69. 「星継ぎに触れるな」――地球の奥から声がした
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【美月視点】
開いた。神性領域。その奥へ。私とおじいちゃんは、ゆっくり足を踏み入れた。
「……何、ここ」
最初に見えたのは、大地だった。どこまでも続く、緑の大地。その向こうには海。さらに上には、青い空。
「外……?」
「いや」
おじいちゃんが首を振る。
「そんなわけねぇ」
そう。ここは地球の奥深く。空があるはずも。海があるはずもない。なのに。目の前には、どう見ても一つの世界が広がっていた。
風が吹く。草が揺れる。波が動く。遠くで、鳥のような何かまで飛んでいる。
「……生きてる」
「何が?」
「この場所」
うまく言えない。でも、そう感じた。ダンジョンとは違う。星継ぎ管理機構とも違う。もっと大きい。まるで、この場所そのものが一つの生き物みたいだった。
【皐月視点】
「変な場所だな」
しゃがんで、地面へ触れる。土。感触まで本物だ。指の間で崩れる。匂いまである。だが。
「……違う」
「何がです?」
「本物の土じゃねぇ」
魔力。神性。生命。いろんなものが混ざっている。それが、大地という形を作っている。
「海も?」
「たぶんな」
「じゃあ空も?」
「全部だ」
美月が辺りを見回す。
「これ」
「地球そのものみたい……」
俺も、同じことを思っていた。大地。海。空。生命。魔力。地球を構成するものが、縮められて一つに集められている。そんな感覚。
「神性領域……いったい誰が作った?」
【美月視点】
「っ!」
突然、胸の奥が強く震えた。
「美月?」
「待って」
また、深層適性。でも。今までとは違う。管理機構に触れた時は。私から、何かへ繋がる感じだった。今は違う。向こうから。私を見られている。そんな感覚。
「……気持ち悪い」
「戻るか?」
「それは嫌」
「即答かよ」
「ここまで来たんだから」
「だな」
一歩。進む。その瞬間。世界が震えた。
「っ!」
海が止まる。波が、途中で止まった。風が止まる。草も。鳥も。全部。止まった。音まで消えた。
「……師匠」
「ああ」
何かいる。それだけは。はっきり分かった。
次の瞬間。声が響いた。
『……去れ』
「!」
男とも。女とも分からない。空からでもない。大地からでもない。海からでもない。まるで。この世界そのものが喋ったような声だった。
【皐月視点】
「誰だ?」
返事はない。
「姿見せろ」
少し、間。そして。
『星継ぎに触れるな』
「……」
サクラ。こいつ、サクラを知ってる。
「お前」
「サクラを星継ぎにしたやつか?」
答えない。代わりに、地面が低く震えた。
『地球を乱す者よ』
『去れ』
「嫌だね」
俺は即答する。
「こっちは、何十年も、サクラを起こす方法を探してんだ」
管理機構にも。星守にも。地球そのものにも。何度邪魔されても。ここまで来た。
「今さら、帰れって言われて帰れるかよ」
【美月視点】
また、世界が震えた。さっきより強い。
「……怒った?」
「知らん」
「師匠が喧嘩売るからでしょ」
「質問しただけだ」
「言い方!」
でも。怖い。この声。管理機構とは違う。管理機構は、命令に従っていただけだった。でも、これは違う。私たちを見ている。判断している。拒絶している。
「……意思がある」
「ああ」
おじいちゃんが、神性領域の奥を見る。
「しかも、ずっとここにいたみたいだな」
地球の底。誰も知らなかった場所。そこに。何万年もの間、存在していた何か。そして、その何かは。サクラ様を知っている。
『星継ぎに触れるな』
もう一度、その声が響く。私は、初めて思った。もしかしたら。私たちは。地球そのものに。拒絶されているのかもしれない。
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――次回予告――
神性領域の奥で、美月が見たもの。
それは、地球を巡る魔力を管理し、
人々と共に生きていた一柱の神だった。
地球に神がいなかったんじゃない。
かつて確かに存在して――そして、いなくなった。
なら次に追うべきは、その理由。
次回
『70. 神がいないんじゃない。地球の神は“いなくなった”んだ』
次回【夕方18:00】更新です!




