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異世界転移した俺の覚醒度が測定不能だった  作者: 明日の今日
第一幕「廃都の聖痕者」
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第7話「聖痕者の食卓」

少し短い?かも?です。

いや、かわらないかも。

その日の昼過ぎ、古鍛冶場ふるかじばの中庭にセラフィーナが現れた。


 両手に籠を持っていた。


「血施院の帰りに厨房に寄ったら、今日は食材が余っているからって。少し多く作りすぎてしまって……」


 籠の中から、包んだ食べ物を何個も取り出した。


「こんなにですか」


「量の計算を間違えました!」


 遥は少し考えた。「中に入って食べましょうか」


---


 食堂に人が集まった。


 聖痕院せいこんいんの若い聖痕者せいこんしゃたちが、セラが持ってきた食事を囲んでいる。普段から訓練や任務で顔は知っているが、これだけ揃うのは珍しかった。


「なんかいつもと違う味がしますね」


「教会の厨房の食材ですよ。少し上品な感じです」


「うまい」


「もう一個いいか」


「どうぞ!」


 セラが嬉しそうに配り始めた。


 賑やかな食卓だ。遥は少し端の方に座って、その様子を見ていた。


---


 気づいたことがある。


 食堂の奥、壁際の椅子に、イグニスが一人でいた。


 食事を持って、ひとりで食べている。輪に入っていない。話しかけられていないのではなく——自分から輪に入っていない。


 別の聖痕者が「イグニスさんもこっちに来ませんか」と声をかけた。イグニスは「いい」と短く答えた。それだけだった。


 遥は皿を一枚取った。もう一皿分、食事を乗せた。


 壁際まで歩いた。


「余っています」


 イグニスが遥を見た。「……何」


「セラさんが多く作りすぎたので。食べてもらえると助かります」


 短い沈黙。


「……置いとけ」


 遥は皿を横に置いた。その場を離れようとすると、


「座れ」


 と言われた。


 遥は椅子を引いて座った。


 イグニスは何も言わずに、食事を食べ始めた。遥も食べた。


 特に会話はなかった。でも、それでよかった。


---


 セラが食堂を見回して、遥とイグニスが壁際に並んで座っているのを見つけた。


 少しの間、その場面を見ていた。それから、にこっとして視線を戻した。


 遥は気づかなかった。


---


 食事が終わったころ、食堂が少し静かになった。


 帰りがけに、イグニスが通り際に言った。「明日の訓練、時間を早める」


「何時からですか」


「夜明け前」


「分かりました」


 それだけだった。


 遥は少し考えた。訓練の時間を変えることに、何か理由があるのかもしれない。でもイグニスが言わない以上、聞いても意味はない。


 ただ——今日初めて、壁際に「座れ」と言われた。


 それは訓練のときの「来い」とは、少し違う声だった気がした。


---


 その夜、訓練のことを考えながら横になっていると、声が聞こえた。


 遠い、低い声。ここのところ、毎晩聞こえる。


 【——扉が。扉が。まだ——】


 遥は目を開け、天井を見た。


 声は消えて、また静かな夜になった。


 古鍛冶場の天井は、どこか煤けていて、ランタンの光が届かない部分は純粋に暗い。


 遥はその暗い部分をしばらく見ていた。


 この声が何なのか、まだ分からなかった。でも、無視できないことは分かっていた。


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