37. 核継ぎ、神宿り、星継ぎ。その違いは接続先だった
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【美月視点】
深層適性者。核継ぎ。神宿り。星継ぎ。昨日から、その言葉がずっと頭に残っていた。自分には深層適性がある。しかも、かなり高いらしい。そう言われても、正直まだ実感はない。でも。その先に、核継ぎや神宿りや星継ぎがあると言われたら、さすがに気になる。
「師匠」
「何だ」
「その三つって、実際にどれくらいいるんですか?」
「ほとんどいねぇよ」
「え?」
思っていたより、ずっと少ないらしい。
「核継ぎで確実なのは、深淵王になった藤堂」
「……あの深淵王?」
「ああ」
歴史の授業でも習った名前だ。世界を壊しかけた存在。その始まりが、核継ぎ。そう考えると、急にその言葉が重くなる。
「それから、俺も核継ぎだった可能性がある」
「師匠も?」
「確定じゃねぇけどな」
「また師匠!」
「うるせぇ」
何なの、この人。何でも関係してるじゃない。
「神宿りは?」
「天宮星乃」
「あ……知ってます」
女神ヴァルメリアをその身に宿した人物。そして。
「星継ぎが、サクラ様」
「ああ」
私は指を折って数えた。
「……少な」
「だから、分からねぇことだらけなんだよ」
その日。私は師匠と支部長と一緒に、ギルドの奥にある会議室にいた。机の上には、いくつもの資料が並んでいる。普通のハンターが見るような資料じゃない。深淵王事件の記録。星継ぎに関する断片的な報告。神宿りと呼ばれた天宮星乃さんの資料。どれも重要そうなのに、残されている記録は多くなかった。
「じゃあ、整理しますね」
私は机の上の資料を見る。
「核継ぎが藤堂さん」
「深淵王をさん付けすんな」
「じゃあ藤堂」
「急に雑だな」
「師匠も核継ぎかもしれない」
「ああ」
「神宿りが天宮星乃さん」
「そうだ」
「星継ぎがサクラ様」
「それで全部だ」
「……少なすぎません?」
支部長が苦笑する。
「だから統計なんて取れない」
三人。師匠まで入れても四人。しかも師匠は確定していない。これで何かを調べろと言われても、普通は無理だと思う。でも。私は資料を見比べた。
「共通してることはありますよね」
「何だ?」
「全員、深層適性者」
「そうだ」
「そこから何かに繋がってる」
師匠の目が少し細くなった。
「続けろ」
「藤堂は迷宮核」
「サクラ様は地球」
「星乃さんは……神様?」
「ああ」
言いながら、自分でも頭の中が少し整理されていく。
「だったら」
私は考える。
「深層適性者って、何かと繋がれる人なんじゃないですか?」
部屋が静かになった。あれ。変なことを言っただろうか。
「迷宮核と繋がれば核継ぎ」
「神性と繋がれば神宿り」
「地球と繋がれば星継ぎ」
「つまり」
私は、机の上の資料を見ながら続ける。
「深層適性そのものが、何かと接続するための力とか」
支部長が腕を組む。
「……筋は通る」
師匠も黙って考えていた。いつものように茶化すでもなく。否定するでもなく。ただ、真剣に。
【皐月視点】
美月の言っていることは、単純だ。だが。だからこそ、妙にしっくりきた。
「接続するための適性……か」
核継ぎ。神宿り。星継ぎ。これまでは全部、別の能力だと思っていた。迷宮核に選ばれた者。神を宿す器。地球と魂を繋ぐ者。それぞれ別の現象として考えていた。でも。深層適性者という器があって。何と繋がったかによって、その後の呼び方が変わる。そう考えれば説明はつく。
「問題は」
俺は机の上の記録を見る。
「条件がバラバラすぎる」
「そうですね」
支部長が頷く。
「藤堂は迷宮核と繋がった」
「ああ」
「俺が核継ぎだったとしても、迷宮核との強い接触って共通点がある」
「そうですね」
「サクラは星継ぎになる前から、地球との繋がりが異常に強かった……のか」
そして星乃。神性。
「なんで星乃だった?」
俺が言うと、支部長は首を横に振った。
「分かりません」
「神宿りになる条件も?」
「分かっていません」
「本人が何かしたわけでもねぇよな」
「はい」
星乃の神宿りだけ。きっかけが見えない。まるで。誰かに選ばれたみたいに。
「深層適性者だから何かになれるんじゃなくて」
俺は呟いた。
「深層適性者だから、何かに繋がれる」
「その結果が」
支部長が続ける。
「核継ぎ、神宿り、星継ぎ……」
「ああ」
そう考えれば、いくつかの線が繋がる。藤堂。俺。サクラ。星乃。そして、美月。全員、何かと繋がる入口を持っている。なら。次に調べるべきなのは。
「深層適性者が、何と繋がるかを決めるもの」
「それと」
「そもそも、なんでそんな人間が存在するのか」
【美月視点】
「師匠」
「何だ」
「私の適性って、かなり高いんですよね?」
「ああ」
「ってことは」
嫌な予感がする。
「私も何かに繋がりやすい?」
「可能性はある」
「嫌なんですけど」
「俺だって嫌だ」
「なんで師匠が嫌がるんですか?」
「……」
「師匠?」
「お前まで、サクラみたいになったら面倒だからだ」
「……」
一瞬、何も言えなかった。面倒。いつもの師匠らしい言い方。でも。たぶん、それは本当の意味ではない。
「それって」
私は師匠を見る。
「心配してくれてる?」
「調子に乗るな」
「やっぱり!」
「うるせぇ」
師匠は先に歩いていく。私は、その背中を少しだけ見つめた。前なら。口の悪い人だな。それだけだった。でも今は。少し分かる。
この人。ちゃんと。私のことを心配してくれてるんだ。そのことが、少しだけ嬉しかった。師匠は相変わらず、口が悪い。すぐ誤魔化す。大事なことほど、ちゃんと言わない。でも。それでも。私は少しずつ、この人の言葉の奥が分かるようになってきた気がした。
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――次回予告――
歳を取らない祖父と、年齢の読めない師匠。
美月の中で、少しずつ違和感が繋がり始める。
それでも彼女はまだ知らない。
嫌いな祖父も、信じ始めた師匠も――同じ一人の男だということを。
次回
『38. 祖父として嫌われ、師匠として信じられる。皐月は笑うしかなかった』
次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!




