70. 神がいないんじゃない。地球の神は“いなくなった”んだ
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【美月視点】
『星継ぎに触れるな』
また、声が響く。でも。姿は見えない。
「誰なの……」
地球の底にいる。意思を持った何か。それが、サクラ様を星継ぎとして手放そうとしていない。
「美月」
「はい」
「無理すんなよ」
「分かってます」
神性領域へ入ってから。胸の奥が、ずっと反応している。深層適性。管理機構へ繋がった時と同じ。いや。それ以上。
「たぶん。私、ここにも繋がれます」
「……やっぱりか」
「やってみます」
「危なかったらすぐ戻れ」
「はい」
私は、目を閉じる。意識を、神性領域へ伸ばしていく。
「……っ」
一瞬。身体ごと、底のない場所へ落ちていくような感覚。次の瞬間。景色が変わった。
「……どこ?」
目の前に、知らない世界が広がっている。でも。ヴァルメリアじゃない。理由は分からない。なのに、なぜかそう確信できた。
「地球……?」
巨大な都市。空へ伸びる、見たこともない建物。道には、不思議な光が走っている。空にも。巨大な輪。塔。浮かぶ建造物。
「何これ……」
これが本当に昔の地球なら。おかしい。私の知っている現代より。ずっと進んでいるように見える。でも。科学じゃない。至るところに魔法陣がある。結晶が光っている。空中を流れる光そのものが、魔力だと分かる。昔の地球には。本当に、魔法文明があった。
景色が切り替わる。今度は、一つの街じゃない。世界中。大地を巡る、巨大な光。
「……魔力?」
一本じゃない。何本も。何十本も。大陸から、大陸へ。海の底まで。地球全体を、網のように魔力が巡っている。それを見た瞬間。胸が強く鳴った。これ。今の地球が失っているものなんじゃない?サクラ様が代わりに支えているもの。その元の形が、これなんじゃない?
また、景色が変わる。人々が何かを操作している。巨大な装置。魔法陣。結晶。知らない文字。でも。分かる。これは、魔法。人の手で。地球を巡る魔力を調整している。
「昔の地球に……」
「こんな文明が?」
【皐月視点】
「美月?」
返事がない。立ったまま、目を閉じている。管理機構へ接続した時と同じ状態。
「またか……」
俺は、美月の前へ立つ。周囲を見る。あの声の主は、まだ姿を見せない。
「今度は何見てんだよ」
【美月視点】
人。たくさんの人。大きな広場。みんな、一か所を見ている。
「……何?」
その先。一人の人が立っていた。見た目は、普通の人間。なのに。男なのか。女なのか。それすら、なぜか分からない。見えないわけじゃない。見えているのに、認識できない。ただ。見た瞬間。分かった。
「……違う」
人間じゃない。
その人が、手を上げる。すると。大地を巡っていた魔力が、一斉に動いた。空。海。植物。すべてが、その存在に応えるように変化する。
「……」
人々が頭を下げている。敬っている。祈っている。でも。その存在は、人々を見下しているようには見えなかった。怖がらせてもいない。普通に。笑っていた。人々と同じ場所に立って。その声を聞いているように見えた。
「まさか……」
私の中に、一つの言葉が浮かぶ。
「……神?」
その瞬間。景色が、激しく揺れた。
『見るな』
「!」
あの声。
『それ以上見るな』
「あなたなの?」
私は、人々の前に立つ存在を見る。
「この人があなたなの?」
返事はない。でも。強い拒絶が流れ込んできた。怒り。それだけじゃない。何か。もっと深い感情。まるで。見られたくない傷を、無理やり開かれたような。
そして。最後に。一つだけ。はっきりと分かった。遥か昔。地球には。人々と共に生きる。地球の魔力を巡らせ。大地や海へ力を流し。人々と同じように笑う。人格を持った。一柱の神がいた。
意識が、現実へ戻る。
「っ!」
「美月!」
倒れそうになった身体を、おじいちゃんが支える。
「大丈夫か?」
「……はい」
「何が見えた?」
私は、おじいちゃんを見る。
「師匠……地球に……神様、いました」
「……は?」
「ずっと昔……人間と一緒にいた。本物の神様が」
おじいちゃんが、神性領域の奥を見る。そこから。また、あの声が響いた。
『……去れ』
でも。もう、さっきとは聞こえ方が違った。地球には。神がいないんじゃない。神が、いなくなった。なら。次に知るべきことは、一つだった。地球の神は。いったい。どこへ消えたのか。
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――次回予告――
古代地球の文明は、魔力を使うだけではなかった。
大地、海、気候、そして生命。
ついには――世界そのものの循環へ、人間が手を伸ばし始める。
その瞬間。
地球を巡る巨大な魔力に、初めて“揺らぎ”が生まれた。
そして古代地球神は、その異変をただ静かに見つめていた。
次回
『71. 世界そのものを操り始めた瞬間、地球の魔力が揺れた』
次回【朝06:00】更新です!




