58. 「B級って嘘ですよね?」とうとう美月にバレました
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【美月視点】
星守が。一体。二体。三体。同時に動く。
「師匠!」
「下がってろ!」
次の瞬間。師匠の姿が、消えた。
「……え?」
音だけが、遅れて聞こえる。ドンッ。ガンッ。バキッ。一体目。胸が砕ける。二体目。白銀の腕が折れる。三体目。壁まで吹き飛ぶ。
「……」
何。今の。私は、瞬きすることも忘れていた。さっきまでの師匠も強かった。でも、今のは違う。強いとか、そういう話じゃない。見えなかった。
師匠が、また動く。速すぎる。ほとんど見えない。星守が再生を始める。でも、形が戻る前に、師匠がまた破壊する。一体。二体。三体。次々。
「……師匠」
強い。それは前から知っていた。私よりずっと強い。ダンジョンで助けられた時も。訓練してもらっている時も。この人は普通じゃないと思っていた。でも。これは、今までと違いすぎる。B級。その言葉が、頭の中で急に薄くなっていった。
【皐月視点】
力は、まだ抑えている。これ以上、一気に引き上げるのはまずい。サクラと、魂糸共鳴で繋がったまま。多少は耐えられるようになったとはいえ、限界が消えたわけじゃない。俺が無理に力を引きずり出せば、糸が震える。糸が震えれば、サクラにも届く。ここでそれは避けたい。
「……このくらいで」
一体、潰す。もう一体、蹴り飛ばす。再生。
「本当に」
「キリねぇな」
壊せる。だが、終わらない。それが一番面倒だった。
【美月視点】
師匠の戦いを見ているうちに。驚きより、別の感情が出てきた。……違和感。この人。今まで、ずっと手加減してた?私との訓練でも。ダンジョンでも。全部。
「……」
しかも、師匠はB級ハンター。私は、その肩書きをずっと普通に信じてた。でも、さすがにこれは。
戦闘が、一瞬止まる。
「……師匠」
「何だ」
「一個聞いていい?」
「今か?」
「今だから」
「何だよ」
「B級って」
少し間。
「嘘ですよね?」
「……」
「やっぱり!」
「何がやっぱりだ」
「黙ったじゃん!」
「今それどころじゃねぇだろ」
「でも!」
「今まで本気じゃなかったですよね?」
「……まあ」
「やっぱり!」
「どれくらい隠してるんです?」
「それは」
「言えない」
「なんで!」
「事情がある」
「またそれ!」
怪しい。怪しすぎる。
「師匠」
「何だ」
「何者なんですか?」
「ただのハンターだ」
「もうそれ絶対嘘!」
「失礼だな」
「どこが!」
その瞬間。空間に、また文字が浮かんだ。
《対象個体一》
光が、師匠をなぞる。
《危険度再評価》
「……」
《保全処理強化》
《星継ぎへの重大干渉能力を確認》
「……師匠」
「何だ」
「なんか」
「私より師匠の方が……ヤバいやつ扱いされてません?」
「失礼な機械だな」
「……」
【皐月視点】
余計な判定しやがって。美月の視線が、完全に疑ってる。
「あとで説明してくださいよ」
「できる範囲でな」
「その言い方がもう怪しい!」
その時、床が大きく揺れた。
「美月」
「はい」
「下がれ」
「また?」
「今度は本当に下がれ」
管理領域の奥。大量の光が、一か所へ集まっていく。床。壁。巨大な柱。そこから、結晶、魔石、植物の根、白銀の装甲が組み上がっていく。今までとは、明らかに違う。
「……大きい」
美月が呟く。人型。でも、さっきまでの星守とは比べものにならない。巨大な、白銀の騎士。全身には結晶と魔石が浮かび、植物の根が絡みついている。そして足元は、管理領域そのものと繋がっていた。
「……師匠」
「ああ」
「あれも倒せる?」
「倒す」
「でも」
俺は、巨大な星守を見る。
「たぶん……また戻ってくる」
「じゃあどうするの?」
俺は星守じゃなく、その奥を見る。巨大な管理領域。星守を作り、壊れれば戻し、足りなければ補充するもの。こいつらをいくら壊しても終わらない。なら。
「こいつらじゃねぇ」
「え?」
「止めるなら」
「こいつらを作ってる方だ」
巨大な星守が、ゆっくりこちらへ向いた。
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――次回予告――
美月を救うため、皐月はついに《黒瀬蓮》の姿を捨てる。
その瞬間。
目の前に現れたのは、信じてきた師匠ではなく――ずっと嫌ってきた祖父だった。
黒瀬蓮。
春日皐月。
二つの存在が、一つに重なる。
次回
『59. 目の前にいたのは、師匠じゃなかった』
次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!




