71. 世界そのものを操り始めた瞬間、地球の魔力が揺れた
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【美月視点】
地球には。神がいた。遥か昔。人間と一緒に、この世界で生きていた神。でも。分からないことがある。
「師匠」
「ん?」
「昔の地球って、どうしてあんなに発展してたんでしょう」
「俺に聞くな」
「でも」
「おじいちゃん」
「かなり長く生きてるでしょ。美桜おばあちゃんと同じくらいの年齢だったはずなのに。今も全然変わってないし」
「それと古代文明は別だろ」
「……まあ、それはそうだけど」
でも。知りたい。あの巨大な都市。世界中を巡っていた魔力の光。あれは全部、神様が与えたものなのか。
「もう一回……繋がってみます」
「気をつけろよ」
「はい」
再び、神性領域へ意識を伸ばす。
「っ……」
景色が変わる。また、あの古代都市。でも今度は、もっと近い。人々が何かを作っている。巨大な塔。地下へ続く設備。いくつもの結晶。そして。大地の奥から、光が流れ込んでいる。
「……神様から?」
そう思った。でも。違う。すぐに分かった。光は、神様から来ていない。地面から。海から。空気から。この世界そのものから流れている。
「地球の魔力……」
古代の人たちは、その魔力を集めていた。でも。使って終わりじゃない。都市へ流れた魔力。装置を動かした魔力。使われた後の力が、別の道へ流れていく。そして。また別の設備へ。そこで整えられ。再び、大地へ戻っていく。
「循環させてる……?」
奪っているんじゃない。地球から借りて。使って。また返している。そんな仕組みに見えた。
景色が次々に変わる。都市を照らす光。作物を育てる設備。水を運ぶ巨大な装置。空を飛ぶ、乗り物のようなもの。全部、魔力で動いている。でも。魔力を消費するだけじゃない。回収。制御。再利用。使った力を戻しながら、文明を動かしている。
「すごい……」
現代より、ずっと昔なのに。魔力を使う技術だけなら。今より、遥かに進んでいる。
【皐月視点】
「……美月」
また、反応がなくなった。
「慣れたくねぇな、これ」
美月は、目を閉じたまま神性領域へ繋がっている。俺には、何を見ているのか分からない。ただ。神性領域の魔力が、少しずつ動いている。
「今度は」
「何を見つけた?」
【美月視点】
さらに遠くへ、意識が広がる。別の大陸。そこにも都市。また別の場所にも、同じような施設。世界中が、光の線で繋がっている。
「これ……」
「一つの都市だけじゃない」
世界規模。地球全体で、魔力を循環させている。まるで。地球そのものが一つの巨大な魔法装置みたいだった。
その中に。どこか、見覚えのあるような形があった。海に囲まれた巨大な都市。別の場所には、海の向こうに広がる大きな文明。
「……まさか」
子供の頃に聞いたことがある。消えた大陸。伝説の文明。
「アトランティス?」
そして。
「ムー……?」
もちろん。今見えている場所が、本当にその名前だったのかは分からない。でも。こんな文明が本当に存在して。その記憶だけが何千年、何万年と残って。形を変えながら伝説になったのだとしたら。
「……本当にあったんだ」
でも。景色が少しずつ変わっていく。最初は、都市を動かすだけだった。魔力。次は、農地。そこまでは分かる。でも。次は。雨。風。気温。
「……え?」
人間たちが、空を操作している。雨を降らせる。嵐を弱める。気温を変える。
「そんなことまで……」
さらに。海。巨大な装置が、潮の流れへ干渉する。大地。地中を流れる魔力へ、直接触れている。植物。生き物。生命そのものへ、魔力を送り込んでいる。
「待って」
最初は。地球の力を利用していただけだった。地球から借りて。使って。戻していた。でも。いつの間にか違っている。人間が。地球の循環そのものを。変え始めている。
『……』
また、あの気配。
「あなたも……見てたの?」
返事はない。ただ。古代の神が、遠くから人間たちを見ていた。前に見た。あの優しい笑顔は、もうない。怒っているようにも見えない。もっと。心配するような。何か悪いことが起きるのを知っているような顔だった。
「これ……」
私は、やっと気づいた。すごい文明だった。夢みたいな技術だった。人間の暮らしを、豊かにした力。地球から魔力を奪うだけじゃなく。ちゃんと戻して。循環させていた。でも。発達しすぎた。大地。海。気候。魔力。生命。人間は、ついに。世界そのものへ、手を伸ばし始めた。
その瞬間。地球を巡っていた、巨大な魔力の光が。一か所だけ。不自然に揺れた。
「……何?」
ほんの小さな乱れ。一瞬だけ。光が震えただけ。なのに。なぜか。ものすごく嫌な予感がした。私だけじゃない。古代地球神も。その場所を、じっと見ている。さっきまで人間たちを見ていた、その顔で。今度は、たった一か所の乱れを見ていた。まるで。これから何が起きるのか。すでに分かっているかのように。
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――次回予告――
古代文明が目指したのは、支配ではなかった。
飢えをなくすため。
災害を減らすため。
人々の暮らしを、もっと良くするため。
けれど世界へ手を伸ばしすぎた結果、
地球そのものの循環が壊れ始める。
そして古代地球神は――
星を、人を、未来を守るための“選択”を迫られる。
次回
『72. 世界を良くしたかっただけなのに、地球が壊れ始めた』
次回【夕方18:00】更新です!




