登場人物紹介(第五部)
第五部は、坂を下りきった栄家が、いよいよ、その運命のいちばん深い所へと踏み入っていく巻です。都を追われ、中心を失った一家に、時代は、まだ静かな手をゆるめてはくれません。愛する者を守ろうとする者と、それを許さない大きな流れと。まぶしかった一族の物語が、ここで、その最も哀しい局面を迎えます。ここでは、この巻であなたが出会う人たちを、ネタバレなしで紹介します。
<語り手>
栄 徳子
この物語を語る人。光のまん中からは、ずっと離れた所で生きてきた、一人の母です。この巻では、その静かなまなざしが、いちばんつらいものを見つめることになります。ただ見ていることしかできなかった人が、それでも、たしかに見届けようとする。その覚悟が、ここで、深く問われていきます。
<栄家の人々>
栄 一鶴
徳子の父。栄家の創業者。かつて「テレビの顔」として一億人に愛された人です。その大きな背中も、今では、目に見えて小さくなりました。失ったものの重さと、老いていく身とを抱えながら、それでも、この人はまだ、何かにあらがおうとしています。
栄 宗太
一鶴の次男。傾いていく栄家の当主という、あまりにも重い役割を、いまも一人で負いつづけています。明るくふるまおうとする、その笑顔の奥で、この人が何と向き合っているのか。どうか、その姿を、そっと見守ってください。
栄 あかり(さかえ あかり)
徳子の娘。一鶴にとっては、初めての孫。幼いその笑顔は、暗くなっていく一家のなかで、いっそうまぶしく輝いています。その名にこめられた光のような願いを、母は、この巻でも、けんめいに守ろうとしています。
栄 妙子
一鶴の妻。一家の母。華やかな世界のいちばん外側で、ずっと家族の帰る場所を守ってきた人です。崩れていく一家のなかで、この人が最後まで手放さないものが、何なのか。その静かな強さに、どうか、目を向けてください。
<新たにあらわれる人>
敦
栄家に連なる、若く才能ある人。滅びに向かう一族のなかに、ふいに射しこんだ、最後の美しい光のような若者です。人の心をまっすぐに動かす、その輝き。哀しみの色を深めていくこの巻で、その存在が、どんな意味を持つのか。どうか、見届けてください。
熊野
数えきれない「顔のない声」のなかから、たった一人、名前と顔を持って歩み出てくる人。栄家に、はっきりとした刃を向ける、ひとりの人間です。誰も手を下してなどいないはずの大きな暴力に、なぜ、一つの顔が生まれるのか。その重い問いを、この人が、静かに背負っています。
<そのほかに>
このほかにも、第五部では、これまで陰にいた者たちが、その姿をあらわしていきます。すべての潮目を、いちばん奥から動かしてきたのは、誰だったのか。勝ち残った者の胸には、いったい何が残るのか。滅びゆく一家の運命に、どんな人たちが、最後までかかわっていくのか。どうか、その一人ひとりを、見届けてください。
<この巻について>
これは、滅びの物語です。まばゆく輝いた一族が、ついに、その光を失っていく巻です。読むのが、つらい場面もあるかもしれません。それでも、これは、ただ人が滅びていくだけの物語ではありません。すべてを失っていくなかで、なお消えずに残った、ささやかなぬくもりと、たしかにそこにあった愛の記憶を。どうか、最後まで、見つめていただけたら、うれしいです。忘れられていくものを、たった一人でも覚えているかぎり、それは、無には、なりません。




