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二 はじめての求婚は唐突に

「ニコライ・メルニク書記官」

「はい…はひいっ?!」

 聞き慣れない声に書類から視線をあげた。

 そこには。

「ドドドドドドドドドラグノワ少将っっ?!」

「私の名前はドラグノワだな。いささか『ド』が多い」

「もももももももも申し訳ございませっ…!!」

 さらにどもった。死にたい、いや死ぬかも。

 ちらりとあげた視線の先。


 ――ひいっ…!!



 鬼神もかくやという迫力が、そこにあった。

 きつい眼差しとすっと通った目鼻立ち。

 麗人だ、間違いなく麗人だ。

 だがしかし。


 そんな言葉では片付けられないこの迫力。


 ――我が国の【主砲】の名を冠する軍人。

 

 立っているだけで泣く子も黙らせ、泣く軍人をさらに阿鼻叫喚に突き落とす。そんな人が……


 常にない迫力を滾らせ、目の前に立っている。


 いやなんで?!

 平凡な頭が一気に回転を始める。

 ――軍部の重鎮がわざわざ経理部に何の用だこないだから期限切れてるとか書類突っ返しまくったからかていうか…!!


 ――さっき名指しだったような――


 Q.軍部の重鎮がわざわざ名指しでお出ましです。さあどうなるでしょう。

 A.首が飛びます(社会的にもしくは物理的に) 


 ――頭から一気に血の気が引く。

 終わった…末端子爵家の三男坊に生まれて二十年余り…誠実に、ただひたすら地味に堅実に生きてきた筈なのに…

 すいません母上、先立つ不幸を…って思ったけど絶対あのひと影の薄い俺のことなんて忘れてそうだ畜生め「もし」こないだ帰った時も俺と兄貴間違えてるし「もし」あんたこれ好きだったわよねって出されたの兄貴の好物「 傾   聴   っ!!!!」「はひぃ!すいませぇん!!!」  


 大声で正気に戻った。ていうか上官の呼びかけを無視していた。

 とっさに平伏する。 

「…何をしている?」

「許しを請うています」

「…貴殿は何かしたのか?」

「身に覚えはありませんが何かしらしてしまったのではないかと」

「…」

 むっとした気配。あ、さらに詰んだかも。さよなら俺の儚い人生。

 と思ったら。

「ぐえ!」

 ぐん!と引き上げられる体。

 うっそぉ…俺空に浮いてる…!

 ――襟首掴まれて。猫みたいに。

「ぐえっ!!」

「…私は、貴殿にそんな、己の身を安く扱ってほしくはない!」

「く、くびっくびっが!」

「私が見込んだ貴殿はそんな男ではないはずだ!」

「く、くび」

「ニコライ・メルニク書記官殿!!」





「貴殿に惚れた、私と結婚してほしい!」

「くびいいいいいいいいいい!!!!」









 いやだから。


 





 なして?!

☆ひとつでも構いませんので、よければ評価いただけますと嬉しいです!

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