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26. サクラ様を起こすのは怖い。でも、探すことまで駄目なの?

いつも応援ありがとうございます!


当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


今回もぜひ、最後までお楽しみください!

【美月(みづき)視点】

「師匠!」

「……来たか」

「何ですかこれ?」

「見りゃ分かるだろ」

 見れば分かる。分かるけど、分かりたくない。ギルドの入口前には、女神教の人たちが集まっていた。白い服。胸元の桜の紋章。掲げられた横断幕。

『女神の眠りを守れ』

『星継(ほしつ)ぎへの干渉を許すな』

 そんな文字が、いくつも並んでいる。

「星継ぎ……」

 その言葉は知っている。サクラ様が、世界を救うためになったもの。教科書にも載っていた。ニュースでも見た。でも。

「干渉って……」

 何のこと?


「美月さんでしたかな」

 声をかけてきたのは、以前、教団本部で会った年配の男だった。たしか、橘(たちばな)という人。穏やかな顔をしているのに、どこか苦手な人だった。

「あなたも」

 橘さんは、私と師匠を交互に見た。

「ギルド側なのですか?」

「え?」

「女神サクラ様を目覚めさせようとしている者たちの側なのか、と聞いています」

「ちょっと待ってください」

 思わず声が出た。ギルド側。教団側。そんなふうに分けられても困る。私はただ、ギルドへ来ただけだ。それに。

「目覚めさせるって、本当にそんな話なんですか?」


 男は、師匠を見る。

「この者たちは、その方法を探そうとしています」

「師匠」

 私は反射的に師匠を見た。

「本当なんですか?」

「まあな」

「えっ」

 あまりにも普通に認めたので、逆に驚いた。冗談だと思っていた。いや、冗談ではないにしても、考え方の話だと思っていた。前に、師匠は言っていた。

『世界を壊さずに起こす方法があるなら、探すべきだ』

 本当に。探していたんだ。サクラ様を目覚めさせる方法を。世界を壊さずに、起こす方法を。


「ですが、それは危険です」

 教団の男が続ける。

「サクラ様は、今も星継ぎとして世界を支えておられる」

 今も。その言葉に、胸が少し重くなった。

「もし、目覚めさせたことでその力が失われれば、どうなると思います?」

「……」

「再び、世界が崩壊する可能性もある」

 私は何も言えなかった。星継ぎになった。それは知っていた。サクラ様が世界を救うために眠っている。それも知っていた。でも。今も。サクラ様が世界を支え続けている?もし起こしたら。世界が壊れる?そこまでは、知らなかった。怖い。正直、そう思った。教団の人たちが反対する理由も、少し分かってしまった。


「だから、我々は反対しているのです」

 周囲の教団員たちも頷く。

「何十億もの命と、一人の少女」

 橘さんは静かに言った。

「比べるまでもありません」

 その言葉に。師匠の表情が変わった。

「……今、何て言った?」

 声は低かった。怒鳴ってはいない。でも、ぞくっとした。

「何十億もの命を守るためです」

「そのためなら、サクラ一人は永遠に眠ってろって?」

「必要な犠牲です」

 空気が重くなる。師匠が一歩、前へ出た。

「師匠」

 なんとなく怖くなって、私は声をかけた。


 でも、師匠は怒鳴らなかった。ただ、低い声で言った。

「俺たちは、今すぐ無理やり起こすなんて言ってねぇ」

「ですが――」

「世界を壊さずに、起こす方法を探してるだけだ」

 橘さんが黙る。

「それすら駄目なのか?」

 師匠は、教団の人たちを見回した。

「方法があるかもしれないのに、探すことすら許さない?」

 誰も答えなかった。

「それ、本当にサクラのためか?」

 その言葉に、胸の奥がぎゅっとなった。私も、同じことを思っていた。サクラ様のため。世界のため。そう言いながら、誰もサクラ様本人のことを見ていない気がした。


 結局。その日の抗議は、大きな騒ぎにはならなかった。警備員とギルド職員に促され、教団の人たちは少しずつ帰っていった。それでも、胸の中のざわざわは消えない。私は師匠と並んで歩く。

「師匠」

「何だ」

「私、ちょっとだけ教団の言ってることも分かります」

「ああ」

 否定されると思った。でも、師匠は普通に頷いた。

「サクラ様を起こして、世界が壊れるなら……怖いです」

「当然だ」

 その答えは、思ったより優しかった。

「でも」

 私は少し考える。

「だからって、方法を探すことまで駄目っていうのは、なんか違う気がします」

「……そうだな」

「世界を守りながら起こせるなら、その方がいいですよね?」

「ああ」


 師匠が、少しだけ笑った。

「珍しく、まともなこと言うじゃねぇか」

「失礼ですね!」

「いつも無茶ばっかしてるからな」

「それとこれとは別です!」

 ムッとして歩く。いつものやり取り。いつもの師匠。でも、胸の奥には、さっきの言葉が残っていた。サクラ様は、今も星継ぎとして世界を支えている。もし目覚めれば、世界が壊れるかもしれない。私は、それをちゃんと知らなかった。


「師匠」

「何だ」

「サクラ様が、星継ぎになったことは知ってます」

「ああ」

「世界を救うためだったことも、知ってます」

「ああ」

「でも」

 私は立ち止まる。

「星継ぎって、今もずっと地球を支え続けるものなんですか?」

 師匠の足が止まった。

「……誰から、どこまで聞いた?」

「詳しくは聞いてません」

 私は正直に答えた。

「サクラ様が、世界を救うために星継ぎになって、眠っている。それくらいです」

 師匠は、しばらく黙っていた。その沈黙が、少し怖かった。

「じゃあ、知らねぇんだな」

「何を?」

「サクラが今、どうやって地球を支えてるのか」

「……どういうこと?」


 師匠が、答えようとした。その時。ふと、視線を感じた。少し離れた場所。電柱のそば。人混みから少し外れたところに、誰かが立っている。白い服。胸元には、桜の紋章。女神教の人だった。こちらを見ている。ただの通りすがりじゃない。たぶん、私たちを見ている。

「師匠……」

「気づいてる」

 師匠の声が、少し低くなった。その瞬間。さっきまで少しだけ緩んでいた空気が、また重くなる。私は何も言えなかった。星継ぎのこと。サクラ様が今どうやって地球を支えているのか。その答えを聞く前に。また、女神教の影が近づいてきた気がした。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださっている方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

第一章も楽しんでいただけていたら嬉しいです!


面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第三部を最後まで駆け抜ける凄まじいエネルギーになります!


(星は1つからでも、ポチッと気軽に押していただけると大喜びします!)


――次回予告――

サクラは過去に世界を救っただけじゃない。

今この瞬間も、眠りながら地球を支え続けている。


それでも美月は思う。

世界を守ったまま助ける方法を――探したって、いいじゃん。


そしてその疑問は、女神教の中にも芽生え始める。


次回

『27. サクラ様を助ける方法を探したって、いいじゃん』


次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!

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