47. なら俺が何とかする。師匠は迷わずそう言った
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【皐月視点】
地球には昔。管理者と呼ばれる神がいた可能性がある。そこまで辿り着いてから。一つの疑問が、ずっと頭に残っていた。
「じゃあ」
俺は眠るサクラを見る。
「なんでサクラだった?」
『深層適性者であったことは、関係している可能性が高いでしょう』
「でも、深層適性者なら他にもいる」
『はい』
「なのに星継ぎになったのはサクラだけだ」
何か条件がある。深層適性者なら誰でもいいわけじゃない。だが、その条件が何なのかは、大賢者にも分からない。俺にも分からない。それが、ずっと引っかかっていた。
俺は継真と美月にも話した。
「一回、整理するぞ」
「はい」
美月が珍しく真面目に返事をする。
「核継ぎで確実なのは藤堂」
「深淵王ですね」
「ああ」
「師匠も核継ぎだった可能性がある」
「確定じゃねぇけどな」
「星継ぎがサクラ様」
「ああ」
「神宿りが天宮星乃さん」
「ただし、神宿りだけは何も分からん」
「何も?」
「どういう条件で起きるのかも、なんで星乃だったのかもな」
「じゃあ?」
「いったん置いとく」
「雑!」
「分からねぇもん考え続けても仕方ねぇだろ」
神宿りについては、今の俺たちには追う材料がない。それでも。核継ぎと星継ぎ、神宿り。これらには明確な共通点がある。
「深層適性者」
美月が言った。
「ああ」
【美月視点】
「でも」
私は一つ気になった。
「深層適性者って、どうやって分かるんでしたっけ?」
「ステータスだ」
「最初から出るわけじゃないんですよね?」
「ああ」
深層適性者。これは、誰かが後からつけた呼び名じゃない。ステータスそのものに表示される。でも、最初から見えるわけじゃない。
「最初は何もない」
「そうだ」
「その次が……」
【■■■■■】
「これ」
「ああ」
「で、さらに進むと」
【深層適性者】
「になる」
私は少し嫌な気分になった。
「なんで最初から表示しないんですかね」
「知らん」
「でも」
私は考える。
「深層適性者っていう名前自体は、最初からステータス側にあるってことですよね?」
「そうなる」
「……なんか怖い」
「俺もそう思う」
深層適性者という存在を。人間が発見するより前から。ステータスは知っていた。
【皐月視点】
「それに」
俺は言った。
「たぶん、深層適性者になったわけじゃねぇ」
「え?」
美月が顔を上げる。
「元々持ってる」
最初は表示されない。次に。【■■■■■】そして……【深層適性者】。新しく生まれた性質なら、もっと別の出方をしてもいい。だがこれは違う。条件を満たすたびに、隠れていたものが表に出てくる。そんな感じに近い。
「解放されてる?」
「そんな感じかもしれねぇな」
継真も考え込む。
「最初から魂にある性質が、段階的に判明する……」
「その方が自然だろ」
問題は。
なぜそんな性質が、人間にあるのか。
「核継ぎの藤堂は迷宮核と繋がった」
「ああ」
「星継ぎのサクラ様は地球と繋がった」
美月が言う。
「普通の人間でもできるんですか?」
「無理だろうな」
「じゃあ」
「深層適性者だから耐えられた?」
「可能性は高い」
迷宮核。地球そのもの。どちらも、普通の人間の魂が直接接続して無事で済むような相手じゃない。それでも藤堂は、深淵王になった。サクラは、星継ぎになった。無事とは言えない。だが、接続そのものは成立した。
「つまり」
継真が言う。
「深層適性者は、通常なら接続できない存在と繋がることができる」
「ああ」
「しかも」
「その接続に魂が耐えられる」
俺は頷いた。これが、今のところ一番しっくりくる。
【美月視点】
「……器」
私は呟いた。
「何?」
「古代語にあったじゃないですか」
『器』
という言葉。
「ああ」
「もしかして」
口に出すと、急に怖くなる。でも、言わずにはいられなかった。
「深層適性者のことだったりして」
「まだ分からん」
「ですよね」
分かっている。ただの単語だ。文章として残っていたわけじゃない。でも、気になる。古代文明。管理者。星。器。そして、深層適性者。少しずつ。同じところへ繋がっている気がする。
「じゃあ」
私は自分のステータスを思い出す。
「私の深層適性が強いっていうのは?」
「正確に測れるわけじゃねぇ」
「じゃあ、なんで?」
「今までのお前見てりゃ分かる」
「え?」
師匠は指を折るようにして言った。
「本来いない魔物に遭遇する」
「……」
「妙にモンスターが寄ってくる」
「……」
「跳ばし鬼に狙われる」
「……」
「深い階層へ飛ばされる」
「もういいです!」
嫌なことばっかり!
「私、ダンジョンに嫌われてません?」
「逆だろ」
「え?」
「好かれすぎてる」
「もっと嫌!」
師匠が少し笑った。
「普通の深層適性者より、ダンジョン側からの反応が極端だ」
「だから適性も強い?」
「可能性は高い」
数字で分かるわけじゃない。機械で測れるわけでもない。実際に起きている現象から、そう考えているだけ。
「師匠」
「何だ」
「もし私が」
少し言いにくかった。何に、とは言えない。迷宮核なのか。地球なのか。それとも、まだ名前も分からない何かなのか。ただ、聞かずにはいられなかった。
「何かに選ばれたらどうする?」
「断れ」
「だから断れるんですか?」
「知らん」
「駄目じゃん!」
「なら俺が何とかする」
「……」
即答だった。迷うこともなく。考えるふりすらなく。師匠は、そう言った。
「師匠って」
「何だ」
「こういう時だけ頼もしいですよね」
「こういう時だけは余計だ」
「でも」
私は少し笑った。
「本当に何とかしてくれそう」
「当たり前だ」
師匠の顔は笑っていなかった。
「サクラと同じことを……もう誰にもさせるつもりはねぇ」
「……」
その言葉。やっぱり、師匠はサクラ様のことを。ものすごく大切に思っている。そして。私にも、同じ目に遭ってほしくないと思ってくれている。そう考えると。少しだけ、胸の奥が温かくなった。深層適性者。その本当の意味は、まだ完全には分からない。でも、少なくとも。ただダンジョンへ潜るための能力じゃない。もっと古く。もっと大きな何かに。人間の魂を繋ぐための性質。そんな可能性が、少しずつ見え始めていた。
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――次回予告――
一度死に、別世界で《ミレイア》として生まれ直した美桜。
記憶を失っても。
名前も、姿も、世界さえ変わっても――。
皐月のもとへ帰りたいという想いだけは、消えていなかった。
そして美月は初めて知る。
自分が嫌っていた祖父が、美桜にとって“世界を越えてでも帰りたかった人”だったことを。
次回
『48. 記憶を失っても、美桜は皐月のもとへ帰ろうとしていた』
次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!




