52. 接続を拒絶された瞬間、奥で何かが動き始めた
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【美月視点】
星継ぎ核の奥。何もないように見える。でも。さっきから、妙に気になる。何も見えない。何も聞こえない。それなのに、目を離すといけない気がする。
「師匠」
「何だ」
「本当に、あそこに何かあるんですか?」
「ああ」
「見えないけど」
「俺にも見えねぇ」
「え?」
師匠が、星継ぎ核の向こうを見る。
「でも。何度来ても……何かある感じだけはしてた」
その言葉に、少しだけ背中が寒くなった。私だけが変なものを感じているわけじゃない。でも、それは安心ではなく。余計に気味が悪かった。
【皐月視点】
最初に気づいたのは、かなり前だ。サクラの状態を調べるために、俺は何度も星継ぎの間へ来た。星継ぎ核。魂糸。地球との接続。大賢者と、できることは全部調べた。解除できないか。接続を弱められないか。サクラの魂だけを安全に離せないか。何度も試した。だが、その中でずっと引っかかっていた。星継ぎ核のさらに奥。見えない。触れない。それでも、何かがある。
「大賢者」
『はい』
「お前も分かってるよな」
『完全には認識できません』
「完全には?」
『何らかの反応は存在します』
『しかし』
『星継ぎ核の内部情報として取得できません』
「つまり」
「お前の管轄じゃない?」
『その可能性があります』
【美月視点】
「大賢者でも分からないんですか?」
『はい』
「師匠は?」
「無理だった」
「何回くらい?」
「数えてねぇ」
「そんなに?」
「ああ」
師匠が、星継ぎ核の奥へ近づく。
「触ろうとしても、何も起きない」
「魔力を流しても?」
「駄目」
「大賢者から干渉しても?」
「駄目」
「壊そうとした?」
「……」
「やったんだ」
「少しな」
「絶対少しじゃない」
「うるせぇ」
でも、少し分かった気がした。師匠は、本当に何度もここへ来ていた。触って。試して。たぶん、壊そうとして。それでも何も分からなかった。だから、今日。私を連れてきた。
「じゃあ」
私は聞いた。
「今日はどうするんです?」
「試す」
「何を?」
「お前」
「やっぱり!」
そうだと思った。というか、そんな気はしていた。私が深層適性者だから連れてきた。師匠では触れられなかった場所。大賢者でも分からない場所。そこに、私なら反応するかもしれない。つまり私は、鍵か。それとも実験台か。
「嫌ならやめるか?」
「やめません」
「即答かよ」
「ここまで来たんですよ!」
私は、星継ぎ核の奥を見る。さっきから、あそこだけ変な感じがする。何もないのに。何かある。
「近づけばいい?」
「まずはな」
「分かった」
一歩。二歩。近づく。何も起きない。
「……」
さらに一歩。その瞬間。胸の奥が、びくっと震えた。
「っ」
「美月?」
「師匠」
「何だ」
「これ……」
師匠が私のステータスを確認する。【深層適性者】その文字が、淡く光っているらしい。まるで、何かに呼ばれているみたいに。
「反応してるな」
「やっぱり?何に?」
「それを知りに来た」
さらに、星継ぎ核の奥から、低い音が響いた。ゴォン――。
「何!?」
「下がるな」
「でも!」
「俺も行く」
師匠が、私の隣に立つ。すると。もう一度、音。ゴォン――。今度は、さっきよりも少し近く感じた。
「師匠も?」
「ああ」
師匠が自分のステータスを見る。【深層適性者】同じように、淡く反応している。
「二人とも……」
「らしいな」
師匠の声が、少し低くなった。いつもの軽口ではない。本当に、何かが始まっている。
その瞬間。目の前の空間に、文字が浮かんだ。
《接続可能個体を確認》
「……接続?」
《個体数――二》
「二って」
「俺たちだろ」
師匠が答える。次の瞬間。空間そのものが、歪んだ。
「うわっ」
「動くな!」
師匠の声で、足が止まる。何もなかった場所に、細い光の線が一本現れた。それが、ゆっくり広がっていく。縦に裂けるように。でも、壊れているわけじゃない。最初からそこにあったものが、開いていくように。
「……扉?」
「たぶんな」
誰が開けたのか。何のために開いたのか。何も分からない。ただ、私たちは今、何かに認識された。
光が、左右へ開く。その向こうに、見たことのない空間が現れた。
「……何これ」
広い。ものすごく、広い。どこまで続いているのか、分からない。巨大な柱。宙に浮かぶ光。何本もの、太い光の流れ。それらが、もっと奥へ。さらに奥へ。続いている。ダンジョンの通路とは違う。遺跡にも似ている。でも、人が作った建物というより。星の内側を、無理やり形にしたような場所だった。
「ダンジョン?」
「違う」
師匠が、静かに言った。
「たぶん」
「星継ぎの」
「もっと根っこの部分だ」
【皐月視点】
初めて、開いた。何度来ても。何をしても。開かなかった場所。それが、美月と俺。二人の深層適性者に反応した。
「大賢者」
『……』
「おい」
『確認しています』
「知ってる場所か?」
『いいえ』
「……やっぱりか」
『私の認識領域外です』
「星継ぎ核より奥なのに?」
『はい』
嫌な感じだ。星継ぎ核の中にいる大賢者すら、知らない領域。星継ぎのために存在する空間なのか。それとも、星継ぎよりも前からあった何かなのか。少なくとも、サクラが星継ぎになってから生まれた場所ではない。そんな気がした。
【美月視点】
「入る?」
私は聞いた。
「怖いか?」
「ちょっと」
本当は、かなり怖い。でも、ここで帰ると言うのは違う気がした。サクラ様の手は温かかった。あの人はまだ、ここで眠っている。その奥に、何かがある。なら、見ないわけにはいかない。
「帰るか?」
「行きます」
「だろうな」
「師匠もでしょ」
「ああ」
師匠が私より半歩前に出る。それを見て、少しだけ安心した。一歩。中へ。その瞬間、足元に光が走った。
「……え?」
空間全体が、ゆっくり、目を覚ますみたいに明るくなっていく。
《接続可能個体――二》
「また」
《管理領域への接続を確認》
「管理領域?」
「管理領域?」
師匠が、私の前へ出る。さっきまでの軽口が消えていた。背中だけで分かる。師匠は警戒している。
《接続許可判定》
「……」
少し、間が空いた。その数秒が、やけに長く感じた。許可されるのか。拒まれるのか。そもそも、誰が判定しているのか。
《許可――》
文字が、一瞬、止まる。まるで、迷ったみたいに。そして。
《……否》
「え?」
次の瞬間。空間の奥で。何かが。ゆっくり。動き始めた。
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――次回予告――
星継ぎ核のさらに奥で、美月たちが見たもの。
そこはサクラを“救う”ための場所ではなかった。
生かし続け、眠らせ続け、《星継ぎ》という機能を保つための領域。
そして管理機構は、美月と皐月を――
“星継ぎへ干渉できる危険な存在”として認識し始める。
次回
『53. 守るでも救うでもない。サクラ様は“維持”されていた』
次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!




