39. ダンジョンより古い魔力が、地球の遺物から見つかった
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【皐月視点】
深層適性者。核継ぎ。神宿り。星継ぎ。調べれば調べるほど、一つの疑問が大きくなっていた。
「そもそも」
俺は継真を見る。
「深層適性って、いつからあるんだ?」
「いつから?」
「ああ」
「ダンジョンが地球に来てから見つかったんだろ?」
「そうだね」
継真は頷く。だが、それは答えになっていない。見つかったのと、生まれたのは別だ。ステータスを見る方法がなかった時代に、深層適性なんて言葉は存在しなかった。だからといって。その適性そのものが存在しなかったとは限らない。
「ダンジョンが来る前から、深層適性を持つ人間がいた可能性は?」
継真が少し考える。
「証明できないね」
「だよな」
「でも、調べる方法が一つあるかもしれない」
「何だ?」
「人間じゃなくて、物の方だよ」
「物?」
継真が見せてきたのは、昔の研究記録だった。ダンジョンが地球に現れて。魔力というものを、人間が観測できるようになったあと。世界中で、いろいろな物が調べ直されたらしい。鉱石。化石。遺跡から発掘された物。古代の建造物。それまでただの歴史資料として保管されていたものまで、魔力測定器にかけられた。
「最初は何でも測ったんだよ」
「まあ、やるだろうな」
未知の力が見つかったなら、世界中の研究者が似たようなことを考える。そして、その中で。妙なものが見つかった。
継真が一つの記録を出した。
「ダンジョン発生より、はるか昔の遺物から魔力反応が検出されてる」
「……何?」
俺は記録を見る。表示されている年代は、ダンジョンが地球に現れるよりずっと前。何百年どころじゃない。何千年も前のものだ。
「ダンジョンから付着したとかじゃねぇのか?」
「当然それも疑われた」
「結果は?」
「説明できなかった」
年代測定では、間違いなく古代のもの。保管状態も、発掘場所も、ダンジョン由来の汚染とは説明がつかない。しかも。一つじゃない。
「世界中で?」
「ああ。数は少ないけどね」
俺は眉をひそめた。
「おかしくねぇか?」
「おかしいよ」
ダンジョンが地球へやって来るより、ずっと前。なのに。地球にはすでに魔力が存在していた?そんなはずはない。そう言い切れれば楽だった。だが、記録は残っている。測定値もある。調査した研究者たちも、ダンジョン由来の付着では説明できないと結論づけている。なら。俺たちは、最初から前提を間違えていたのかもしれない。魔力は、ダンジョンが地球に持ち込んだもの。そう思っていた。だがもし。地球にも、もともと魔力があったのだとしたら。
【美月視点】
「古代の魔力?」
師匠から聞かされて、私は首を傾げた。
「そんなのあるんですか?」
「あるらしい」
「らしいって」
「俺も今知った」
「師匠でも知らないことあるんですね」
「当たり前だ」
「何でも知ってそうなのに」
「俺を何だと思ってんだ」
「怪しい五十代?」
「帰れ」
「ひどい!」
いつものやり取り。でも、見せてもらった記録は、確かに変だった。
「これ、何千年も前?」
「ああ」
「ダンジョンが来るより、全然前じゃないですか」
「そうだな」
「じゃあ」
私は考える。
「地球にも元々、魔力があった?」
「可能性はある」
「でも今まで分からなかった?」
「観測する方法がなかったからな」
なるほど。電波を知らない時代に、電波が存在しなかったわけじゃない。気づけなかっただけ。それと同じなのかもしれない。
「じゃあ深層適性も?」
師匠が私を見る。
「何?」
「魔力と同じで」
「ダンジョンが来たから生まれたんじゃなくて」
「昔からいたけど、誰も気づかなかっただけだったりして」
師匠が黙った。
「……あり得るよな」
「だとしたら」
師匠の表情が変わった。
「話がもっと面倒になる」
「なんでです?」
「深層適性も、核継ぎも、星継ぎも」
師匠は一つずつ言った。
「ダンジョンとは関係なく、元々地球に存在した仕組みかもしれねぇからだ」
「……」
私はもう一度、古い記録を見る。何千年も前。ダンジョンなんてなかった時代。モンスターも、ステータスも、ハンターもなかった時代。それなのに。魔力はあった。そう考えると、急にその古い遺物が不気味に見えた。
「じゃあ」
ふと思う。
「その頃の人たちは、魔力を使ってたんですか?」
「そこまでは分からねぇ」
「でも、使ってたとしたら?」
師匠がこちらを見る。
「魔法を使う文明とか」
「お前、急にファンタジーになったな」
「今さらですよ!」
ダンジョンがあって。魔法があって。ステータスがあって。星継ぎとか神宿りとかいうものまである。しかも、私の師匠は色々怪しい。もう十分ファンタジーだ。
「古代魔法文明くらいあってもいいじゃないですか」
「……そうだな」
【皐月視点】
美月は冗談半分で言った。古代魔法文明。普通なら笑うところだ。何を馬鹿なことを言っているのかと。だが。今は笑えなかった。地球深部には、正体不明の神性反応がある。深層適性者から、核継ぎ、神宿り、星継ぎが生まれる。そして。ダンジョンが来る何千年も前の地球に、魔力の痕跡が残っている。それぞれは小さな点だ。だが、点が増えれば、線が見えてくる。
「……継真」
「何?」
「もっと古い遺物の記録、調べられるか?」
「やってみるよ」
「頼む」
もし。地球に昔から魔力があったなら。今、俺たちが新しいものだと思っている仕組みも。本当は。ずっと昔から存在していたのかもしれない。深層適性。核継ぎ。星継ぎ。そして、地球深部の神性反応。それらが、ダンジョンによって生まれたものではなく。もともと地球にあった仕組みなのだとしたら。そして。それを使っていた人間たちが。かつて地球にいたのだとしたら。星継ぎの答えも。過去にあるのかもしれなかった。
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――次回予告――
ダンジョン出現以前の遺物に残っていた、地球由来の古い魔力。
その痕跡は、やがて“海へ沈んだ文明”の伝承と重なり始める。
アトランティス。ムー。そして、失われた古代の地球。
星継ぎの答えは――現代ではなく、沈んだ過去に眠っているのかもしれない。
次回
『40. 沈んだ文明の伝承に、ダンジョンより古い魔力が残っていた』
次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!




