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22. サクラ様本人に、誰が永遠に眠りたいか聞いたの?

いつも応援ありがとうございます!


当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


今回もぜひ、最後までお楽しみください!

【美月(みづき)視点】

 女神教(めがみきょう)について調べてから、なんとなく気になっていた。女神サクラ様。永遠の眠り。その眠りを妨げることは、世界への冒涜。きれいな言葉のはずなのに、どうしても引っかかる。サクラ様を大切にしているなら、目を覚ましてほしいとは思わないのだろうか。そう思うこと自体が、間違いなのだろうか。だから次にギルドへ行った時、私は師匠に聞いてみた。

「師匠」

「何だ」

「サクラ様って、本当に起こしちゃ駄目なんですか?」

 師匠の足が止まった。


「……誰に聞いた」

「ネットです」

「ろくなもん見てねぇな」

「でも、教団の人たちはそう言ってましたよ。サクラ様が眠ってるから地球が大丈夫なんだって」

「それ自体は間違ってねぇ」

「じゃあ、やっぱり起こしちゃ駄目なんですか?」

 師匠は少し黙った。いつもの面倒くさそうな沈黙じゃない。言葉を選んでいるような沈黙だった。

「今すぐ無理やり起こせば、危ない可能性はある」

「だったら……」

「だからって、一生眠らせておけばいいって話にはならねぇだろ」

「……」

 私は何も言えなくなった。その言葉が、思っていたより強く胸に残った。


 師匠が珍しく、少し怖い顔をしていた。

「世界を壊さずに起こす方法があるなら、探すべきだ」

「師匠は、そう思うんですか?」

「ああ」

 迷いのない返事だった。いつもの師匠なら、面倒くせぇとか、知らんとか、そういう言葉で流す。でも、今は違った。サクラ様のことになると、少しだけ声が低くなる。目も怖い。まるで、誰かに奪われたものを取り返そうとしているみたいだった。

「サクラ様のこと、好きなんですか?」

「……は?」

「いや、なんかすごく必死だから」

「余計なこと考えんな」

「怪しい」

「行くぞ」

「絶対なんかありますよね?」

「ねぇよ」

 絶対ある。そう思った。


 その日の帰り。ギルドの前が少し騒がしかった。白い服を着た人たちが、何人も集まっている。胸元には、桜を模した紋章。

「女神教……」

 教団の人たちだった。一人の男が、通行人へ向けて声を上げている。

「女神サクラ様の眠りを乱してはならない!」

「サクラ様は世界のために、今も我々をお守りくださっている!」

 立ち止まって聞いている人がいる。何も言わずに通り過ぎる人もいる。その場で頭を下げる人もいた。そのくらい。サクラ様は、この世界では特別な存在なんだ。改めてそう思った。


 でも。

「永遠の眠りこそ、女神サクラ様の御意思!」

 その言葉に、私は引っかかった。

「……御意思?」

 誰かが、そう言ったの?サクラ様本人が。ずっと眠っていたいって。起きたくないって。そんなことを、本当に言ったの?昼間の師匠の言葉を思い出す。

『一生眠らせておけばいいって話にはならねぇだろ』

 私も。そっちの方が正しい気がした。眠っているからありがたい。眠り続けるから尊い。そういう考え方は、やっぱりどこか変だ。世界を救った人なら。なおさら、起きてほしいと思ってもいいんじゃないの?


 その時だった。

「朝倉美月(あさくらみづき)さんですね?」

「え?」

 声をかけてきたのは、白い服を着た女性だった。胸元には、桜の紋章。女神教の人だ。

「そうですけど……どうして私の名前を?」

「突然すみません。私もハンター登録をしておりまして、以前ギルドの受付でお見かけしたんです」

 女性は優しく笑った。

「その時、あなたが美桜(みお)おばあちゃんとおっしゃっていたので」

「……美桜おばあちゃん」

 おばあちゃんの名前が出た瞬間、少し警戒した。たしかに、ギルドでは何度かそう言った覚えがある。でも、それを覚えられていたのは、少し気味が悪かった。


「そんなあなたに、ぜひ一度、女神教の本部へ来てほしくて」

「私が?」

「はい」

 女性は穏やかに頷いた。

「美桜様は、女神サクラ様をお守りした偉大な方です。その血を引くあなたにも、ぜひ知っていただきたいのです」

「何を?」

 女性は笑顔のまま答えた。

「女神サクラ様が、なぜ永遠に眠り続けなければならないのかを」

「…………」

 返事ができなかった。優しい声だった。きれいな笑顔だった。でも、その言葉だけが、妙に冷たく聞こえた。永遠に眠り続けなければならない。その言い方が、やっぱり引っかかった。


 私は返事をしなかった。怖いとは思った。急に名前を呼ばれたことも。おばあちゃんの名前を出されたことも。本部へ来てほしいと言われたことも。全部、少し変だ。でも。気になる。この人たちは、本当にサクラ様を大切に思っているのだろうか。それとも、永遠に眠る女神としてしか見ていないのだろうか。師匠の言葉と、教団の言葉。どちらが正しいのかは、まだ分からない。だから。自分の目で確かめてみたくなった。女神サクラ様が、なぜ永遠に眠り続けなければならないのか。その言葉の意味を。ほんの少しだけ。聞いてみたいと思った。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださっている方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

第一章も楽しんでいただけていたら嬉しいです!


面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第三部を最後まで駆け抜ける凄まじいエネルギーになります!


(星は1つからでも、ポチッと気軽に押していただけると大喜びします!)


――次回予告――

「永遠に眠ることが、女神にとって最も幸福な形です」


その言葉に、美月は問い返す。

――それは本当に、サクラ様本人にとっても幸せなんですか?


女神として崇める人々の中で、美月だけが“一人の少女”を見ようとしていた。


次回

『23. サクラ様にとっても幸せなんですか。美月は女神教本部でそう聞いた』


次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!

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