35. 星継ぎって何なんだ。サクラを救うための調査は、そこから始まった
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【皐月視点】
女神教の騒ぎが落ち着いて、しばらく経った。過激派は拘束され、穏健派は方針を変えた。サクラを女神として眠らせ続けるのではなく、一人の人間として救う。そう言う奴らも出てきた。美月まで、手伝うと言い出した。だが。それでサクラを助ける方法が見つかったわけじゃない。サクラを助ける。そう決めたはいい。問題は。
「……結局、星継ぎって何なんだ?」
『今さらですね』
「うるせぇ」
俺は眠るサクラの隣に座っていた。
地球がサクラへ依存する力は、少しずつ弱くなっている。地球深部では、正体不明の神性反応が強くなっている。そこまでは分かった。でも。
「俺たちは星継ぎのことを、ほとんど知らねぇ」
『その通りです』
「お前も?」
『私は現在の状態を観測できます。しかし、星継ぎという仕組みの起源までは知りません』
「誰が作ったのかも?」
『分かりません』
「なんでサクラが星継ぎになれたのかも?」
『深層適性を持っていたから、ということ以上は』
俺はサクラを見る。透明な結晶の中で、あいつは何も知らない顔で眠っている。いや。本当に何も知らないのは、俺たちの方かもしれない。
「じゃあ、そこから調べるか」
『星継ぎそのものを?』
「ああ」
サクラを助ける。そう決めた。だが、気合いだけでどうにかなる話じゃない。星継ぎから解放するなら、まず星継ぎを知らなきゃ始まらない。サクラが何になったのか。どうしてなれたのか。どうすれば外せるのか。その全部が分からないまま、助けるなんて言えない。
「星継ぎは何なのか」
「なんで深層適性者が選ばれるのか」
「地球の奥にある神性反応は何なのか」
全部。最初から調べる。
【美月視点】
「師匠」
「何だ」
「今日はダンジョンじゃないんですか?」
「ああ」
連れてこられたのはギルドだった。しかも、いつもの訓練室じゃない。
「ここ何ですか?」
「検査室」
「私、どこか悪いんですか?」
「頭」
「帰りますよ!」
「冗談だ」
「師匠が冗談言うと分かりにくいんですよ!」
部屋には、見たことのない機械が並んでいた。魔力計測器みたいなもの。ステータスを読み取る端末。透明な板がついた大きな装置。そして、そこに支部長までいる。ただの健康診断ではなさそうだった。
「朝倉美月さん」
「はい」
支部長が、いつもより少し真面目な顔で言った。
「今日は君の深層適性を詳しく調べたい」
「え?」
思わず声が出た。前にも、私は深層適性者だと言われた。モンスターや罠、それに迷宮核みたいなものに、妙に好かれる。悪い意味で。そう師匠にも言われた。
「私、深層適性者なんですよね?」
「ああ。ただ――」
支部長が師匠を見る。
「どの程度なのかを、きちんと調べていなかった」
「程度?」
「深層適性にも個人差がある」
知らなかった。
「師匠もあるんですか?」
「……まあな」
「えっ!?」
いくつかの検査を受けた。手を置く。魔力を流す。表示された文字を読む。装置の中に立って、身体の周りを光でなぞられる。正直、何を調べられているのかはよく分からなかった。そして、最後の検査機に手を置く。淡い光が灯った。次の瞬間。表示された数値を見て、支部長の表情が変わった。
「……もう一度」
「え?」
別の機械でも測る。結果は、ほとんど同じだった。
「壊れてるんですか?」
「機械は正常だ」
「じゃあ何なんです?」
支部長はしばらく画面を見ていた。
「君の深層適性が、想定していたよりかなり高い」
「かなり?」
「ああ」
「どれくらい?」
「現在の検査基準では、上位に入る」
「へぇ……」
正直。すごいと言われても、あまり実感がない。テストで上位と言われたなら嬉しいかもしれない。でも深層適性で上位と言われても、喜んでいいのか分からない。
「師匠より?」
「知らん」
「師匠も測ってくださいよ」
「嫌だ」
「なんで!」
支部長が苦笑する。でも、師匠だけは笑っていなかった。
「美月」
「何ですか?」
「前にも言ったが、深層適性はただの才能じゃねぇ」
「モンスターとか罠に好かれるんですよね?」
「ああ」
師匠の声は低かった。私は、跳ばし鬼に飛ばされた時のことを思い出す。浅い階層のはずだった。なのに、気づけば知らない深い場所にいた。あれも、深層適性のせいだったのかもしれない。
師匠は少し考える。それから、私を見る。
「サクラも、深層適性者だった」
「サクラ様が?」
「そうだ」
「じゃあ私と同じ?」
「……それは分からねぇ」
「分からない?」
「当時は、こんな検査方法なんかなかったからな」
なるほど。昔は今ほど、深層適性の研究が進んでいなかったらしい。でも。
「星継ぎになったサクラも深層適性者だった」
師匠が言う。
「そして今」
支部長が続けた。
「君の適性も、かなり高い」
私は二人の顔を見る。
「それって……何か関係あるんですか?」
誰もすぐには答えなかった。その沈黙が、答えみたいだった。関係ある。たぶん。でも、まだ誰にも断言できない。師匠が小さく呟く。
「それを、これから調べるんだよ」
深層適性。星継ぎ。サクラ様。そして、私。今まで別々だと思っていたものが。少しずつ。繋がり始めている気がした。それが良いことなのか、悪いことなのか。まだ分からない。でも。もう知らないままではいられない気がした。
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――次回予告――
《深層適性》は、ただダンジョンに好かれるだけの力ではなかった。
核継ぎ。神宿り。そして星継ぎ。
そのすべてへ繋がる、“何かに選ばれるための入口”。
そして皐月は、美月がサクラと同じ道へ進む前に、その仕組みを突き止めようとする。
次回
『36. 深層適性者は、何かに選ばれるための入口だった』
次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!




