66. 《最高位保全処理へ移行》――星守の最上位が起動した
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【美月視点】
《判断更新》
管理機構の中。大量の文字が、一斉に動き始めた。
「……何?」
私の問いを、考えている?そう思った。でも。
《外部接続個体による管理情報への干渉を確認》
《最上位命令への接触を確認》
《地球防衛への影響を算出》
「……ちょっと」
嫌な感じがする。
「私は話をしたいだけなんだけど」
当然、返事はない。代わりに。新しい文字。
《危険判定――上昇》
《地球防衛への脅威と認定》
「……え?」
【皐月視点】
空気が、変わった。
「美月?」
管理機構に触れたまま、美月は動かない。その周囲を、俺が守っている。だが。星守たちが突然、攻撃を止めた。
「……何だ?」
一体。二体。全部、下がっていく。壊れかけた個体まで、床へ沈んでいく。急に、静かになった。
「終わり……じゃねぇよな」
そんなわけがない。こういう静かさは、大体ろくなことにならない。
《地球防衛への脅威を確認》
《通常保全個体では排除困難》
「……おい」
《最高位保全処理へ移行》
管理領域全体が、大きく揺れた。
「嫌な予感しかしねぇ」
床。壁。柱。あらゆる場所から、光が流れ始める。一か所へ。集まる。結晶。魔石。植物の根。白銀の装甲。今までの星守とは、比べものにならない量。
「……でけぇ」
形成されたのは、巨大な騎士。さっきの巨大個体すら、小さく見える。背中からは、何本もの根。その全部が、管理領域そのものへ繋がっている。
《星守統括個体》
《起動》
「統括……」
星守の最上位ってことか。
《排除対象》
《接続個体――朝倉美月》
《重大干渉個体――春日皐月》
「……」
名前まで出しやがった。黒瀬蓮でも。零でもない。春日皐月。管理機構は、とっくに俺の中身まで見ている。
「完全に目つけられたな」
次の瞬間。星守統括個体が動いた。
星守統括個体が動く。
「っ!」
速い。あの巨体からは、想像できない。拳。避ける。その後ろ。床が、消し飛んだ。
「美月に当てさせるかよ」
俺は、少しだけ出力を上げる。その瞬間。胸の奥。魂糸が、震えた。
「……」
まだ、サクラと繋がっている。本気は出せない。出すつもりもない。それでも。今までより、もう一段。
「これくらいなら」
「耐えろよ、サクラ」
踏み込む。星守統括個体の拳を、正面から逸らす。懐へ。一撃。白銀の装甲が、大きく陥没する。すぐ。結晶が再形成。
「やっぱ直るか」
なら。直るより速く、壊す。拳。蹴り。根を切る。結晶を砕く。再形成される前に、また壊す。それでも。地球からの光は、止まらない。
【美月視点】
何かが、強く揺れた。管理機構の中にいるのに。外の様子が、少しだけ伝わってくる。
「おじいちゃん……?」
光の向こう。戦っている。何と?分からない。でも。ものすごい力が、ぶつかっている。一瞬。外が見えた。
「……え?」
おじいちゃんが、巨大な白銀の騎士と戦っている。殴る。砕ける。避ける。また壊す。速い。今までより、さらに。
「……何なの、この人」
零がS級ハンターなのは知っている。その零も、おじいちゃんだった。だから、強いこと自体はもう分かっていた。でも。
「零の時より……」
私が知っている零の強さ。それより、さらに何かが違う。
【皐月視点】
拳。避ける。根を切る。結晶を砕く。だが。地球から、また力が流れ込む。
「本当に」
「反則だろ、これ」
統括個体が、両腕を広げた。周囲に、大量の光。
「まずい」
狙いは。俺じゃない。美月。
「させるか!」
前へ。全部、受け止める必要はない。軌道を変える。一つ。二つ。三つ。残りは、まとめて。
「吹っ飛べ!」
衝撃。光が散った。
【美月視点】
「……」
見えてしまった。おじいちゃんが。私の身体を、守っている。管理機構へ接続して。動けなくなっている私を。ずっと。
「なんで……」
この人は、何者なんだろう。どうして、こんなに強い?どうして、何十年経ってもほとんど歳を取らない?黒瀬蓮。零。春日皐月。いくつ、秘密を持っているんだろう。
《重大干渉個体》
《危険度再評価》
《排除優先度――最高》
「……」
管理機構まで、おじいちゃんを最も危険な存在として見ている。
「本当に……何なの……」
【皐月視点】
「美月!」
返事はない。まだ中か。
「早くしろよ」
俺にも、いつまでもこれを続けられるわけじゃない。統括個体が再生する。さっき砕いた場所が、もう戻っている。でも。役割は決まっている。
「俺が」
拳を構える。
「こいつを押さえる」
だから。
「お前は……中をどうにかしろ」
【美月視点】
聞こえた。遠く。ほんの少しだけ。
『お前は、中をどうにかしろ』
「……」
また、師匠みたいに。私に任せる。
「命令しないでよ」
小さく呟く。でも。私は、最上位命令を見る。
《地球を守れ》
その下。
《星継ぎを維持せよ》
「分かってる」
外は、おじいちゃんに任せる。今だけは。信じる。
「こっちは」
「私がやる」
私は、管理機構のさらに深い場所へ。手を伸ばした。
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――次回予告――
《解除不可》。
それしかなかったサクラ救済の道に、初めて変化が生まれる。
地球を守る“代わり”さえ見つかれば、
星継ぎを終わらせることは許される――。
そして、その候補を示すように。
地球深部の《神性反応》が、さらに強くなり始める。
次回
『67. “解除不可”しかなかった道に、初めて条件が生まれた』
次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!




