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21. サクラを起こすな。女神教の声明は、祈りではなく脅しだった

いつも応援ありがとうございます!


当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


今回もぜひ、最後までお楽しみください!

【皐月(さつき)視点】

 数日後。俺は総帥である天羽継真(あもうけいま)に呼ばれて、ギルド本部へ来ていた。総帥室に入った時点で、面倒な話だということは分かった。継真の顔が、いつもより少し硬い。机の上には複数の端末。表示されている資料の量を見るだけで、ろくでもない話だと分かる。

「何だ?」

 俺が聞くと、継真は短く答えた。

「女神教が動いてる」

「……何?」

 思わず眉が寄った。


 継真が端末をこちらへ向ける。そこには、教団が出した声明が表示されていた。

『女神サクラ様の御眠りを乱す行為を、我々は決して許容しない』

 丁寧な言葉を使っている。だが、中身は脅しに近い。サクラを起こそうとするな。そう言っているようにしか見えなかった。

「ずいぶん物騒だな」

「最近、サクラさんの周辺で何か動きがあるって噂が流れてる」

「噂?」

「星継(ほしつ)ぎの状態に変化があったとか、ギルドが何か調査してるとか」

 俺は眉をひそめた。

「漏れてんのか?」

「確定情報じゃない。憶測が広がってるだけだと思う」

「面倒くせぇな」


 継真がため息をつく。

「女神教は、もう小さな宗教団体じゃない」

 端末の画面が切り替わる。国内支部。海外支部。関連団体。寄付元。そこに並ぶ名前を見て、俺は小さく舌打ちした。

「ずいぶん増えたな」

「国内だけでもかなりの信者がいる。政治家、企業、ハンター、ギルド関係者。いろんなところにね」

「ギルドにもか」

「いると思った方がいい」

 面倒な話だった。魔物なら斬ればいい。迷宮核なら壊せばいい。だが、人間の信仰はそうはいかない。斬れば終わるものじゃない。むしろ、下手に触れば広がる。


「サクラさんが眠ってるから、今の平和がある。そう信じてる人は多い」

「間違ってはいねぇ」

 俺は認めるしかなかった。サクラが眠ったから、地球は救われた。サクラが星継ぎとして世界の生命循環を支えたから、今の平和がある。それ自体は事実だ。

「そうなんだよ」

 継真が低く言う。

「だから厄介だ」

 完全な嘘なら、否定すればいい。だが、女神教の言葉には事実が混ざっている。サクラが世界を救った。サクラが眠ることで、地球は生き延びた。そこまでは正しい。だが、だから永遠に眠っていろという結論は違う。俺は、そこだけは絶対に認める気がなかった。


「皐月さん」

「何だ」

「本当に、起こすつもり?」

「ああ」

 迷う理由はなかった。

「危険があっても?」

「世界を壊してまで起こす気はねぇよ」

 俺は即答した。

「世界を壊さずに起こす方法を探す」

「……そうだね、そう言うと思った」

「何十年も眠らせたままで、それが正しいなんて俺は思わねぇ」

 継真は黙った。たぶん、こいつも分かっている。サクラが眠ったおかげで世界は救われた。だが、それと、サクラを永遠に眠らせていいかどうかは別の話だ。


 少しして、継真が口を開いた。

「教団側は、そうは思わないかもしれない」

「だろうな」

「彼らにとって、サクラさんはもう一人の人間じゃない」

「女神か」

「ああ」

 俺は舌打ちした。サクラは女神じゃない。飯を食う。怒る。笑う。泣く。無茶をする。怖いくせに、最後には前へ出る。そういう、ただの人間だった。世界を救った。それだけだ。それだけで、人は勝手に神にする。勝手に祈って。勝手に崇めて。勝手に、眠り続けることを望む。ふざけた話だった。


「俺はサクラを神様にした覚えはねぇよ」

「世間はそう見てる」

「勝手な話だな」

 継真が苦笑する。

「とりあえず、教団の動きはこっちでも見ておく」

「ああ」

 俺は立ち上がった。話すべきことはだいたい分かった。女神教は動いている。噂も広がっている。サクラを起こすなら、こいつらは邪魔になるかもしれない。だが、部屋を出る前に継真が俺を呼び止めた。

「皐月さん」

「ん?」

「教団全部を敵だと思わない方がいい」

「分かってる」

「中には、本当にサクラさんを大切に思ってる人もいる」

「だから面倒なんだろ」

「そういうこと」

 敵なら斬ればいい。だが、善意でサクラを閉じ込めようとする人間は、斬って終わりにはできない。


 廊下を歩きながら、さっきの声明を思い出す。

『女神サクラ様の御眠りを乱す行為を、決して許容しない』

「……知るかよ」

 小さく吐き捨てた。御眠り。永遠の祈り。未来を守る女神。きれいな言葉を並べれば、聞こえはいい。だが、サクラは眠りたいって言ったわけじゃない。あいつは、世界を救うために眠るしかなかっただけだ。怖いと言った。寂しいと言った。生きたいとも言った。それでも、自分で選んだ。だからこそ。それを、永遠に眠り続けることが本人の望みだったみたいに扱うのは違う。

「待ってろ、サクラ」

 教団が何を言おうが。世間が何を祈ろうが。方法があるなら、俺は探す。世界も救う。サクラも救う。どっちかを諦めるつもりはなかった。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださっている方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

第一章も楽しんでいただけていたら嬉しいです!


面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第三部を最後まで駆け抜ける凄まじいエネルギーになります!


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――次回予告――

「永遠の眠りこそ、女神サクラ様の御意思」


その言葉に、美月は初めて真正面から疑問を抱く。

――それ、本当にサクラ様本人が望んだことなの?


そして女神教は、美桜の孫である美月へ接触する。


次回

『22. サクラ様本人に、誰が永遠に眠りたいか聞いたの?』


次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!

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