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第28話 英雄の一歩目(挿絵有)

 大型トロルは、動かなかった。


 採石場跡に、まだ砲撃の余韻が残っている。

 削れた土。

 砕けた石。

 散った砂。

 風遮膜の名残が、薄く空気を揺らしている。


 良樹は、すぐには動けなかった。


 動かなかったのではない。

 動けなかった。


 胸の前に据えた巨大な魔導盤は、まだ畳めていない。

 火。

 水。

 風。

 土。

 四つの魔素を無理やり噛み合わせ、砲撃として撃ち出した盤は、発射後も熱と圧を残していた。


 雑に消せば、事故る。


 だから、良樹は動けない。


「全員、怪我は――」


 言いかけたところで、クラリスの声が飛んだ。


「良樹くん」

「今、一番動いてはいけないのは良樹くんです」


 静かな声だった。


 だが、逆らえない声だった。


 良樹は、盤から目を離さずに答える。


「分かってる」

「分かってるが、確認は――」


「こちらでします」


 クラリスは、良樹の方を見ずに言った。


 視線はカレンへ。

 それからリシアへ。

 足。

 腕。

 呼吸。

 姿勢。

 服の破れ。

 血の有無。


 順に見ている。


「カレンさん」


「は、はい」

「私は大丈夫です」


「右足は」


「痛みはありません」

「少し、怖かっただけです」


「怖いのは正常です」


 クラリスは頷いた。


「リシアさん」


「私は平気」

「魔力は使ったけど、倒れるほどじゃないわ」


 そう言いながらも、リシアの息は少し荒い。


 牽制。

 四魔素穿弾。

 風遮膜。

 余波の制御。


 今日、最も魔法を使ったのはリシアだった。


 カレンは、剣を握り直し、倒れた大型トロルへ慎重に近づく。


「状態を確認します」


「近づきすぎるな」


 良樹が言う。


「はい」

「分かっています」


 カレンは怖がっていた。


 それでも、足は止まらない。

 真正面から近づかない。

 死角に入らない。

 相手が動いた時に逃げられる距離を残す。


 怖いから、見る。


 それが、カレンの強さだった。


 リシアは杖を構えたまま、周囲を見る。


「追加の気配は、今のところないわ」

「でも、油断しないで」


「ああ」


 良樹は盤の中に残った圧を逃がしていく。


 火の熱を落とす。

 水の流れを細くする。

 風の砲身をほどく。

 土の弾体跡を崩す。


 一つずつ。

 順番に。


 それを間違えれば、撃った後の盤そのものが事故になる。


「くそ……重いな」


 思わず呟く。


 今までの携行盤とは違う。


 これは、持ち歩く盤ではない。

 据える盤だ。


 まだ自立盤ではない。

 良樹が手を離せば崩れる。

 起動も停止も、良樹の制御に依存している。


 だが、それでも。


 大型トロルを止めた。


 良樹は、倒れた巨体を見る。


 勝った。


 そう思った瞬間、胸の奥が重くなった。


 倒したのだ。


 魔物を。

 生活圏のすぐそばまで来ていた危険を。

 人を踏み潰すかもしれなかったものを。


 勝った。

 止めた。


 だが、軽くはない。


 良樹は、最後の逃がし線を閉じた。


 魔導盤が、ゆっくりと薄くなっていく。


 消えた。


 膝から力が抜けそうになった。


「良樹くん」


 クラリスがすぐ横に来ていた。


 早い。


「立てますか」


「立てる」


「今の答えは信用しません」


「信用しろよ」


「良樹くんは、ご自分のことになると信用できません」


「ひどい評価だな」


「実績です」


 どこかで聞いたような言い方だった。


 良樹は短く息を吐き、クラリスに支えられながら一歩下がった。


 カレンが戻ってくる。


「動きません」

「討伐できています」


「証明は」


 良樹が聞くと、カレンは少しだけ顔を強張らせた。


「必要、ですよね」


「ああ」

「報告しないと仕事が終わらねえ」


 リシアが近づき、倒れたトロルを見た。


「牙か、魔石ね」

「魔石の方が分かりやすいけど、取り出すのは少し手間よ」


 良樹は頷いた。


「グロいのは避けたいが、仕事なら見る」


「良樹」


 リシアが少しだけ眉を寄せる。


「無理してない?」


「してる」


「即答しないでよ」


「無理じゃないって嘘つく方が危ねえだろ」


「それはそうだけど」


 クラリスが静かに言った。


「討伐証明は、私が手伝います」

「良樹くんは周囲確認と、帰路の判断をしてください」


「俺が見る」


「見ます」

「ですが、今の良樹くんは処理をする側に回らないでください」


 良樹はクラリスを見た。


 クラリスは、いつもの清楚な微笑みではなかった。


 僧侶の目。

 身体を見る者の目。

 壊れる前に止める者の目。


「了解」


 良樹は短く答えた。


 クラリスの表情が、ほんの少しだけ緩む。


「はい」


   ◇


 町へ戻る道は、静かだった。


 日は落ちかけている。

 森の影が濃くなり、旧街道の土が夕方の色に沈んでいる。


 良樹たちは、討伐証明を持って歩いていた。


 先頭はカレン。

 少し後ろにリシア。

 中央に良樹。

 最後尾にクラリス。


 行きとは、少しだけ並びが違う。


 良樹は前ではなく、中央にいた。


 守られている。


 その自覚があった。


「報告までが仕事だ」


 良樹が言うと、リシアが横目で見た。


「本当に、勝った後も浮かれないわね」


「浮かれて追加が来たら死ぬ」


「台無しね」


「生きて帰るには必要だ」


 カレンが前を見たまま、小さく言った。


「……でも、勝ちました」


 良樹は一拍置いて頷く。


「ああ」


 そして、三人を見た。


「四人でな」


 カレンの肩が、ほんの少し揺れた。


 リシアは視線を逸らした。

 耳が少し赤い。


 クラリスは後ろから、静かに微笑んだ。


「はい」

「四人で、です」


 良樹は、倒れたトロルの感触を思い出す。


 自分一人では撃てなかった。


 カレンが進行方向を制御した。

 クラリスが重心を崩した。

 リシアが牽制し、風遮膜で余波を逸らした。


 自分は、盤を据えて撃った。


 それだけだ。


 それだけだった。


 だが、その一撃が成立するまでに、三人がいた。


 一人では何もできなかった。


 その事実が、妙に重く、妙にありがたかった。


   ◇


 ギルドへ戻ったのは、夕方から夜へ変わる頃だった。


 建物の中は、依頼帰りの冒険者たちでざわついている。


 酒の匂い。

 汗の匂い。

 革鎧の軋む音。

 笑い声。

 報酬袋の音。

 受付の声。


 その中へ、良樹たち四人が入った。


 最初に気づいたのは、受付の女性だった。


「あ、良樹さんたち」

「戻られたんですね」


「ああ」


 良樹は討伐証明を出した。


「大型トロルを確認」

「生活圏近くまで侵入していたため、討伐へ切り替えた」

「証明はこれだ」


 受付の女性の表情が変わった。


「大型トロル……討伐、ですか?」


「ああ」


 その声に、周囲が少し静かになった。


 完全に静まったわけではない。

 だが、近くの冒険者たちの視線が集まる。


「大型トロル?」

「あの四人組が?」

「確認依頼じゃなかったのか?」

「討伐証明、出してるぞ」

「マジかよ」


 ざわめきが広がる。


 良樹は、それを気にしないように受付へ続けた。


「森の縁で、農家の柵が破損していた」

「大型の足跡あり」

「足跡は旧街道方面」

「近くに畑、納屋、煙突から煙の出ている家があった」

「生活圏に入っていると判断した」


 受付の女性は、慌てて記録を取る。


「採石場跡の手前で大型トロルを確認」

「森内では戦闘せず、採石場跡へ誘導」

「開けた場所で討伐」

「周辺に追加個体の気配は、少なくとも俺たちが確認した範囲ではなかった」

「ただし、農家と旧街道周辺の警戒は上げた方がいい」

「柵の破損場所も確認した方がいい」


 良樹は、淡々と報告した。


 大型トロルを倒した。

 自分が撃った。

 すごい一撃だった。


 そういうことは、言わなかった。


 先に出るのは、被害の可能性。

 生活圏。

 街道。

 農家。

 再発防止。


 受付の女性は、完全に真面目な顔になっていた。


「すぐ、ガレスさんを呼びます」


「ああ」


 ほどなくして、奥からガレスが出てきた。


 腕を組み、いつものように面倒そうな顔をしている。


 だが、目は笑っていなかった。


「戻ったか」


「ああ」


「大型トロルか」


「討伐した」


 ガレスは、討伐証明を見る。


 それから、良樹を見る。


「報告を聞く」

「奥へ来い」


「ここでいい」


 良樹が言うと、ガレスは片眉を上げた。


「周辺農家と街道の警戒の話もある」

「受付にも聞かせた方が早い」


 ガレスは、少しだけ口の端を上げた。


「分かった」

「ここで話せ」


 良樹は、もう一度報告した。


 柵。

 足跡。

 農家。

 旧街道。

 採石場跡。

 誘導。

 討伐。

 追加個体の気配なし。

 ただし警戒継続。


 ガレスは一度も遮らなかった。


 最後まで聞いてから、短く言う。


「判断は妥当だ」


 良樹は黙っていた。


「依頼は確認だった」

「だが、生活圏に入っていたなら話は別だ」

「人の家のすぐそばまで来ている大型トロルを放置すれば、次に踏まれるのは家畜とは限らねえ」


「ああ」


「森の中で無理に戦わなかったのも正解だ」

「採石場跡へ誘導したのも正解」

「確認から討伐への切り替えも、現場判断として妥当」


 周囲の冒険者たちが、黙って聞いている。


 良樹は、少しだけ居心地が悪かった。


 褒められている。


 いや、評価されている。


 それが、慣れない。


 ガレスは続けた。


「大型トロル討伐は武功だ」


 ざわめきが大きくなる。


 だが、ガレスはそのまま良樹たち四人を見た。


「だが、それ以上に」


 声が低くなる。


「お前らは、人が死ぬ前に止めた」


 ギルドの空気が、少し変わった。


 大型トロルを倒した。

 強い魔物を討伐した。


 それだけではない。


 農家のそばまで来ていた危険を止めた。


 良樹は、少しだけ目を伏せた。


「結果論だ」


「結果を出した奴が言うと、嫌味だな」


「嫌味じゃねえ」


「分かってる」


 ガレスは、真面目な声で言った。


「だから評価する」


 良樹は、返す言葉がなかった。


   ◇


 ガレスは、四人を順に見た。


「カレン」


「は、はいっ」


 突然呼ばれ、カレンが肩を跳ねさせる。


「お前は怖がっていたな」


「……はい」


「それでも前を見た」

「正面で受けず、進行方向を読んで誘導した」

「大型相手に、止めるんじゃなく流した」

「良い判断だ」


 カレンの目が揺れる。


「怖かった、です」


「怖い相手だ」

「怖がらねえ奴の方が信用できねえ」


 ガレスは短く言った。


「怖いから見た」

「それでいい」


 カレンは、胸元で両手を握った。


「はい」


 ガレスは次にクラリスを見る。


「クラリス」


「はい」


「お前は、足首と重心を崩したな」

「倒そうとしなかった」

「無理に止めようとしなかった」

「方向を変えた」


「はい」

「正面から止めれば危険でしたので」


「その判断ができるなら十分だ」

「それと、良樹の撃った後を見ていたな」


 クラリスは静かに微笑んだ。


「良樹くんは、ご自分のことになると少し雑ですから」


「だろうな」


「ガレスさん」


 良樹が思わず口を挟む。


「今の同意は何だ」


「実績だ」


「またそれか」


 ガレスは無視して、リシアを見る。


「リシア」


「はい」


 リシアの表情が少し引き締まる。


「牽制は効いていた」

「顔を上げさせ、足を乱し、風遮膜で余波を逸らした」

「良樹の砲撃も、お前の技が元になってるんだろう」


 リシアの肩が、ほんの少し揺れた。


 エレメンタル・キャノン。


 その名前が、まだ胸の中に残っている。


「……勝手に変な砲にされましたけどね」


「変な砲か」


「でも」


 リシアは少しだけ良樹を見た。


「名前を変えられるよりは、腹が立たなかったです」


 良樹は何も言わなかった。


 何か言えば事故る気がした。


 ガレスは、最後に良樹を見る。


「良樹」


「ああ」


「討伐判断」

「戦場選定」

「射線確認」

「退避位置」

「外した場合の先」

「仮設砲撃盤の構築」

「そして決定打」


 ガレスは短く息を吐いた。


「お前の功績も大きい」

「だが、一人でやったと思うな」


「思ってねえ」


 良樹は即答した。


「一人じゃ撃てなかった」

「三人がいなきゃ、盤を据える時間も場所も作れなかった」

「撃った後も、俺はすぐ動けなかった」


 そして、三人を見た。


「俺は、守られて撃った」


 ギルド内が、静かになる。


 リシアが視線を逸らす。

 カレンが泣きそうな顔で笑う。

 クラリスが、穏やかに目を伏せる。


 ガレスは、満足そうに頷いた。


「分かってるならいい」


 周囲の冒険者たちが、少しずつざわつき始める。


「大型トロルを四人でか」

「あの新しい四人組だろ」

「魔法使いの嬢ちゃんたちと、変な男の」

「変な男って言うなよ。撃ったのあいつらしいぞ」

「いや、前衛の二人も相当やばいって話だ」

「生活圏手前で止めたなら、農家は助かったな」

「新進気鋭ってやつか」

「あの四人、本物かもしれねえな」


 英雄。


 その言葉は、まだ出ない。


 それでいい。


 良樹は、そう思った。


「一回だ」


 良樹は低く言った。


 ガレスが見る。


「一回うまくいっただけだ」

「次も同じとは限らない」


 ガレスは口の端を上げた。


「一回目を出せねえ奴も多い」


「それでも、次は別だ」


「ああ」

「だから次も段取りしろ」


 良樹は、少しだけ息を吐いた。


「分かってる」


   ◇


報酬と記録の手続きが終わる頃には、外はすっかり暗くなっていた。


 ギルドを出た四人は、拠点へ向かって歩いた。


 作業場付きの貸家。


 いつの間にか、そこは四人にとって帰る場所になっていた。


 行きには、まだ依頼へ向かう緊張があった。

 帰りには、討伐を終えた疲労がある。


 だが、それだけではなかった。


 カレンは、少し前を歩いていた。

 剣の柄に手を添え、時々、道の先を見る。


 リシアは、良樹の横にいた。

 いつものように軽口を叩く余裕はある。

 けれど、歩幅は少しだけ小さい。


 クラリスは、良樹の反対側を歩いていた。

 視線は前を向いている。

 だが、時々、良樹の呼吸と足取りを見ていた。


 良樹は、その並びに気づいていた。


 守られている。


 そう思った。


 大型トロルを倒した。

 撃ったのは自分だ。

 あの魔導盤を組んだのも自分だ。


 けれど。


 あの一撃は、自分一人では撃てなかった。


 カレンが前へ出た。

 怖いと言いながら、怖い場所を見た。

 敵の状態を確認し、最後まで足を止めなかった。


 リシアが風を張った。

 余波を逃がし、撃った後の危険を押さえた。

 良樹の砲撃を、ただの暴発にしなかった。


 クラリスが身体を見た。

 誰が動いていいか。

 誰を止めるべきか。

 戦いが終わった後に、壊れないように見ていた。


 良樹は、夜道を歩きながら小さく息を吐いた。


「……四人で勝ったんだな」


 何気なく出た言葉だった。


 前を歩いていたカレンの肩が、ぴくりと揺れた。


 リシアが横目で良樹を見る。


「今さら?」


「今さらだ」


「遅いわね」


「ああ」


 良樹は素直に頷いた。


「撃った直後は、停止手順と確認で頭がいっぱいだった」

「ギルドでは、報告と記録でいっぱいだった」

「今になって、やっと分かった」


 カレンが、少しだけ振り返った。


「四人で、ですか」


「ああ」


 良樹は頷いた。


「俺が撃った」

「でも、撃てる形にしたのは四人だ」


 カレンは、目を伏せた。


「私は……怖かったです」


「知ってる」


「それでも、見ました」


「ああ」

「だから助かった」


 カレンは、何かを堪えるように唇を結んだ。


 リシアは、少しだけ視線を逸らした。


「私の風も?」


「当然だ」

「あれがなかったら、撃った後が危なかった」

「砲撃は撃って終わりじゃない」

「止めて、逃がして、味方を巻き込まないところまでやって、初めて使える」


「……そう」


 リシアの声は短かった。


 だが、耳が少し赤かった。


 クラリスが、穏やかに言う。


「私は、良樹くんを止めただけです」


「それが必要だった」


 良樹は即答した。


「撃った後の俺は、自分が動いていいか判断できてなかった」

「クラリスが止めなかったら、たぶん無理に動いてた」


「はい」

「たぶん、ではなく動いていました」


「断言するな」


「実績です」


「便利に使うな、その言葉」


 リシアが小さく笑った。

 カレンも、少しだけ笑った。


 良樹は、三人を見た。


「俺は、まだ英雄じゃない」


 三人は黙って聞いていた。


「けど」

「今日のこれは、一歩目ではあったと思う」


 その言葉を口にした瞬間、良樹は少しだけ恥ずかしくなった。


 英雄。


 自分で言うには、まだ遠い。

 あまりにも遠い。


 だが、今日の仕事をなかったことにはできない。


 生活圏の近くまで来ていた大型トロルを止めた。

 討伐証明を取り、報告し、記録を残した。

 次に同じことが起きないように、確認項目も増えた。


 勝って浮かれるだけでは終わらせなかった。


 それなら。


 一歩目くらいは、認めてもいいのかもしれない。


 リシアが、少しだけ笑った。


「珍しいわね」

「自分で認めるなんて」


「認めねえと、次の失敗も見えねえからな」


「そこに戻るのね」


「戻るだろ」


 クラリスが柔らかく微笑む。


「良樹くんらしい一歩目です」


 カレンも、小さく頷いた。


「はい」

「良樹さんらしいです」


「褒めてるのか」


「褒めています」


「褒めてるわよ」


「褒めています」


 三人の声が重なった。


 良樹は少しだけ顔を逸らした。


「……帰るぞ」


「はい」


「ええ」


「はい、良樹くん」


 四人は、夜道を歩いた。


 ギルドの灯りが、少しずつ遠ざかる。

 代わりに、作業場付きの貸家の輪郭が見えてくる。


 そこには試験台がある。

 水桶がある。

 火床がある。

 工具がある。

 リビングがある。

 二階には三人の部屋がある。

 良樹の部屋もある。


 まだ慣れたとは言えない。

 だが、もう知らない場所ではない。


 帰る場所だった。


 良樹は、その扉を見て、少しだけ息を吐いた。


 今日の仕事は終わった。


 終わったのだから。


 休まなければならない。


 そう思った。


 思っただけだった。


挿絵(By みてみん)


ここまで読んでいただきありがとうございます。

大きな一撃のあとに残るのは、勝利だけではなく、後始末と安全確認。 良樹たちにとっての「英雄の一歩目」は、派手な勝利だけでは終わりません。

続きを見守っていただける方は、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。 制作の励みになります。

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