第031話 よその街の銘印
> 【鑑定 第三十一号】
> 押印累計 ── 百四十。
> 依頼者 ── 戸倉版木店。所在、小名瀬町。
> 物件 ── 版木、十四枚。
> 所見 ── 山桜。線の深さ、十四枚とも同一であります。
> 摺りの手加減 ── 不要。
> 色の重なり ── ずれておりません。
> 当該市外における置き換えの記録 ── 本件が初出であります。
> ……判定を、開始します。
── 提灯は翌朝に下ろされて、四十とも同じ木箱へ入った。
小名瀬は銘洲から汽車で二時間の町になる。山を一つ越えて、そこから川沿いを下る。着くと、水の匂いが銘洲と違った。
六人は朝の一番で出た。切符は蒼が買った。買う前に一度、時刻表を三秒より長く見ている。
戸倉版木店は駅から十分ほど歩いた坂の途中にある。間口が二間で、格子戸が半分開いていた。開いた側から刃を研ぐ音がしている。
戸倉は七十四になる。土間の低い台に向かって、小さい刃物を砥石に当てていた。押して、返して、また押す。押す音が短い。
「もう彫っとらん」と戸倉が言った。「目が続かん」
「じゃあ、それは」と燈が訊いた。
「研いどるだけだ」
「使わないのに」
「使わんから研ぐ」
刃は十七本ある。布に一本ずつ巻いて、刃を上へ揃えて入れてある。揃えないと次に指を切ると、戸倉は言わなかった。燈はその並びを見て、木暮の印刀を思い出した。
砥石は三つ並んでいる。荒いのから細かいのへ、左から順に置いてある。並べ方が巌の鉋台と同じだった。巌はそれを見て、何も言わなかった。
棚に版木が積んである。山桜の板で、両面に彫ってあった。表が線で、裏が色になる。一つの絵で十四枚使うと戸倉が言った。
小名瀬に彫師は戸倉だけになる。摺師は深沢のほかに二人いたが、二人とも去年やめた。町の版元も、いまは一軒しかない。
摺師の深沢が来たのは昼前である。六十で、指の腹が全部平らになっていた。
「戸倉さん、今日の分」
「そこにある」
「助かる。今のは楽でいい」
深沢は版木を三枚抱えて、自分の仕事場へ戻っていった。
燈はその背中を見た。見てから、戸倉を見た。
「楽って、なんですか」
「摺りやすくなったんだと」
「版木が」
「そう言うとる」
戸倉は刃を布へ戻した。戻して、次の一本を出した。
*
深沢の仕事場は坂の下にある。板の間に馬連が並んでいて、絵具の皿が七つ出ていた。
馬連は五つある。大きさが違って、使う場所で持ち替える。持ち替えるときに一度も手を止めない。
深沢は紙を版木へ載せて、上から馬連を回した。回して、剥がして、次の色へ移る。
速い。止まらない。一枚を摺るのに、手の力を一度も変えていなかった。
紙は雁皮で、水を打ってから使う。打つ量が日によって違う。深沢はそれを窓を開けて決めていた。
「前は変えてたんですか」と蒼が訊いた。
「変えてた。線の深いとこは軽く、浅いとこは強く」
「一枚の中でですか」
「一枚の中でだ。深さが場所で違うからな」
深沢は摺り上がりを板へ並べた。二十枚並べて、それを端から見た。
色がずれていない。一枚も浮いていない。
二十枚とも、同じところに同じ色が乗っている。
「揃ったな」
「前は」
「揃わん。三枚に一枚は捨ててた」
深沢は笑った。笑って、それから次の紙を載せた。
捨てた三枚に一枚は、燃やさずに束ねてある。束が壁際に三つ積んであった。深沢はそれを売らないし、人にもやらない。
紬が深沢の作務衣の袖を見た。糸が一本出ている。指で拾って、二度巻いて、引いて、切らなかった。
「切らんのか」
「切ると、また出るので」
「そりゃそうだ」
深沢はその袖を自分でも押さえた。押さえた指の腹が平らで、渦の跡が無い。
摺り続けて、指の紋が消えたのだと本人が言った。三十年掛かったとも言った。
識が来た。丸い胴を土間の上で二寸だけ浮かせて、正面の板が明るくなっている。
汽車には乗れなかった。手回り品として持ち込もうとして、駅で止められた。
「手回り品であります」
「手回り品じゃねぇだろ」と燈が言った。
「規程によりますと、長さと幅と高さの合計が」
「合計の話じゃない」
結局、玲が網棚へ上げた。上げてから、下ろすのを忘れて二駅ぶん運ばれた。
その識が、いま版木の前にいる。
> 鑑定を、開始します。
> 物件 ── 版木、十四枚。
> 山桜。線の深さ、十四枚とも同一であります。
> 摺りの手加減 ── 不要。色の重なり ── ずれておりません。
> 判定 ── 贋。
「よその街でもか」と戸倉が言った。
> 本機の記録では、本件が初出であります。
「銘洲だけじゃなかったんですね」と燈が訊いた。
> 初出であります。ただし、初発とは限りません。
燈は黙った。
黙ってから、蒼と目が合った。蒼も黙っていた。
「三秒くれ」
「今のは、三秒じゃ足りねぇだろ」
「足りません」
初発とは限らない、という一行を、燈はもう一度口の中で繰り返した。繰り返して、それから訊くのをやめた。
巌が版木に触った。見る前に触った。触って、それから曲尺を外して直角を戻した。
平たくなった。目盛りの並びが二列になって、間に細い溝が出る。
線の底へ当てて、端から端まで滑らせた。
光らない。端から端まで、一度も光らない。
十四枚を順にやった。十四枚とも、線の底で一度も光らなかった。
「同じだ」
「深さがですか」
「全部だ」
彫った線は、深いところと浅いところで色の乗り方が変わる。深沢はその差を手で埋めていた。埋める仕事が、今日から要らない。
戸倉は棚の奥から古い版木を一枚出した。角が欠けていて、片側が黒く変わっている。
巌はそこへ当てた。
目盛りが光った。深緑が走って、途中で切れて、また光る。切れる場所が七箇所あった。
「これは違う」
「そりゃ、師匠のだ」と戸倉が言った。
*
師匠の名は分からない。
その版木は師匠の彫った最後の一枚になる。戸倉は一度も刷っていない。刷ると減るからになる。
戸倉は名前を知らずに十二年通ったと言った。訊かなかったし、向こうも名乗らなかった。周りは「先生」と呼んでいた。
「墓は」
「無い」
「無い?」
「引き取り手がおらんかった。町で焼いて、それきりだ」
戸倉はその版木を土間の台へ置いた。置いて、裏を上に向けた。
裏の隅に、小さい印が彫ってある。表からは見えない位置になる。
一分角ほどで、線が三本しかない。何の字か読めない。
彫った本人しか触らない面である。摺師も版元も、裏は見ない。戸倉も十二年のうちに二度しか見ていない。
燈が屈んで、それを見た。
> 銘印であります。
識がそう言った。
「これがですか」
> 印面に銘がございます。摩耗により、判読 ── 不能。
> 該当者 ── 不明。
「不明って、いま名前が無いって話をしてたところですよ」
> 該当者 ── 不明であります。
燈は戸倉を見た。
「これ、貸してもらえませんか」
「やらん」
「借りるだけです」
「借りたら返すのか」
燈は答えられなかった。
「返せんのだろ」
戸倉は版木を棚へ戻した。戻して、また刃を研ぎはじめた。
押す音が短い。一回ごとに切れて、次までに間が空く。
*
夕方に、砂が鳴った。
乾いた音である。坂の石垣で二度返って、それから消えた。
坂は石畳ではない。土を突き固めた道で、雨の日は滑る。銘洲の石畳とは足の音が違った。
道に灰白色が並んだ。数える前に二百を超える。戸倉版木店の格子戸の前に一列で並んで、戸には触れていない。
燈が印籠を出した。
「押印!」
五つの胸から朱が広がった。円、角、杼形、縦長方形、六角。五色が残る。艶は何処にも無い。
背後に紙が広がって、五つの印が並んだ。右下だけが白い。
棚の版木が浮いた。十四枚が重なって、そのまま立った。
板の形である。高さが四メートル近くあって、表に線が彫ってある。線が全部同じ深さで、影が出ていない。
> 贋作体であります。原物、戸倉版木店の版木、十四枚。
> 線の深さ ── 同一。
> 判定 ── 贋。
燈が走った。走って、右から鎚を入れた。
当たった。当たった場所が凹んで、そこに鎚の形が彫られた。
彫られた形が、そのまま押し返してきた。
彫られた跡が深い。鎚一つぶんの形が、そのまま板に残っている。
燈は左肩を打たれて、二歩ぶん飛んだ。
「打ったのは右だぞ」と巌が言った。
「左から来ました」
玲が斬った。跡が残った。残った跡と同じ跡が、板の反対側から出て、玲の右腕を掠めた。
玲は左で振っている。
「逆です」と玲が言った。
「何がだ」
「返ってくるのが、左右逆になってます」
戸倉が格子戸の内側から出てきた。出て、坂の上に立った。
「彫る時ゃ逆に彫るんだ」
「逆?」
「字も絵も、版木は左右を逆に彫る。摺ると戻る」
燈は板を見た。板の線は逆になっている。摺れば戻る。摺らなければ戻らない。
「じゃあ、こいつは」
「摺ってない側だ。返すもんが、全部逆になる」
燈は鎚を持ち替えた。右から左へ持ち替えた。
左で持つのは初めてになる。三年前に一度やって、そのとき鏨を落とした。
打ち慣れていない方である。振ると遅い。遅いので、届く前に狙いが見える。
打った。当たりが浅い。
浅いまま、返ってきたものが右から来た。
燈はそれを右で受けた。受けられた。
「見えます」
「見えるだけだ。当たっちゃいない」
巌が前へ出た。左手で大鋸を構えて、板の縁へ歯を当てた。切らずに、継ぎ目を作る。
継ぎ目が入った。入った場所と左右対称の位置から、同じ継ぎ目が返ってきた。
巌は右側で受けた。受けて、そこへもう一本入れた。
二本になった。返ってきたのも二本になる。
板に継ぎ目が四本入った。
紬は左でも同じ速さで投げる。機は両手を使うので、利き手の差が小さい。誰もそれを知らない。
紬が鞭を投げた。左で投げた。巻いて、引いた。倒さない。引いて、板を四本の継ぎ目のところで撓ませた。
撓んだ。線の深さが同じでも、板は撓む。撓むのは板の性質になる。
撓んだ場所で、線が浅くなった。
「浅くなった」と蒼が返す。
「そこは返せません」と識が言った。
浅い線は、返す形を持てない。彫りが足りないと、写せない。
摺師が力を変えて埋めていたのは、そこになる。板の側では埋まらない。
「蒼」と燈が言った。
「三秒くれ」
「やる」
三秒より長く掛かった。
蒼は輪を抜いた。抜いて、左手へ持ち替えた。
持ち替えてから、構えるのに二つ数えた。
「ヨウヘンリン!」
輪が飛んだ。飛んで、撓んで浅くなった場所へ入った。
入った場所で玉虫色が広がる。青と、緑と、金が混ざって、線の底を這った。
這った跡が残った。窯変の斑である。同じ形が二つと無い。
板がそれを写そうとした。
写せない。二度目も同じになる。
左右を逆にした斑を作ろうとして、同じ形が出てこない。
板が止まった。止まって、線が上から順に消えた。
崩れた。崩れる音が乾いている。
崩れた場所に、版木が十四枚残った。
山桜の板で、線の深さがばらばらになっている。角が二枚欠けていた。
輪は坂の石垣に掛かって、そこで止まった。
蒼は拾わなかった。見上げただけになる。
灰白色が動いた。最後の一体が膝を突いた時、坂にいた全部が一斉に口を開いた。声だけが揃った。
「……ありがとうございました」
消えた。石畳に足跡が一つも無い。
*
石垣に掛かった輪は、日が当たると玉虫色が出る。小名瀬の坂に、それが一つ残ることになった。
深沢が坂を上ってきた。
上ってきて、十四枚を見た。見て、一枚を持ち上げて、線を指でなぞった。
「戻ったな」
「戻った」と戸倉が言った。
「三枚に一枚、捨てることになるぞ」
「なる」
深沢はその一枚を抱えた。抱えて、坂を下りていった。
下りる途中で一度止まって、また歩いた。
燈はそれを見ている。見て、戸倉に訊いた。
「あの人、喜んでますか」
「訊いてみりゃいい」
「訊けません」
「訊けんだろうな」
喜んでいるかどうかを、深沢は言わなかった。訊かれてもいない。三枚に一枚を捨てる仕事へ、そのまま戻っただけになる。
戸倉は土間へ入って、棚の奥から師匠の版木を出した。
出して、裏を上に向けて、台へ置いた。
「持ってけ」
「いいんですか」
「俺はもう彫らん」
「でも」
「彫らん者が持ってても、それは板だ」
燈は手を出しかけて、止めた。止めて、蒼を見た。
蒼が前へ出て、両手で受け取った。受け取って、持ってきた箱へ入れた。
箱の中に、もう二本入っている。
蒼は蓋を閉めた。閉めてから、留め具を二度確かめた。
「使わないんですか」と戸倉が訊いた。
「使います。いつかは」
「いつだ」
「決めてません」
戸倉は答えなかった。答えずに、刃を布へ巻きはじめた。
十七本ある。一本ずつ、刃を上へ揃えて入れる。
巻き終わって、それを棚へ載せた。
載せる場所が決まっている。上から二段目の、右の端になる。
夜になって、外が暗くなった。
暗くなる前に音が来た。坂の石垣が鳴って、それから川の水面が波打った。
「── 量産」
低い声である。坂には誰もいなかった。
地面から何かが生える音がした。同じ間隔で、同じ数だけ、続けて鳴った。
> 銘量 ── 火村燈 七百十三。陶山蒼 七百五十四。綾織紬 六百二。
> 楠木巌 八百十八。硝子井玲 六百九十六。
> 六つ、減っております。
「工房機は」と燈が訊いた。
> 銘洲であります。
「呼べますか」
> 呼べます。着くまでに、掛かります。
「どのくらい」
> 山が一つございます。
塊は先に立った。
立ってから動かない。銘洲では、立つとすぐに腕を振ってきた。ここでは待っている。
六人は坂で待った。待つあいだ、灰白色は来ない。塊も動かない。動かずに、町を見下ろしていた。
戸倉が土間から出てきた。深沢も坂を上ってきた。二人とも上を見た。
「これ、どうするんだ」
「来ます」
「何が」
「うちの機械です」
燈は坂の下を見た。川沿いの道の先である。
音が先に来た。
地面を擦る音ではない。木を組む音になる。継手が噛む音が、川の向こう側から順に近付いてきた。
五つ来た。順が銘洲と同じである。
山を越えてきたので、脚に枝が挟まっている。タタラの肩に杉の葉が乗っていた。
「遅ぇよ」と燈が言った。
言ってから、乗った。
> 連結を確認。
「火入れッ!」
炉の底が鳴った。赤が上がって、継ぎ目を通って渡っていく。
> 真、通りました。
「組み継ぎ、合体!」
継手が噛んだ。木を組む時と同じ音が、四十メートルの高さで鳴る。
小名瀬の人が坂へ出てきた。三十人ほどが並んで、上を見ている。
誰も名前を呼ばなかった。銘洲の子どもが呼ぶ三つの名を、この町の人は知らない。
深沢は手に版木を一枚持ったままだった。持ったまま見上げた。
戸倉は上を見なかった。見ずに、格子戸を閉めた。
塊が腕を振った。振った先が坂の石垣を掠って、石が三つ落ちた。落ちて、坂を転がって、川へ入った。
「刻印!」
右の拳が前へ出た。左の掌が、その甲を上から押す。
「銘刻斬ッ!」
声が五つ揃った。
拳が塊の胴へ入った。入ったところで止まって、そこに朱が走る。線が字の形になっていって、銘が刻まれていた。
崩れた。落ちた欠片が坂に当たって、そこで木の粉になった。
粉が川へ流れた。流れて、下流で見えなくなった。
工房機は五つとも、山を越えて帰ることになる。着くのは明け方だと識が言った。
帰りの汽車は五時になる。
識は今度も網棚に載った。載ってから、板の光を落とした。
佐久間の豆腐は朝に持って出たものである。六丁あって、桶ごと持ってきていた。
着いた時に三丁が崩れていた。帰りに残りの三丁も崩れた。
玲が食べた。崩れたまま食べた。
「持ってくるもんじゃないですね」と玲が言った。
「持ってくるって言ったのはお前だ」と燈が言った。
「言いました」
紬が窓の外を見ていた。山を越える手前で、日が落ちる。
窓に自分の顔が映るようになった。紬はそこで外を見るのをやめた。
巌は座っていない。通路に立って、天井の継ぎ目に触っていた。触って、それから手を下ろした。
「ん」
「巌さん、何か」
「木じゃない」
「そりゃ、汽車ですから」
燈は座席に凭れて、窓の縁に額を付けた。
付けてから、低い声で歌った。
打てば打つほど 縮んでいくよ
一行だけである。歌い終わらずに、線路の継ぎ目の音でそれが消えた。
誰も指摘しなかった。
蒼は箱を膝に載せていた。載せたまま、二時間おろさなかった。
*
朝になった。
銘洲の商店街に、変わったものは無い。
佐久間が桶を提げて歩いている。戸島が鍵を削っていた。島村が下駄の歯を削っていた。挿げ替えは十五足まで進んでいる。
平尾が脚立を担いで歩いていた。
燈は火村鍛冶の土間で火を入れた。入れてから、壁の帳面を外した。
外して、開いて、そこへ一行書き足した。頁は四枚目になる。
小名瀬。版木、十四。初出。ただし初発とは限らない。
書いた字は下手だった。数の並びだけが読める。
書いてから、また釘へ掛け直した。
掛け直して、それから土間の隅の箱を見た。
蒼が置いていった箱である。三本入っている。
燈は開けなかった。
開ける理由が無い。使う日が来たら開ける。その日が来ないほうがいいとは、誰も言わなかった。
> 【鑑定 第三十一号】
> 押印累計 ── 百四十。
> 物件 ── 版木、十四枚。
> 追記 ── 本日、押印五。搭乗五、刻印一。銘量の減少を確認。
> 所見 ── 代替物(版木、十四枚)、消失。
> 贋作体一体、消失。写しの成立しない斑の付与による。
> 付与したのは陶山蒼であります。左手による投擲。
> 撓みの付与 ── 綾織紬。継ぎ目 ── 楠木巌。二本。
> 打撃 ── 火村燈。左手。当たりは浅うございました。
> 斬撃 ── 硝子井玲。左手。
> 五名とも、利き手を替えております。
> 原物(版木、十四枚)── 返却済み。線の深さ ── ばらばらであります。
> 摺りの手加減 ── 必要。摺り損じの見込み ── 三枚に一枚。
> 摺師の申し立て ── 戻ったな。
> 依頼者の申し立て ── 彫らん者が持ってても、それは板だ。
> 銘印、一。譲渡による。該当者 ── 不明。
> 当該銘印の元の所持者 ── 氏名の記録、ありません。墓 ── ありません。
> 当該市外における置き換えの記録 ── 本件が初出であります。
> ただし、初発とは限りません。
> 市の被害 ── 坂の石垣、一箇所。
> 本件、真贋判定 ── 〈贋〉。
> ただし、




