【回想】 白薔薇ロザリンデと花咲ける妹(1)
「ウチの妹、天才なんです!」
当初、オウレリアはロザリンデをおバカさんだとばかり捉えていた。
だがそれは誤りだった。ロザリンデは大バカだったのだ。しかも姉バカ。
もう手が付けられない程重症の、大姉バカだ。
「可愛くて賢くって……もう無敵です‼」
もしやロザリンデは、地元でもこんな具合に自慢していたのだろうか。
西の辺境領には、神童と謳われた領主家の末息子がいるというのに。
『凄ェ~。二位以下に大差で圧勝とか……マジかー』
『フィオレンティーナ・ベルンシュタイン……女の子だろ⁉』
『ロザリンデの妹らしいぜ?』
その年、入学の試しに首席合格したのはロザリンデの義妹だった。
王立学院では年に一度、入学資格を問うための試験が実施される。
貴族以外の平民層にも門戸を開いているので、入学希望者に学力試験を課すのだ。
時期を夏の終わりにしたのは、各地方が比較的にも農閑期に入るからだと云われていた。
学院から生徒達の姿が消える夏季休暇間は、何かと運営側の都合にもかなったのだろう。ちょうど空く大教室に受験生達を集めて、同時刻に一斉に受けさせる方式が採られていた。そして採点も短期間で一気に済ませる。
合否結果は、後期が始まる直前に学院正門に張り出す決まりになっていた。
成績上位者については、その成績詳細も公表される。後期に突入してもけっこうな間、それが掲示されていたのだった。
『へ? 何で男爵家の娘が一般入試受けてんの?』
『うーん。まだ子供だから?』
『幾つ?』
『十三歳!』
『ゲゲッ‼』
就学年齢十五歳以前の入学には、身分を問わず学力試験が義務付けられている。
平民も参加する一般入試を同じように受けて、一定以上の結果を示さねばならない。言わば在野の秀才たちが参集するその試しで、フィオレンティーナは見事首席合格を勝ち取った。次の年からは、授業料全額免除の特待生になる予定だった。
『スゲエな……辺境領』
在校生の間でも、入試結果への関心は高かった。
最近では自領の優秀な平民子女を援助して、受験させる貴族が増えてきた。
辺境伯家エルンストが昔からやっている方法を、ようやく倣うことにしたらしい。
毎年のように辺境領の平民達が首席合格と特待生奨学金を攫っていく様をずっと横目で眇めていた貴族家も、次第に危機感を覚えるようになったようだ。
従来は主に武官を輩出していた辺境領が、今や例年のように王宮文官までをも複数採用させている。その現状を目の当たりにしたせいだろう。
もっとも旧い方針に拘泥して、領民には知恵を付けたがらない領主達もまだいるにはいた。しかし遠からず、淘汰されていくに違いなかった。
「ベルンシュタイン男爵家は、姉が地域一番の美人で妹は超賢い。けっこう有名らしいです」
ニケがそう教えてくれた。
ロザリンデの義妹も、辺境領では色々と名が売れていたそうだ。




