↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救った少女が眠り続けているので、大悪魔の俺が今度こそ救うことにした  作者: 和伊 和威
第一章 眠り続ける星継ぎと、目覚め始めた地球の神
PR
5/62

05. おばあちゃんの手紙は、嫌いな祖父にしか読めない文字で書かれていた

いつも応援ありがとうございます!


当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


今回もぜひ、最後までお楽しみください!

【美月(みづき)視点】

 ハンター登録を終えてから、妙なことが増えた。講習を受けて、登録証を受け取って、これでようやく私もハンターの一人になった。そう思っていたのに。ギルドへ行くたび、なぜか知らない人に声をかけられる。

「あなた、皐月(さつき)さんのところのお孫さんでしょう?」

 ギルドの廊下で、年配の職員にそう言われた。私は足を止める。皐月さん。その名前を聞いただけで、胸の奥が少しざらついた。

「違います」

「え?」

「水無瀬美桜(みなせみお)の孫です」

 そう言うと、相手は少し困ったように笑った。

「まあ、そうなんだけどね」

 なんなんだろう。その反応が、余計に引っかかった。


 一度だけなら、まだ偶然で済ませられた。でも、別の日には、別のハンターにも言われた。

「春日(かすが)さんの孫か。頑張れよ」

「美桜おばあちゃんの孫です」

 また訂正した。相手は一瞬だけ目を丸くして、それから苦笑いした。まるで、私が何かを知らない子どもみたいに。なんなんだろう。どうしてみんな、あの人の名前を出すんだ。私が尊敬しているのは、おばあちゃんだ。水無瀬美桜。地球を救う戦いに関わって、瀕死になりながらサクラさんを守った人。強くて、優しくて、最後まで誰かのために戦った人。家で暇そうにしている、歳を取らない気味の悪い祖父じゃない。


 それに、変だ。ギルドの人たちは、あの人のことを知っているような顔をする。でも、誰もはっきりとは言わない。皐月さんはすごい人だとか。昔お世話になったとか。あなたは本当に知らないの、みたいな目で見られることもある。知らない。私は知らない。家にいるあの人は、いつも暇そうにしていて、何を考えているのか分からない人だ。ときどき何週間も家を空けて、帰ってきても何も説明しない。おばあちゃんが最後まで大切そうに見ていた理由も、私には分からない。分からないから、余計に腹が立つ。


 その日の夜。私は、おばあちゃんが残したハンター道具を眺めていた。古いバッグ。使い込まれたナイフ。傷だらけの魔力灯。小さい頃から見たことはあった。でも、自分がハンター登録を終えたあとに見ると、少し違って見える。ただの古い道具じゃない。おばあちゃんが本当にダンジョンへ持って行ったもの。魔物と戦い、誰かを守り、生きて帰ってくるために使っていたもの。

「これ、本当に使ってたんだ……」

 指先でバッグの傷をなぞる。その一つ一つに、おばあちゃんの時間が残っている気がした。


 バッグの奥を探っていると、指先に紙の感触が当たった。

「……手紙?」

 丁寧に畳まれた古い紙だった。開いてみる。そこには、細い文字が並んでいた。おばあちゃんの字だ。それは分かる。文字の形が違っても、筆圧や並び方に覚えがある。おばあちゃんが、昔よくメモを取っていた時の癖。でも。

「読めない……」

 文字そのものが、日本語ではなかった。英語でもない。見たことのない記号のようで、それでいて、ちゃんと文章になっているようにも見える。おばあちゃん。これ、何?


 私は紙を持って、母のところへ行った。

「お母さん、これ何て書いてあるの?」

 母は手紙を見るなり、少し懐かしそうな顔をした。

「ああ。それ、ヴァルメリア語ね」

「ヴァルメリア語?」

 初めて聞く言葉だった。

「うん」

「どこにある国?」

「分からないわ」

「分からない?」

 思わず聞き返した。言語名を知っているのに、どこの国か分からない。どういうこと?

「じゃあ、どうしてヴァルメリア語って分かるの?」

「昔からよく見てたから」

「読める?」

「私は無理」

「……無理なの?」

「うん。見慣れてはいるけど、読めないの」

 余計に意味が分からなかった。


「じゃあ誰なら読めるの?」

「お父さんなら読めると思うよ」

 母は何でもないことのように言った。

「……お父さん?」

 一瞬、自分の父の顔が浮かんだ。でも、母はすぐに首を横に振る。

「皐月お父さん。ヴァルメリア語、普通に読めるから」

「…………」

 また、あの人。ギルドでも。家でも。おばあちゃんの手紙まで。どうして、全部あの人に繋がるの。私は手紙を見る。読めない文字。おばあちゃんの字。そして、それを読めるらしい祖父。

「でも……なんでおばあちゃんがヴァルメリア語を書けるの?」

「さあ。そこまでは聞いたことないなあ」

 母は首を傾げた。本当に知らないらしい。それが余計に、不気味だった。


 私はもう一度、読めない文字を見る。おばあちゃんの字。でも、私には読めない。母にも読めない。けれど、おじいちゃんなら読める。また、あの人。聞きたくない。関わりたくない。できれば、あの人に頼りたくなんてない。それなのに。知りたいと思ってしまった。おばあちゃんが、何を書いたのか。どうして、おばあちゃんがそんな言葉を書けたのか。どうして、あの人なら読めるのか。おばあちゃん。これ、何を書いたの?

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださっている方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

第一章も楽しんでいただけていたら嬉しいです!


面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第三部を最後まで駆け抜ける凄まじいエネルギーになります!


(星は1つからでも、ポチッと気軽に押していただけると大喜びします!)


――次回予告――

美月が《深層適性者》だと知り、家族はハンターを続けることに反対する。


けれど、嫌われた祖父の言葉はもう届かない。

ならば皐月は――別人として、孫娘のそばに立つ。


次回

『06. 祖父の言葉は届かない。だから俺は黒瀬蓮として孫娘を守る』


次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。