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55. B級。その言葉が、急に遠くなった

いつも応援ありがとうございます!


当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


今回もぜひ、最後までお楽しみください!

【美月(みづき)視点】

 星守(ほしもり)が、また動いた。

「来る!」

「下がれ!」

 師匠が前へ出る。次の瞬間、ものすごい音が響いた。拳。蹴り。衝撃。白い影が揺れたと思ったら、師匠の姿も消える。速すぎて、私にはほとんど見えない。ただ、音だけが遅れて届く。空気が割れる。床に光が走る。星守の身体が横へずれる。そして、また師匠が前にいる。

「……」

 さっきより。師匠の動きが速くなっている。ような気がする。気のせいじゃない。たぶん。まだ、師匠は何かを隠している。



【皐月(さつき)視点】

 星守の腕を弾く。速い。だが、追えないほどじゃない。懐へ入る。一撃。さらにもう一撃。白い身体に、ひびが走る。

「これでどうだ」

 最後に、蹴り飛ばす。星守が、床を滑っていく。数本の光の管をかすめ、白い身体が壁際で止まる。そのまま、動かなくなった。壊した。そう言い切るには、手応えが薄い。だが少なくとも、目の前の一体は止まった。俺は息を整えながら、美月の位置を確認する。まだ後ろにいる。よし。だが、嫌な予感は消えなかった。



【美月視点】

「倒した?」

「たぶんな」

「たぶん!?」

「油断すんな」

 私は、倒れた星守を見る。さっきまで、あんなに怖かったのに。今はもう動かない。白い身体にひびが入り、光が少しずつ薄くなっている。

「師匠」

「何だ」

「やっぱり強いですね」

「今さらか」

「B級ってすごい……」

「……」

「何です?」

「いや」

「別に」

 師匠が、なぜか少しだけ目を逸らした。変なの。褒めたのに。でも、今の師匠は確かにすごかった。B級ハンターって、こんなに強いんだ。そう思った。もちろん、この時の私はまだ知らない。それが、かなり間違った感想だったことを。


 その時。低い音。ゴォン――。

「……また?」

 奥の暗闇に、光が灯る。一つ。二つ。三つ。

「師匠」

「見えてる」

「増えてません?」

「ああ」

 ゆっくり、星守がまた現れる。さっき倒れたものと同じ。白い鎧のような身体。目も口もない顔。ただ、排除するためだけに作られたみたいな人型。

「さっきの倒した意味ある?」

「あると思いてぇな」

 《保全処理継続》

 《不足個体を補充》

「補充?」

 私は思わず、文字を見る。

「不足って」

「倒されたから?」

「そうだろうな」

 さらに、別の星守。また一体。

「これ」

「終わらなくない?」

 師匠が、何も言わない。その沈黙が、答えだった。



【皐月視点】

 やっぱり、単なる番人じゃない。一体倒せば、次が出る。足りなくなれば、補充される。誰かが作っている。いや。何かが、必要な数を自動で揃えている。星守そのものに意思はない。動きにも迷いはない。ただ命令に従い、足りなければ増える。なら、こいつらを倒し続けても意味がない。

「美月」

「はい」

「こいつら相手にしてても終わらねぇ」

「私もそう思います」

「本体を探す」

「本体?」

「ああ」

「こいつらを出してるやつだ」


 その瞬間。空間全体が、大きく光った。

 《星継(ほしつ)ぎ保全機構》

「……」

 《管理処理継続》

 《外部干渉排除》

 さらに、文字が変わる。

 《星継ぎ管理機構》

「……星継ぎ」

「管理機構?」

 美月が読む。

「ああ」

「これが」

「ここの名前?」

「たぶんな」

 星継ぎ管理機構。星継ぎを保全し、管理し、外部からの干渉を排除する場所。名前だけなら、役割は分かる。だが問題は、何を基準に管理しているかだ。サクラという人間を見ているのか。星継ぎという機能だけを見ているのか。答えは、もう出かけていた。



【美月視点】

 星継ぎ管理機構。名前が、はっきり出た。

「じゃあ」

「星守は」

「この管理機構が出してる?」

「そういうことだろ」

「管理って」

 私は、奥を見る。

「サクラ様を?」

「たぶんな」

「……」

 また、嫌な感じがする。守る。じゃなく。管理。その言葉は、サクラ様を人として扱っている感じがしなかった。まるで、装置の一部みたいに。機能の一つみたいに。その時、さらに文字が浮かぶ。

 《星継ぎ状態――正常》

 《地球接続――維持》

 《管理処理――継続》

「ほら」

 私は言う。

「やっぱり」

「サクラ様をずっと維持してる」

「そう見えるな」

「でも」

「なんで?」

 師匠は、答えない。まだ、分からないから。でも私は思う。何十年も眠っている人を。正常。そう表示するこの場所は、やっぱりどこかおかしい。


 星守が、また動く。一体。二体。三体。白い人型が、同時にこちらへ向く。目もないのに、視線だけが重い。

「師匠」

「何だ」

「これ全部相手するの?」

「今のままじゃな」

「無理じゃない?」

「お前はな」

「師匠は?」

「……」

「なんで黙るの」

 その沈黙は、変だった。無理なら無理と言えばいい。危険なら危険と言えばいい。でも師匠は、黙った。まるで。できるけれど、やりたくない。そう言っているみたいだった。



【皐月視点】

 正直、少し面倒になってきた。こいつら、硬い。速い。そして、増える。一体ずつならどうとでもなる。だが、美月を守りながら、黒瀬蓮として手加減したまま、いつまで続ける?長引けば長引くほど、美月が危ない。星守を倒し続けても終わらない。本体を探すにしても、このままでは邪魔が多すぎる。

「……そろそろ」

 少し、力を出すか。全部じゃない。まだ、見せるわけにはいかない。だが、美月を守るためなら。少しくらいは仕方ねぇ。



【美月視点】

 師匠が、急に静かになった。

「師匠?」

「美月」

「はい」

「絶対」

「俺の後ろから出るな」

「……分かった」

 いつもの軽い命令とは違った。だから私も、ふざけて返せなかった。

「あと」

「何?」

「驚くなよ」

「え?」

 師匠が、一歩、前へ出る。その瞬間、空気が変わった。

「……何」

 さっきまでと、全然違う。肌がざわつく。胸の奥が、ぎゅっと掴まれる。怖い。でも、敵じゃない。師匠だ。私の前に立っているのは、間違いなく師匠なのに。その背中が、さっきまでよりずっと遠く見えた。

「師匠」

「何ですか、それ」

 返事はない。星守たちが、一斉に師匠へ向かう。


 星守たちが、一斉に師匠へ向かう。一体でも、私には見えなかった相手。それが三体。同時に。でも師匠は、動かなかった。いや。動いていないように見えただけだった。師匠の足元から、黒い魔力のようなものが静かに揺れる。管理領域の光が、ほんの少し歪んだ。

「……」

 何これ。B級。そんな言葉が、急に遠くなる。私は、息をすることも忘れていた。そして次の瞬間。私は初めて。師匠の本当の強さの一端を。見ることになった。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださっている方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

第一章も楽しんでいただけていたら嬉しいです!


面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第三部を最後まで駆け抜ける凄まじいエネルギーになります!


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――次回予告――

倒しても、壊しても。

《星守》は何度でも再形成される。


一方の皐月も、魂糸共鳴のせいで無限に力を振るえるわけではない。

このまま戦い続ければ、先に消耗するのは皐月の方。


ならば狙うべきは、星守ではなく――

“星守を何度でも戻している何か”。


次回

『56. 無限に戻る星守と、無限には力を出せない大悪魔』


次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!

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