68. 地球に、神なんかいねぇはずだろ
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【美月視点】
星継ぎ管理機構との戦いが終わった。いや。正確には、終わったわけじゃない。私たちは、管理機構に敵ではないと認めさせただけ。サクラ様は、まだ星継ぎのまま眠っている。星守はいなくなった。私たちを排除しようとする光も、もうない。なのに。透明な結晶の向こうで眠っているサクラ様は、何も変わらない。
「……結局」
「代わりを見つけないといけないんですよね」
「ああ」
隣で、おじいちゃんが答える。
「サクラの代わりに、地球を維持できる存在」
「そんなもの、本当にいるんですか?」
「知らん」
「知らんって」
「分かってたら、とっくに起こしてる」
「……それもそうだけど」
『皐月』
大賢者の声。
「どうした?」
『地球深部の神性反応が』
『さらに強くなっています』
「……またか」
最近、ずっと観測されていたもの。地球の奥。私たちが普段立っている場所より、ずっと深いところにある。正体不明の神性。それが。管理機構との戦いが終わってから、さらに強くなっている。
「代わりになれる何かが、そこにいる可能性は?」
『不明です』
「ですよね」
期待した私が悪かった。でも。何も関係がないとは、もう思えなかった。
その時。
「……ん?」
おじいちゃんが、管理領域の奥を見る。
「どうしたの?」
「前は」
「こんなのなかった」
「え?」
私も見る。奥。今まで何もなかった場所。そこに。細い光の道が伸びていた。
「道……?」
床に沿っているようにも見える。でも、その先は淡い光に溶けて、どこまで続いているのか分からない。
『確認できません』
「大賢者にも?」
『はい』
『私の観測範囲外です』
「またそれかよ」
おじいちゃんが、小さくため息をついた。
【皐月視点】
管理機構が敵対をやめた。それと同時に。今まで閉ざされていた場所が開いた。偶然。とは思えない。
「美月」
「はい」
「行くぞ」
「やっぱり行くんですね」
「ここまで来て帰れるかよ」
「私も同じです」
「……」
「何です?」
「いや」
「お前、だいぶ慣れてきたな」
「誰のせいだと思ってるんですか」
「俺?」
「おじいちゃんです。師匠です。零です。全部同じ人です」
「まだ怒ってんのかよ」
「当たり前でしょ!」
くだらないやり取りをしながら。俺たちは、光の道を進む。だが。奥へ行くほど、空気が変わっていく。静かだ。なのに。何かに見られているような圧迫感がある。魔力とも違う。ダンジョンの深層で感じるものとも違う。
「……師匠」
「ん?」
「これ」
「ダンジョンじゃないですよね」
「ああ」
管理機構とも違う。もっと古い。もっと大きい。まるで。俺たちが知っている地球よりも前から。ここにあったような感覚だった。
「大賢者」
『はい』
「この先」
「何か分かるか?」
『……』
「大賢者?」
返事が、いつもより遅い。
『申し訳ありません』
『これ以上は』
『完全に観測できません』
「完全に?」
『はい』
『管理機構以上に、私の認識から外れています』
「……」
嫌な予感がする。それなのに。同時に。ここまで来て初めて。本当に答えへ近づいているような気もした。
【美月視点】
しばらく進むと。光の道が、突然途切れた。
「行き止まり?」
前には、何もない。壁すらない。ただ、暗い空間があるだけ。
「いや」
おじいちゃんが前を見る。
「何かある」
「……」
私も手を伸ばす。その瞬間。
「っ!」
胸の奥が、強く震えた。管理機構へ接続した時より。もっと。強い。深層適性。私の中の何かが。目の前にあるものへ、無理やり引っ張られるみたいだった。
「師匠」
「これ……」
目の前。何もなかった空間に、文字が浮かぶ。
《接続個体を確認》
《深層適性反応》
そして。次の文字。
《神性領域への接続を確認》
「……神性?」
私は、思わずおじいちゃんを見る。おじいちゃんも、その文字を見ていた。
「神性領域……」
さっきまでより、少しだけ表情が険しい。
「でも……地球って、神様いないんですよね?」
「ああ。少なくとも……俺たちはそう思ってた」
おじいちゃんが、目の前の光を見る。
「地球に、神なんかいねぇはずだろ」
その瞬間。閉ざされていた空間が、ゆっくり開き始めた。音はない。なのに。世界そのものが動いたように感じた。光の向こう。今まで感じたことのない。巨大な何かの気配が流れ出してくる。思わず、息が止まった。
その奥から。今まで感じたことのない、巨大な何かの気配が流れ出してきた。サクラ様とは違う。管理機構とも違う。ダンジョンとも違う。もっと古く。もっと深く。地球そのものに近い何か。地球の、もっと深い場所。そこに。私たちが知らない何かが。ずっと。存在していた。
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――次回予告――
神性領域の奥で、美月たちに初めて“声”が届く。
『星継ぎに触れるな』
それは命令でも、自動処理でもない。
明確な意思を持って、サクラへ触れることを拒む存在。
地球の底で、何万年も眠っていた“何か”が――
ついに皐月たちへ言葉を向ける。
次回
『69. 「星継ぎに触れるな」――地球の奥から声がした』
次回【朝06:00】更新です!




