さらに工場長まで合流する。
だが2人とも気付かない。
神谷は深く溜め息を吐いた。
「……後ろの、それは違うんですか?」
爺が振り返る。
「あ、あった」
何度もここを見ていたはずだった。
工場長も頷く。
「あー、こんな所にあったんですね」
神谷は頭を抱えた。
文字が読めないのか。
本当に老害だ。
その後、神谷は工場長へ呼び出される。
「ちゃんと教えてもらえませんか?」
神谷は耳を疑った。
「私がここの担当になって、一週間経ってませんよ? 私が教えるんですか?」
「社員でしょう?」
「社員でも、判らない物は教えられませんが。しかも名前付きのマグネットが貼ってあるのに見つけられないの、おかしくないですか?」
工場長は平然と言う。
「新人なんだから仕方ないでしょ?」
神谷の中で何かが切れそうになる。
――新人だと日本語読めないのか?
だが、その言葉は飲み込んだ。
「新人なら、この部署に関しては私の方が新人ですが? 爺はこの部署3年目ですよね?」
工場長が眉をひそめる。
「神谷さんはパートなんですか?」
「社員ですが?」
「なら、ちゃんと教えてください」
神谷は限界だった。
「……なら、酒井をちゃんと仕事出来るように教えてくださいよ。工場長が!」
工場長が黙る。
神谷はさらに言葉を重ねた。
「ちゃんと教えてくださいよ!」
工場長は露骨に視線を逸らした。
「それとこれは違います!」
「何が違うんですか?」
神谷が問い返す。
だが工場長は答えない。
「お願いします。ちゃんと教えてください。それでは」
そう言い残し、逃げるように立ち去った。
神谷は呆然と立ち尽くす。
いい加減、限界だった。
なんなんだ、この不平等は。
何故、自分ばかり責められる。
まるで、この会社全体から集中攻撃を受けているようだった。
書いている私がイライラしてきます。
皆さんは大丈夫ですか?無理しないで気をつけてください。




