54. “サクラ様を守る”と“星継ぎを守る”は、同じ意味じゃなかった
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【美月視点】
《干渉可能性――高》
光の文字が、静かに浮かんでいる。
「師匠」
「何だ」
「これ、やっぱりまずくないですか?」
「ああ」
師匠の返事が短い。それだけで、余計にまずい気がした。
《星継ぎへの干渉を確認》
空気が、少しだけ変わった。光の流れが止まったわけではない。でも、さっきまでただ観察されていた感覚が、今は違う。判定された。そう感じた。
「干渉って」
「私たち、何もしてないですよね?」
「入った時点で干渉扱いなんだろ」
「厳しすぎる!」
本当に、何もしていない。ただ、この場所に入っただけ。でも、この場所にとっては。それだけで十分だったらしい。
《保全処理開始》
「……保全?」
私は、その言葉を見つめる。保全。守る。維持する。壊れないようにする。でも、何を。サクラ様を?それとも。星継ぎという仕組みを?
「サクラ様を守るってこと?」
「そうかもしれねぇ」
師匠が前へ出る。その背中で、私の視界が少し狭くなる。その直後。
《外部個体を再判定》
《星継ぎへの影響――許容不可》
「許容不可って……」
嫌な予感しかしない。許容できない。つまり。私たちは、この場所にいてはいけないものとして扱われている。
【皐月視点】
周囲の光が、一斉に消えた。
「美月」
「はい」
「俺の後ろ」
「分かってます」
返事は早い。だが、声が少し硬い。無理もない。俺だって、楽しい状況とは思っていない。低い音。ゴォォォン――。巨大な機構の奥。何かが、ゆっくり開く。
「……扉?」
美月が呟く。
「たぶんな」
《排除対象を認定》
「ほら来た」
「来なくていいのに!」
奥の暗闇。その中から、一つ、白い影が現れた。
「……人?」
「違う」
人の形。でも、人間じゃない。全身を覆う、白い鎧のようなもの。顔には、目も、口もない。ただ、人型だけをしている。
「何あれ」
「知らん」
「師匠でも?」
「初めて見る」
「嫌な答え!」
その通りだ。俺も、かなり嫌な答えだと思っている。
【美月視点】
白い人型が、ゆっくり、こっちを見る。目なんてない。顔には何もない。それなのに。見られた。そう感じた。
《保全個体起動》
「保全個体?」
師匠が、少しだけ眉をひそめる。
「番人みたいなもんか」
「番人……」
何を守る番人なのか。サクラ様を守るのか。星継ぎ核を守るのか。それとも。サクラ様を星継ぎのまま維持するための番人なのか。さらに文字。
《星継ぎ保全》
《外部干渉排除》
《処理開始》
「……来る!」
白い人型が、消えた。
「え?」
本当に、見えなかった。一瞬前までそこにいたのに。次の瞬間。
「伏せろ!」
師匠に、思いきり肩を引かれた。頭のすぐ上を、何かが通り過ぎる。
「っ!」
風だけで、髪が大きく揺れた。もし師匠に引かれていなかったら。たぶん、今の一撃は私に当たっていた。
「見えなかった……」
「無理に見るな!」
師匠が、前へ出る。その背中を見て、私は剣を握り直した。でも分かる。今の私が前に出ても、足手まといになる。
【皐月視点】
拳。受け流す。重い。
「……なるほど」
こいつ、ただの警備用じゃねぇな。速さもある。重さもある。何より、動きに迷いがない。殺意ではない。怒りでもない。ただ、排除するための動き。蹴りを返す。白い人型が、数メートル後ろへ滑る。すぐに、姿勢を戻す。
「硬ぇな」
「師匠!」
「下がってろ!」
《排除処理継続》
白い人型が、再び突っ込んでくる。速い。だが、見えないほどじゃない。拳を逸らす。腹へ、一発。叩き込む。大きく、吹き飛ぶ。だが、手応えが浅い。壊した感触がない。厄介だな。俺は小さく舌打ちした。
【美月視点】
「……すご」
何が起きているのか、ほとんど分からない。白い人型が消えたと思ったら、師匠が動いている。空気が裂けるような音がして、白い影が吹き飛ぶ。目で追おうとしても、途中で見失う。でも。師匠が、あの白いのと戦えている。それだけは分かる。
「師匠!」
「何だ!」
「あれ何なんですか!」
「俺が知るか!」
「名前!」
「ない!」
その瞬間。白い人型が立ち上がる。また、こちらへ向く。
《星継ぎ保全個体》
《識別名称――星守》
「……星守」
私が呟く。
「名前あるじゃん!師匠、適当だった!」
「うるせぇ!」
星守。星継ぎを守る存在。でも、その守り方は。私たちを、排除すること。
《星継ぎへの干渉を排除》
《保全処理継続》
星守が、また動く。師匠が、私の前へ立つ。
「美月」
「はい」
「絶対に前へ出るな」
「分かりました」
私は、剣を握る。でも、今は。戦うより、見なきゃいけない気がした。この星守が、何を守っているのか。サクラ様を守っているのか。それとも。サクラ様を星継ぎとして閉じ込めている、別の何かを守っているのか。管理領域の奥で。初めて。星継ぎを守る存在が、私たちの前に現れた。
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――次回予告――
倒しても、倒しても補充される《星守》。
美月を守りながら戦い続けるには、もう“黒瀬蓮”の力だけでは足りない。
そして皐月は、ついに隠していた力の一端を解放する。
その瞬間。
美月の中で、《B級ハンター》という師匠の肩書きが音を立てて崩れ始める。
次回
『55. B級。その言葉が、急に遠くなった』
次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!




