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探偵青野優紀の事件簿  作者: 南後りむ
CASE2 告白のち殺人?
6/62

FILE.5 カメラとダイイングメッセージ

*事件関係者*

・鏨凱人(たがね-がいと)

今回の事件の被害者。16歳。美月に告白の手紙を出したあとに殺害されたが……。


・難波雄志(なんば-たけし)

17歳。口が悪い。意外なことに生徒会の役員である。


・竹中靖樹(たけなか-やすき)

16歳。主に難波の暴走(?)に歯止めをかける役目。


・遠木克巳(とおき-かつみ)

16歳。竹中と同じく、難波の暴走を止める役。生徒会所属。

「うわっ」

若い刑事が遺体を見て声をあげる。

「どうした、小西君」

大柄な刑事が若い刑事を小西とよんだ。

「いえ、久しぶりに遺体を見たので……。ところで権田警部は大丈夫なんですか?」

大柄な刑事は警部だったようだ。

「警察がそんなんでどうする」

「そうですよね……。問題ですよね……」

「まあ」権田は部屋のすみにいる少年をちらと見る。「警察が来る前にそこで現場を荒らしてる少年の方がよっぽど問題だがな」

「あ、権田さん」

少年はようやく後ろを振り返った。

「全く……。お前は全く変わらないな……」

「お褒めいただき光栄です」

「いい意味で言ったんじゃない」

権田は不機嫌な目をすると、そのまま小西の方を見た。大柄なのも相まって、かなりの迫力がある。

「え、あ、いや、そのぉ、警部とそこの少年は、い、いったいどういう関係なのですか?」

「ある事件で知り合ったんだ。それからこいつがよく事件に首を突っ込むようになった」

「首を突っ込むだなんて聞き捨てならない。僕はそのたびに事件を解決しているではないですか」

青野の反論、もとい屁理屈を権田はいつものことのように流した。

「そんなに解決してるんですか?」

「まあな。悔しいがそれは事実だ」

小西の問いに権田が渋い顔で答えた。

「とにかく、お前はこの部屋から出ろ」

「……はい」

青野は不満そうに口を尖らせながら部屋を出ていった。

彼が部屋を出て行くと、小西が先ほど鑑識から聞いたことを権田に話し始めた。

「被害者は鏨凱人たがねがいとさん、北次学園に通う高校二年生です」

「高二か……まだ若いんだな」

小西の説明に、権田は眉をしかめた。

「ええ。で、死亡推定時刻3時から4時の間で、バットのようなもので撲殺されています」

それで、と小西は続ける。

「この事件の奇妙な点が、被害者がダイイングメッセージを残していたことです。被害者は左手で、『かっこぶんし』と書き残していました」

「……変わったダイイングメッセージだな」

権田と小西は顔を見合わせた。

「ええ、そうなんですが……。それから、被害者の所持していたカメラが、被害者の下敷きとなって発見されました。これがかなりいいものでして……」

「そっちの説明はもういい。で、被害者は趣味でそんなにいいカメラを持っていたのか?」

「ええ。昔から写真を撮影することが趣味だったそうで、現在も高校の写真部に所属しています」

「なるほど……。被害者がなぜカメラをそんなところにやったのか、何か理由があるのだろうか?」

「さあ、現段階ではまだよくわかりませんね」

「で、話を変えますが」あらかじめ断っておく小西。「遺体の第一発見者は先ほどの青野君。そして、続いて部屋の前にきたのが被害者の友人の難波雄志なんばたけしさん、青野君のご友人の小林美月さんの二人。さらに遅れて被害者の友人である竹中靖樹たけなかやすきさん、遠木克巳とおきかつみさんの二人が駆けつけてきて、このうちの遠木さんが警察に通報した――という流れです」

「うむ。取りあえず彼らから話を聞いてみるか」



  ◇



「俺は何もしらねーぞ」

開口一番、難波は不機嫌な口調で権田たちを睨み付けた。

「ただ、チャイムを押しても中からやつが出てこねーから、不思議に思ってたら、そこの青野とかいうやつが鍵が開いてるとか言い出して、部屋に突っ走って行きやがったから、あわてて追いかけたんだよ。そしたら鏨のやつが横たわってやがってさ、頭から血ぃ流してたから、お、驚いて部屋の前で腰を抜かしちまったってわけだ。だから、俺は鏨の元には寄れなかったし、部屋にも入れてねーよ」

「みなさん、間違いはありませんか?」

小西が周りにいる面々に尋ねかけた。

「ええ、まあ」

青野が面倒くさそうな顔で首肯する。

「あ、そーだ。お前、そこにいる小林とかいう女子になんか言ってたじゃねーか。5884がどーとか」

「おい、青野。どういうことだ?」

権田が問い詰める。

「いえ、ダイイングメッセージの一つの仮説を述べたまでですよ」

「なんだって!?」

小西は手帳を取り落とし、それを慌てて拾い上げる。

「教えてくれないかっ!」

「おい小西……」

権田は呆れて黙り込んだ。

「いいですよ。教えてあげましょう」

青野はやる気のなさそうに承諾すると、話し始めた。

「まず、今回のダイイングメッセージについてですが、これがなかなか変わったものでして、被害者の左手で『かっこぶんし』と書いてありました。これを『括弧 分子』と解釈した場合、思い浮かぶのはなんでしょうか?」

青野は言葉を切って、皆を見まわした。

「数学、でしょうか」

竹中が控えめに手を挙げる。青野は、遅いといった表情をして、

「まあ、普通に考えてそうでしょうね。そこで被害者の机を見てみると、数学の教科書が乗っているではありませんか。さらにさらに、開かれたページの3問目に分数の計算がありまして――まあ、とても高2がやるような問題には見えませんでしたが――、その問題のにある括弧の中にある分数の分子を並べると、5884、つまり、小林と読むことができるわけです」

「高2がやるような問題には見えないと言っていましたが、彼は数学が苦手なのでひたすら計算問題集を買って練習していたので、一応そのことは留意しておいてくださいね」

遠木が青野の少々失礼と見てとれる言葉に対し添加した。

「なるほど……。つまり、そこにいる小林美月さんが怪しいと言うことに……」

小西が手帳にメモをしながらそう言うと、青野が軽蔑した目を浮かべた。

「と、言いたいところですが、たまたま開いていたページがダイイングメッセージに該当していたとか偶然すぎますし、そもそも殴られてすぐにそんな思考回路が働くわけないので没ですね」

「ズテッ」

青野にあっさりと否定され、小西は期待を裏切られたとばかりにずっこけて見せた。

「おい、ちょっといいか?」

難波が疑問に思ったかのように口を開いた。

「さっき、左手で書いてあったって言ってたよな?」

「ええ。“し”の字の最後に左手の人差し指が乗っていましたし、その指にべったりと血液が付着してました」

小西が説明する。

「それって、おかしくないか? だって鏨のやつ、右利きなんだぜ?」

「なんですって!?」

小西は驚きのあまり、また手帳を取り落した。

「おい、小西君……」

権田は部下の不甲斐なさにため息をついた。

「つまり、あのダイイングメッセージが本当に被害者によって書かれたものだったのか、疑問が生じてくるってことか……。うーーん!」

小西は頭を掻き毟った。

「僕は被害者によって書かれたと思いますよ。というより、今の難波さんの言葉で疑問点が一つ解消されました」

「なんだって!?」

周囲が彼の顔を覗き込む。彼は、どうということはないと言いたげな表情をした。

「実は、被害者の両手の人差し指に血液が付着していたんです。最初は不自然に思いましたが、先ほどの話を聞いてすっきりしました。被害者は右手でダイイングメッセージを書いた。これは字の整い具合から見て間違いありません。利き手じゃない方の手で書いたらあそこまで綺麗にはかけませんからね」

「でも、遺体は左手の人差し指を“し”の字の上に置いていたぞ」

小西は疑問をぶつけた。青野は頷くと真剣な目つきになった。

「なぜ被害者は左手を置いていたのか、そしてなぜ左手の人差し指にも血液が付いていたのか。その答えはただ一つ。犯人は被害者がダイイングメッセージを残したことに気がつき、誤魔化すために手を加え、左手を上に置いたんです」

「ということは、あのダイイングメッセージは犯人によって偽装されたものだったのか!」

小西は熱心にメモを取っている。青野は頷いて、

「まあ、半分はね」

「ううん、あのダイイングメッセージの中には鏨が書いたものと犯人が書いたものの二種類があったってことか……。ますますわからなくなりますね」

遠木が手をあごに当てて唸った。

「で、とりあえずダイイングメッセージの話は置いておいて、次の話に移るぞ」

権田の一声で、小西はいそいそと手帳をめくった。

「ええっと、それでは、3時から4時の間、あなた方はどちらにいらっしゃいました?」

「アリバイってやつか」

難波が小西を睨み付ける。

「いえ、できる範囲で構わないのですが……」

だが、意外にも難波はにやりと笑うと、勝ち誇った顔をした。

「俺にはちゃんとあるぞ。該当する時間帯、俺は生徒会の仕事をしていた」

「せ、生徒会!?」

小西はまたも驚きのあまり手帳を取り落す。

「なんか悪いかよ」

「いいえ特に何もございませんが」小西は慌てて否定をした。

「まあ、俺のアリバイが本当かどうかはここにいる遠木にでも聞いてみな。こいつも一緒にいたからな」

皆の視線が遠木へと移る。彼は、一瞬びくっとしたが、すぐに取り直すと、頷いた。

「ええ、まあ。だいたいは一緒にいましたからね」

「だいたいは、というのはどういうことでしょう?」

青野が尋ねた。

「ええっとですね、正確には、3時半から4時の間、僕が少し席を外していたんです」

「それは、なぜですか?」

青野に切り込まれ、遠木は少し顔を歪めたが、やがて深いため息をつくと、あきらめたように口を開いた。

「その、30分ほどスマートフォンで動画を見てました。ほんとは校則違反なんですけどね……。でも、ほんとに30分ぴったりだったんです。学校からここまで歩いて15分、走っても10分ほどですから、とても鏨を殺す暇なんてありませんよ」

「でもお前、自転車持ってるよな」

難波が訝しげに遠木を見た。

「自転車をとばせばここまで5分ちょいだろ。十分可能だと思うがな」

「うっ」隙を突かれたように、遠木が硬直する。「で、でも、そんなことを言ったら難波だって、3時20分くらいから俺が戻るまでいなかっただろ! お前はどこに行ってたんだよ!」

「え、そ、それは……」

二人は、先ほどの関係はどこに行ったのかと思うくらいに仲が悪くなっていた。

「おいおい、見苦しいぞ。いい加減にしろよ」

見かねた竹中が間に割って入った。

「お、、おう……」

「わかったよ……」

難波と遠木は、互いに睨み合いながらも竹中によって引き離された。

「ところで、あなたはどちらにいらしましたか?」

小西が手帳を片手に竹中に向かって尋ねた。

「あ、僕は特にありませんよ。二人が生徒会から戻ってくるまで校内を彷徨っていましたからね」

竹中のその言葉は、――本人は意図していないと思うが――先ほどいがみ合っていた二人への皮肉の様に青野は聞こえた。現に、難波と遠木は竹中のことを睨み付けている。

「うーん、アリバイは3人とも特になし――ってとこでしょうかね」

小西は手帳と権田の顔を交互に見ながら呟いた。

「まあ、そんなところだろうな」

権田も小声で応じる。

「ところで、君たちはそこの青野くんと小林さんに会ったことはあるのかな?」

「いいえ、ないですよ。今日下駄箱で初めて見ました」

小西の質問には竹中が答えた。いや、厳密には、竹中以外の二人はとても答えられる状況になかったと言おう。難波と遠木は相変わらず火花を散らし、二人の間はますます険悪になっていた。

「あれ、青野君は?」

不意に、小西がまわりをきょろきょろと見まわした。

「さっき部屋を出ていきましたよ」

美月が出口を指さす。

「あ、あいつ……また現場に行きやがったか!」

権田が怒り気味の口調で部屋を飛び出していった。


案の定、青野は警部たちの目を盗んで現場を荒らしに――権田から見れば、だが――行っていた。

「おい、向こうに戻れ」

権田が青野の方へ歩み寄る。

「彼って、部屋にパソコンとプリンターを置いているんですね」

「はあ?」

「いえ、お金持ちかな、と思いまして。――そうだ、権田さん、このパソコンのキーボードに血液が付着しているか調べていただけませんか?」

「……なんでそんなことを」

そういいながらも、権田は鑑識を呼んだ。


「特にそのようなものは付いていませんが……」

ルミノール反応を調べ終えた鑑識が首をかしげて言った。

「おい、青野。どういうことだ」

権田がまたも青野を睨み付けた。

「いえ」青野は平然とした様子で答える。「それならもう一つの方を調べる価値がありますね」

「え? なんだ、もう一つの方とは」

「いえね、――――をお願いできますでしょうか?」

青野は声を少しひそめて、鑑識に耳打ちをした。

「もちろん、構わないよ」

鑑識は青野と顔見知りのようだ。

「では、僕は戻らせていただきますよ」

「ああ、そうしてくれ」

権田は一層彼を睨み付けた。

「では」青野は片手をあげると、静かに部屋を出て行った。



  ◇



青野は部屋へ戻るなり、顔をしかめて考え事をしているようだった。

「あとはダイイングメッセージが解ければパズルのピースが揃うんだがな……。そうだ、美月、ちょっといい?」

「え、何?」

「あのさ、ここ最近、何か校内で表舞台に立たなかった?」

「え……? そう言われると……。あ、そうだ、つい最近表彰式で賞をもらったよ。去年度の冬に行われた作文コンクールで最優秀賞を獲ったからね」

「あ、そう。ありがと。参考になったよ、美月」

青野が再び難しい顔をすると。不意に遠木が話しかけてきた。

「そういえば君って、彼女――小林さん――のことを美月って呼ぶんだね」

「ええ、そうですけど。なにか?」

遠木の問いに青野は平然とした様子で返した。

「いやあ、それくらいの年頃で異性のことを下の名前で呼ぶの、珍しいと思ってね」

「それくらいの年頃って……」

あなたも同じくらいの年頃でしょう、と言いたかったが、また何か言われると面倒なのでやめておいた。

「そういえばあいつ、俺のことをげんちゃんとか呼んでたよな」

青野と遠木の会話に耳を挟んでいた難波が思いだすように言う。

「僕なんて子分でしたよ」

竹中も話に乗っかる。どうやら、青野が現場に行っていた間に、彼らの間にあったわだかまりは解消された様である。

「それって、鏨さんがあなた方につけたあだ名ってやつですか?」

青野は少し惹かれたように話に食いついてきた。彼の質問には遠木が答える。

「うん。彼、よくわからないあだ名のつけ方をするんだよ。俺なんかコケだったしな」

「な!」

「うん? どうかした?」

遠木が不思議そうに首をかしげる。

「いいえ、なんでもないです。ありがとうございました」

青野は、足早にその場を立ち去る。

「そうか……。被害者は友人三人の名前にある“ある共通点”に則って、彼らにあだ名をつけていたのか。そして、そのあだ名こそが、あのダイイングメッセージとカメラの意味だったんだ。間違いない、犯人はあの人だ!」

次回

告白事件解決編!

FILE.6 足された言葉



Next hint

・血文字




*謎解き*

大したものではありませんが、一応のせておきます。

因みに、解いてもらおうとかそういうことを意図しているわけではありませんので、解決編を見ていただいて「お、あってたぞ。しめしめ」などと考えていただければ結構です。



ダイイングメッセージの本当の意味はなにか?



ダイイングメッセージが指し示す人物は?



その人物が犯人である根拠を二つ以上あげてください。



今回は証拠を使って攻めていく感じです。特にトリックの類いは使われていませんね。

それにしても、毎度毎度、犯人は頭がいいなぁ。咄嗟にこんなことを思い付くとか思考回路がどうかしていると思います。はい。

まあ、殺人なんかする時点で頭がどうかしていると思いますが。


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