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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第十一章 命の絆
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第114節 恥を知れ。この……痴れ者め……。

 下女殿の見せた憤慨と哀愁をこの身に受けて考えていたのは、このクニに於けるわし自身の立場と覚悟の在り方の(まず)さだった。


(わしはこのクニを滅ぼした張本人だぞ。)


 わしはおのれの不心得と配慮が欠けていたことを反省していた。

 演説の時こそトラひげの名を貰い受けてタケリビコを名乗り、その後継たる者を謳ってはみたものの、このクニの者からしてみれば突然現れておのれらの大王(おおきみ)を討ち取ってしまったただの奸賊。

 つまりわしはクマ国すべての者にとって許すべからず不倶戴天の敵なのだ。

 如何に先代大王の遺命ありとはいえ、そんな憎い仇敵を新たなる大王として戴くことなど出来ようはずもないことは少し考えればわかることだというのに、それをわしは軽々に呼び付けて使役しようなどと――下女殿の心痛と悔しさは如何ばかりであろうか。

 それが証拠に下女殿はわしのことをタケリビコではなくタケハヤ様と呼んでいたではないか。


(いや、彼女だけではない。)


 わしは顧みて気付いた。

 下女殿こそ敵愾心を隠そうともせずにわしと接していたが、思い返してみればこの場にいる三人の誰もがわしに対して少なからず警戒感、嫌悪感を示していたのではないか。

 今まで一度も目を合わせていないサヨ嬢に、治療に必要なことを最低限にしか口にしないチユ殿。

 それでも反抗されなかったのは賊徒の頭(タケリビコ)に対する恐怖はもちろんあろうが、「ひいの君」のためを想ってのことであり、或いはトラひげの「この者に従え」という遺命のためでもあるだろう。

 そこにはどうしたってこのわしに対する好意の情などはあろうはずもない。


(それなのにわしという奴は……。)


 そもそもからしてわしは彼女らの敵なのだから、彼女らがわしを見る視線が冷たいのは仕方のないことと覚悟していなければならなかった。

 にも関わらず、たかが一介の下女に気圧されてしまったという事実を認めたくなかったばかりに、わしは「下女殿は君を見捨て給うた」などと無礼極まる趣旨の暴言を吐いてしまった。

 我ながら何と卑しく小さな心根であろうか。


(おのれこそが英雄などと嘯きおって。)


 英雄が聞いて呆れる。こんなつまらぬ人間が英雄であろうはずがないし、あってよいはずがない。

 それにこんなつまらぬ矮人に討たれてしまったトラひげにも申し訳が立たない。


(そして……。)


 反省するわしに追い打ちをかけたのが下女殿から当然のように飛び出した言葉だった。


 ――この()は私たちの大切な家族です。――


(家族、か……。)


 その言葉に、君がいかに皆から愛されていたかを思い知らされる。

 生まれも育ちもまるで違えば縁もゆかりもない。つい最近知り合ったばかりのまったくの他人を家族と呼び受け入れてくれる者が、この世の中に一体どれだけいるというのか。

 そんな心温かき者たちに向かって「来ないのかと」などと、一体どの口が言ったのだ。


(恥を知れ。この……痴れ者め……。)


 重ね重ねおのれの愚昧さ矮小さを思い知らされて、わしはつくづく反省した。


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