65. 最上位命令は、「星継ぎを守れ」ではなく「地球を守れ」だった
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【美月視点】
《最上位命令》
目の前に、巨大な文字が浮かんでいる。
「……これが」
この管理機構が、動いている理由。星守を作り続ける理由。サクラ様を、何十年も眠らせ続けている理由。私は、さらに近づいた。外では、まだ師匠が戦っているはずなのに。ここだけは、不気味なくらい静かだった。そして。文字が、ゆっくり変わる。
《最上位命令》
《地球を守れ》
「……え?」
思わず、声が出た。
「星継ぎを……守れじゃない?」
もう一度見る。
《地球を守れ》
間違いない。その下に、さらにいくつもの命令が浮かび上がる。
《地球環境維持》
《生命循環維持》
《魔力循環維持》
そして。
《星継ぎを維持せよ》
「……」
私は、その文字を見つめた。
「こっちが」
「下なんだ」
星継ぎを維持することは、目的じゃない。地球を守るための、手段なんだ。
今まで、勘違いしていた。星継ぎ管理機構。名前からして、サクラ様を守るためのものだと思っていた。星守も。私たちがサクラ様を傷つけると思って、攻撃しているんだと思っていた。でも。違う。この機構にとって、一番大事なのは。サクラ様じゃない。
「地球……」
その瞬間。さっきまでとは違う意味で、胸が冷たくなった。
さらに、情報が流れ込んでくる。
《星継ぎ接続――正常》
《地球維持への寄与――継続》
《星継ぎ状態――維持》
《解除――不許可》
「なんで……」
次の文字。
《星継ぎ接続解除》
《地球維持能力低下の可能性》
《危険判定》
《解除不可》
そこで、やっと分かった。
「そっか」
サクラ様が眠っている。その状態で、地球は安定している。だったら、この機構にとっては。そのままが、一番安全なんだ。
「サクラ様が、起きたいかどうかなんて、関係ないんだ」
返事はない。当然だ。これは人間じゃない。善悪も。気持ちも。たぶん、分からない。地球を守る。そのためだけに動いている。サクラ様を起こす。地球が危険になるかもしれない。なら、起こさない。サクラ様を自由にする。地球の維持が不安定になるかもしれない。なら、自由にしない。たった、それだけ。私は拳を握った。
「これ……」
悔しかった。
「守ってない」
女神として崇められて。世界を救った人として、大切にされていると思っていた。でも。この管理機構は、サクラ様自身を一度も見ていない。
「使ってるだけじゃん」
【皐月視点】
「美月!」
返事がない。あいつ、まだ管理機構に繋がったままか。
「くそっ!」
星守が来る。一体を弾く。巨大な星守が横から腕を振る。
「っ!」
避ける。反撃。結晶を砕く。だが、すぐに地面から光が流れ込む。
「またかよ」
直る。本当に、終わらねぇ。それでも、美月から離れるわけにはいかない。
「早く戻ってこい」
また星守。
「こっちも」
「そろそろキツいぞ」
【美月視点】
外で、師匠が戦っている。なんとなく、それだけは分かる。でも、私はまだ戻れない。
「だったら」
私は、管理機構へ問いかける。
「地球がサクラ様なしでも大丈夫なら?」
文字が、止まった。
「……え?」
《未確認》
「未確認?」
私は、さらに聞く。
「地球が回復して、サクラ様への依存が減ってる。それでも……眠らせ続けるの?」
《……》
初めて、答えが来ない。
「もしかして」
私は、目の前の文字を見る。
「この機構、知らない?」
《地球を守れ》
その命令は、間違っていない。地球を守る。命を守る。世界を守る。それ自体は、何もおかしくない。問題なのは。そのための方法。昔は。サクラ様を星継ぎとして維持しなければ、地球を守れなかった。だから。
《星継ぎを維持せよ》
そう決めた。でも。今も同じとは限らない。
「だったら、命令そのものが間違ってるんじゃない」
私は、目の前の文字を見る。
「判断が古いままなんだ」
《地球を守れ》
その命令は、間違っていない。問題なのは、そのための方法。地球を守るために、サクラ様を永遠に使い続ける。それしか、この機構は知らない。
「なら」
私は、一歩さらに奥へ進んだ。
「教えればいい」
今の地球を。サクラ様への依存が、昔より減っていることを。他にも、地球を守れる可能性があることを。星継ぎを維持することだけが、唯一の答えじゃないことを。この機構に、認めさせればいい。まだ、サクラ様を起こせるわけじゃない。でも。初めて。サクラ様を解放するための道が。少しだけ、見えた気がした。
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――次回予告――
管理機構は、美月と皐月をついに《地球防衛への脅威》と認定する。
そして起動したのは――《最高位保全処理》。
無限に再生する星守、その頂点に立つ《星守統括個体》。
外では皐月が、内では美月が。
それぞれの役目を背負い、ついに管理機構の核心へ挑む。
次回
『66. 《最高位保全処理へ移行》――星守の最上位が起動した』
次回【夕方18:00】更新です!




