43. 器、選ぶ、星。古代語の断片は、深層適性者に繋がり始めた
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【美月視点】
古代語を読める翻訳スキルの人。その人が今まで訳してきた記録を、私たちは改めて調べることになった。
「新しい石板を探すんじゃないんですか?」
「そんな都合よく見つかるか」
師匠に即答された。
「ですよね」
そんなに簡単に見つかるなら、今ごろもっと研究が進んでいる。古代語が刻まれた遺物そのものが、ほとんど残っていない。世界各地でこれまでに発見されたものも、ごくわずか。しかも、まともな形で残っているものは一つもない。石片。壊れた石板。海底から回収された遺物の一部。昔から研究対象にはなっていたけれど、文章として成立するほど文字が残っていなかった。
「翻訳できても、意味が分からなかったんですね」
「ああ」
天羽総帥が頷く。でも、今は違う。私たちは、星継ぎという存在を知っている。
過去の翻訳記録が画面に並べられた。
『星』『大地』『生命』『循環』『守る』『管理者』
前にも見た言葉。でも、前とは少し印象が違った。星継ぎ。地球の力の循環。生命を守る仕組み。管理者。そういうものを知ったあとで見ると、ただの単語には見えない。さらに、別の石片には。
『声』『聞く』
そして、別のものには。
『器』『選ぶ』『星』
が残っていた。
「……やっぱり気になりますね」
「何が?」
「これ」
私は指をさす。
『器』
『選ぶ』
『星』
「前は文章になってないから分からなかったけど」
私は画面を見つめたまま続ける。
「今は深層適性者のことを調べてるじゃないですか」
師匠が黙る。
「深層適性者から、核継ぎとか星継ぎが生まれる。それで古代語にも『器』と『選ぶ』がある。偶然かなって」
「まだ分からん」
「はい」
今回は私も決めつけない。
『星が器を選ぶ』
そんな文章だったら、ものすごく分かりやすい。でも、そんな都合のいい話とは限らない。文字と文字の間が、どれくらい空いていたのかさえ分からないものもある。
『星が器を選ぶ』なんて文章だった保証はない。
ただ。気にはなる。
【皐月視点】
古代語の翻訳記録を見直す。新しく何かが見つかったわけじゃない。昔からあった。ただ。当時は意味を持たなかった言葉が。今になって引っかかり始めている。星。生命。循環。管理者。器。それらは、古代文明を研究していた人間にとっては、ただの断片だったのだろう。だが、俺たちは違う。星継ぎを知っている。サクラが今、地球と繋がり、生命と魔力の循環を支えていることも知っている。だからこそ、見過ごせない。
「継真」
「何?」
「翻訳した本人は、この言葉について何か言ってたのか?」
「特には」
「意味が分かるだけ?」
「そうだね。本人も古代文明の知識があるわけじゃない」
当然か。翻訳スキルは、そこに書かれた言葉の意味を教えるだけ。その言葉が何を指しているのか。どんな時代に使われたのか。誰が、何のために残したのか。そこまでは教えてくれない。
「となると」
俺は記録を見る。
「これ以上は、遺物そのものから考えるしかねぇか」
「そうなるね」
古代の魔力循環装置。そこに残る古代語。管理者。星。循環。そして、器。
「……管理者」
また、その言葉を見る。こいつだけは、複数の遺物に残っている。一つの石片に偶然残っていた単語ではない。何かしら重要な意味を持つ言葉だった可能性が高い。
「昔の地球には、本当に何かいたんじゃねぇか?」
「地球を管理する存在?」
「ああ」
まだ証拠とは言えない。管理者という言葉だけで、神だの何だのと決めるには早すぎる。だが。星継ぎのサクラが今やっていることと。古代文明に残された言葉が。少しずつ似てきている。
【美月視点】
「じゃあ、これでもう終わり?」
私が聞くと、師匠がこっちを見た。
「何が」
「古代語です。残ってる遺物って、これくらいなんですよね?」
「ああ」
「新しいのが見つかるまで待つしかない?」
「古代語についてはな」
「そっかぁ」
ちょっと残念だった。もっと読めれば。星より、の続きも。器を選ぶ、の本当の意味も。管理者が何だったのかも。答えが分かりそうなのに。
「でも」
天羽総帥が言った。
「文字だけが古代文明の痕跡じゃないよ」
「え?」
「魔力を使った遺物そのものが残ってる」
古代語。魔力循環装置。沈んだ文明。そして。地球を管理していたかもしれない何か。
「次は」
師匠が言った。
「文字じゃなく、そいつらが何をしてたのかを調べる」
「古代文明そのもの?」
「ああ」
私は少しワクワクした。答えの書かれた石板が、都合よく見つかるわけじゃない。でも、残されているものを。一つずつ。繋いでいく。
「なんか本当に謎解きっぽくなってきましたね」
「最初からそのつもりだ」
「師匠、こういうの好きそうじゃないのに」
「余計なお世話だ」
でも。少しずつ。本当に少しずつ。何千年も前の地球と。今眠っているサクラ様が。繋がり始めている気がした。
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――次回予告――
古代遺跡に残されていたのは、魔力を“使う”ための装置ではなかった。
集め、流し、戻す。
その仕組みは、都市そのものを巨大な魔力循環装置にしていた可能性を示していた。
そして浮かび上がる、もう一つの疑問。
その循環を本当に管理していたのは――誰だったのか。
次回
『44. 古代都市そのものが、巨大な魔力循環装置だったのかもしれない』
次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!




