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世界を救った少女が眠り続けているので、大悪魔の俺が今度こそ救うことにした  作者: 和伊 和威
第一章 眠り続ける星継ぎと、目覚め始めた地球の神
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07. 嫌いな祖父だと知らないまま、美月は黒瀬蓮に憧れた

いつも応援ありがとうございます!


当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


今回もぜひ、最後までお楽しみください!

【美月(みづき)視点】

 休日。私は友達四人と一緒に、近くのダンジョンへ来ていた。全員、ハンターになったばかり。登録証はまだ新しくて、装備もどこか買ったばかりの匂いがする。それでも、私たちは少し浮かれていた。今日の予定は、二階層くらいまで。低ランクの魔物と戦って、無理せず帰る。そう決めていた。初めての実戦。怖くないわけじゃない。でも、それ以上に胸が高鳴っていた。私も今日から、本当にハンターになるんだ。おばあちゃんみたいに、誰かを守れる人になるための一歩を踏み出すんだ。そう思っていた。


 最初は、本当に順調だった。一階層で出た小型の魔物は、講習で習った通りに対処できた。二階層でも、危ない場面はほとんどなかった。剣を振る。魔力灯で足元を照らす。互いに声をかけながら進む。それだけで、ちゃんとハンターをしている気がした。

「思ったより余裕じゃない?」

 友達の一人が笑った。

「もうちょっと行ってみる?」

 誰かがそう言った。本当なら、そこで止めるべきだった。二階層まで。最初にそう決めていたのだから。でも、私は止めなかった。

「五階くらいなら大丈夫でしょ」

 そう言ったのが誰だったのか、もう覚えていない。たぶん、私も同じことを思っていた。


 五階層に着いた時、少しだけ空気が変わった気がした。通路が暗い。壁の湿気も増えている。でも、誰も戻ろうとは言わなかった。最初に現れたゴブリンは三体。

「来た!」

 私たちは慌てて武器を構える。さっきまでより動きが速い。それでも、倒せない相手ではなかった。一人が牽制し、もう一人が横から斬る。私も震える手で剣を握り直し、目の前の一体へ踏み込んだ。刃が当たる。ゴブリンが倒れる。

「やった……!」

 勝てた。そう思った。その瞬間、奥から足音が聞こえた。


「また来た!」

 奥からさらに五体。その後ろにも、まだ影が見えた。

「多すぎない!?」

 誰かの声が裏返る。逃げようとした。でも、遅かった。横道からも、ゴブリンが出てくる。気づいた時には、完全に囲まれていた。

「きゃっ!」

 一人が足を滑らせて転ぶ。

「痛っ……!」

 別の友達が腕を切られた。血が見えた瞬間、頭の中が真っ白になりかける。

「美月!」

「分かってる!」

 剣を振るう。一体倒す。でも、すぐ次が来る。もう一体。さらに一体。息が上がる。足が重い。手が震える。怖い。私が調子に乗ったからだ。最初の予定通り、二階層で帰っていれば。私が止めていれば。

「……ごめん」

 思わず、呟いた。


 その時だった。

「頭下げるのは、帰ってからにしろ」

「え?」

 低い声がした。振り返るより先に、黒い影が私たちの前へ出る。知らない男だった。顔の半分を布で隠している。年齢は、たぶん五十代くらい。腰には一本の剣。でも、不思議と怖くはなかった。いつの間に来たのか分からない。それなのに、その背中が私たちとゴブリンの間に立った瞬間、空気が変わった。

「下がってろ」

 それだけ言って、男は踏み込んだ。


 速い。そう思った時には、もう一体目のゴブリンが倒れていた。男は止まらない。二体目。三体目。私たちが必死になって戦っていたゴブリンが、次々に倒れていく。大きな魔法なんて使っていない。派手な技もない。ただ、避けて、斬って、次へ進む。それだけ。それだけなのに、全然違う。ゴブリンの腕が振り上げられる前に、男はもうそこにいない。逃げようとした一体の足元を斬り、飛びかかってきた一体の首筋へ刃を入れる。まるで最初から、ゴブリンがどう動くのか全部分かっているみたいだった。私は剣を握ったまま、動けなかった。怖くて動けなかったんじゃない。見入っていた。最後の一体が倒れる。さっきまで響いていたゴブリンの鳴き声が消えた。通路が、急に静かになった。


「……すご」

 思わず声が漏れた。男が振り返る。布に隠れて表情はよく見えない。でも、目だけで怒っているのは分かった。

「新人が五階まで来るな」

「……はい」

 何も言い返せなかった。完全に正論だった。友達は怪我をしている。一人はまだ座り込んだまま震えている。私たちは、全然大丈夫じゃなかった。

「帰れるか?」

「はい」

 答えてから、私は慌てて聞いた。

「あの!」

「何だ」

「名前、教えてください!」

 男は少しだけ嫌そうな顔をした。

「黒瀬蓮(くろせれん)」

「黒瀬さん……」

 覚えた。


「本当にすごかったです! さっきの、どうやったんですか?」

「普通に倒しただけだ」

「普通じゃないです!」

「うるさい」

「何級なんですか?」

「B級」

「B級!?」

 絶対もっと強い。そう思ったけど、口には出さなかった。黒瀬さんは私たちを見回す。

「怪我人いるだろ。ギルドまで戻るぞ」

「一緒に来てくれるんですか?」

「途中でまた死なれたら面倒だからな」

 ぶっきらぼう。口も悪い。優しい言葉なんて一つもない。でも。なんだろう。格好いい。

「黒瀬さん!」

「今度は何だ」

「私、もっと強くなりたいです!」

「そうか」

「戦い方、教えてください!」

「嫌だ」

「即答!?」

 後ろで友達が笑っていた。私は構わず、黒瀬さんの後を追った。もっと強くなりたい。さっきみたいに、何もできずに謝るだけじゃなくて。誰かに守られるだけじゃなくて。いつか、誰かを守れるように。そのためなら、この無愛想な人に何度断られても構わない。そう思った。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださっている方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

第一章も楽しんでいただけていたら嬉しいです!


面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第三部を最後まで駆け抜ける凄まじいエネルギーになります!


(星は1つからでも、ポチッと気軽に押していただけると大喜びします!)


――次回予告――

黒瀬蓮を追いかけるほど、美月の周りには祖父・皐月へ繋がる違和感が増えていく。


そしてついに気づいてしまう。

家を訪ねていた男が、ハンターギルドの総帥だったことに――。


次回

『08. 黒瀬蓮に憧れるほど、美月は祖父の正体へ近づいていた』


次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!

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