40. 沈んだ文明の伝承に、ダンジョンより古い魔力が残っていた
いつも応援ありがとうございます!
当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。
今回もぜひ、最後までお楽しみください!
【美月視点】
数日後。また師匠に呼び出された。
「今度は何ですか?」
「調べ物」
「また?」
「嫌なら帰れ」
「帰るとは言ってません!」
最近。ダンジョンに潜るより、資料を見ている時間の方が長い気がする。最初は、正直ちょっと退屈だと思っていた。でも。深層適性。星継ぎ。古代の魔力。分からなかった言葉が、少しずつ繋がっていく感じは嫌いじゃない。まあ。これはこれで、ちょっと面白い。
ギルドへ行くと、天羽総帥もいた。
「美月ちゃんも来たね」
「こんにちは」
いまだに総帥と普通に話すのは、少し緊張する。でも最近は、何度か顔を合わせているせいか、前ほど固まらなくなった。
「ちょうど面白いものが見つかったところだよ」
「面白いもの?」
総帥が画面を見せてくる。そこには、世界地図が表示されていた。いくつかの場所に印がついている。
「前に話した、ダンジョン出現以前の遺物から魔力反応が見つかった件だけど」
「はい」
「似た事例をもう少し調べてもらった」
「世界中にあるんですか?」
「数は少ないけどね」
海底から引き上げられた遺物。古い遺跡から見つかった石材。用途不明の装飾品。どれも、ダンジョンが地球に現れるより、はるか昔のものだった。
「でも変なんだ」
「何がです?」
「魔力反応が見つかる場所に、少し偏りがある」
総帥が地図を拡大する。いくつかの印が、画面の中で大きくなった。
「海の近く?」
「それだけじゃない」
師匠が画面を見ながら言った。
「沈んだ遺跡か」
「そう」
総帥が頷く。海底。沿岸部。あるいは、昔、大規模な海進や地殻変動があったと考えられている地域。そういった場所から見つかった遺物に、魔力反応が多いらしい。
「……沈んだ文明」
私は、思わず呟いた。ただの古い遺物だと思っていたものが、急に物語の中の遺跡みたいに見えてくる。
「何か思いついた?」
総帥が聞く。
「アトランティスとか?」
師匠がこっちを見る。
「お前、そういうの好きなのか?」
「有名じゃないですか!」
「まあな」
「あとムー大陸とか!」
「急に胡散臭くなったな」
「アトランティスはよくてムーは駄目なんですか!?」
総帥が笑っている。なんか恥ずかしい。私だけ変なことを言っているみたいじゃないか。でも、総帥は笑いながらも画面を操作した。
「実はね」
「え?」
「研究者からも同じ名前が出てる」
「……本当に?」
冗談で言ったつもりだった。でも、その言葉は思っていたより近い場所にあったらしい。
もちろん。アトランティスやムーが実在したと証明されたわけじゃない。そもそも、伝承と実際の歴史が一致している保証もない。ただ。妙な共通点があった。
「世界各地に、似たような伝承が残っている」
総帥が説明する。
「高度な文明があった」
「大きな災害が起きた」
「そして海へ沈んだ」
「場所も時代もバラバラなのに?」
「そう」
さらに。近年になって魔力反応が確認された古代遺物の一部が、そんな伝承の残る地域と重なっていた。
「偶然じゃないんですか?」
「もちろん、その可能性はある」
「じゃあまだ何も分からない?」
「ほとんどね」
「またそれ!」
思わず声が出る。最近、ずっとそればかりだ。分からない。可能性がある。断定できない。でも、師匠は当たり前みたいに言った。
「謎を調べるって、そういうもんだ。一個見つけたら全部答えが出るわけじゃねぇ」
「師匠が真面目なこと言ってる」
「殴るぞ」
「すぐそれ!」
【皐月視点】
美月は冗談みたいに、アトランティスだのムーだの言っていた。だが。俺は笑えなかった。ダンジョンが来るより前から。地球には魔力があった可能性がある。そして。その魔力を利用していた文明まで存在したかもしれない。そんな話は、本来なら眉唾で終わる。だが今は違う。地球深部には正体不明の神性反応がある。サクラを星継ぎにした仕組みが、ダンジョン以前から地球にあったかもしれない。そのうえ、魔力反応を持つ古代遺物が、沈んだ文明の伝承と重なり始めている。笑える材料じゃなかった。
「継真」
「何?」
「この遺物の魔力」
「うん」
「今の地球の魔力と同じなのか?」
「そこなんだけどね」
継真が別の資料を出す。
「完全には一致しないらしい」
「どう違う?」
「現在のダンジョン周辺で観測される魔力より、ずっと地球の自然魔力に近い」
「……地球の?」
その言葉に、引っかかった。地球の自然魔力。ダンジョンから漏れ出す魔力ではない。ヴァルメリアから移ってきた迷宮核由来の力でもない。元々。地球に存在していた力。
「だったら」
俺は呟いた。
「やっぱりこいつらは、ダンジョンとは関係ないな」
「可能性は高くなったね」
地球深部の神性反応。深層適性者。核継ぎ。神宿り。星継ぎ。古代の魔力。そして。沈んだ文明。少しずつ、点が増えている。まだ線にはならない。どれが原因で、どれが結果なのかも分からない。ただの偶然だと言うには、重なりすぎている。もし、ダンジョンが来るより前の地球に、今とは全然違う魔力の在り方があったのだとしたら。そして、その時代の人間たちが、魔力や深層適性を何らかの形で扱っていたのだとしたら。
「古代の地球には」
俺は小さく呟いた。
「今とは全然違う何かがあったのかもしれねぇな」
【美月視点】
帰り道。
「師匠」
「何だ」
「本当にアトランティス見つかったらどうします?」
「知らん」
「行ってみたいですよね?」
「危険じゃなきゃな」
「師匠が危険とか気にするんだ」
私がそう言うと、師匠は当たり前みたいに答えた。
「お前と一緒ならな」
「……え?」
一瞬、変な声が出た。でも師匠はすぐに続ける。
「放っとくと勝手に触るだろ」
「子供扱いしないでください!」
「止められたのに勝手にダンジョン行く奴が言うな」
「うっ……」
それを言われると弱い。でも。前なら腹が立っていたかもしれない。今は、少しだけ違った。
「じゃあ」
「何だ」
「もし見つかったら、一緒に行きましょうね」
「なんで決定なんだよ」
「師匠だから」
「意味分からん」
文句を言いながらも。師匠は断らなかった。そのことが、少しだけ嬉しい。私は、ちょっとだけ笑った。古代の地球。沈んだ文明。昔から存在した魔力。そこに、サクラ様を星継ぎから解放するための答えがあるのかもしれない。まだ何も分かっていない。でも。前より少しだけ、進む方向が見えた。そんな気がしてきた。
本編をお読みいただきありがとうございました!
一気読みしてくださっている方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!
第一章も楽しんでいただけていたら嬉しいです!
面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第三部を最後まで駆け抜ける凄まじいエネルギーになります!
(星は1つからでも、ポチッと気軽に押していただけると大喜びします!)
――次回予告――
古代地球の遺物に残っていたのは、魔力を集め、流し、循環させる仕組み。
その役割は、今サクラが担っている《星継ぎ》とあまりにも似ていた。
もし星継ぎが失われた古代装置の“代用品”なのだとしたら――。
地球をかつて管理していた“何か”の存在が、現実味を帯び始める。
次回
『41. 星継ぎは、古代地球の循環装置の代用品なのかもしれない』
次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!




