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世界を救った少女が眠り続けているので、大悪魔の俺が今度こそ救うことにした  作者: 和伊 和威
第一章 眠り続ける星継ぎと、目覚め始めた地球の神
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19/68

19. 世界を救った少女を、今度は俺が救う番だ

いつも応援ありがとうございます!


当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


今回もぜひ、最後までお楽しみください!

【皐月(さつき)視点】

 それからしばらく経った。俺は再び、星継(ほしつ)ぎの間を訪れていた。ここへ来る道にも、もう迷うことはない。何十年も通っている。何度も、何度も。それでも、この場所へ入る瞬間だけは、少しだけ息が浅くなる。透明な結晶の中。サクラは、今日も眠っていた。あの日と変わらない姿で。

「よう、サクラ」

 いつものように声をかける。当然、返事はない。それでも俺は、その横に座った。返事がないことにも慣れた。慣れたくなんてなかったが、何十年も経てば、慣れてしまう。それが少しだけ腹立たしかった。


「美月のやつな。最近、少しは大人しくなったぞ」

 たぶん。

「……まあ、あいつのことだから、いつまで続くか分からねぇけど」

 跳(と)ばし鬼(おに)に飛ばされた件は、さすがに効いたらしい。少なくとも、今のところは勝手に一人で潜っていない。同年代だけのパーティーで無茶をすることも、今は控えている。ただ、あいつの目はまだ折れていない。怖い目に遭った。泣いた。それでも、ハンターをやめるとは言わなかった。

「お前なら、怒るかもな」

 俺は眠るサクラを見た。

「無茶しすぎだって」

 返事はない。それでも俺は話す。昔から、そうしてきた。


 そして今日ここへ来たのには、もう一つ理由があった。

「大賢者」

『はい』

「どうだ?」

 何を、とは言わなかった。大賢者にも、それで通じる。星継ぎへの依存率。地球深部の神性反応。その二つが、あれからどう変わったのか。

『変化は続いています』

 俺は顔を上げた。

「サクラへの依存率は?」

『わずかですが、さらに低下しています』

「神性反応は?」

『こちらは逆に強くなっています』

「……やっぱりか」


『そして、二つの変化は現在もほぼ連動しています』

 サクラへの依存が下がる。地球深部の神性が強くなる。片方が弱くなるたびに、もう片方が強くなる。偶然にしては、あまりにも綺麗すぎる。

「つまり」

 俺はサクラを見る。

「何かがサクラの役割を、少しずつ引き受け始めてる可能性がある?」

『否定できません』

 否定できない。それは、肯定ではない。だが、今の俺には十分すぎる答えだった。何十年も前なら、そんな可能性すらなかった。サクラが眠り続ける以外、世界を保つ方法はなかった。だが今は、違うかもしれない。


「そいつが全部引き受けられたら?」

『星継ぎを必要としなくなる可能性があります』

「……サクラを起こせる?」

 大賢者は少し間を置いた。

『可能性はあります』

 また、その言葉だった。可能性。確実じゃない。何が地球の奥にあるのかも分からない。そいつが味方なのか。敵なのか。そもそも意思があるのかさえ分からない。それでも。何十年も前には、その可能性すらなかった。サクラは世界を救うために眠った。俺たちは、それを受け入れるしかなかった。だけど今は違う。


「……何かが目を覚まし始めてるのかもな」

『目を覚ます、という表現が適切かは分かりません』

「分かってるよ」

 俺は小さく笑った。大賢者は相変わらずだ。目を覚ますのか。生まれるのか。回復するのか。それとも、ただ数値が変化しているだけなのか。正しい言い方は分からない。だが、地球の奥で何かが動き始めている。それだけは間違いなかった。そしてその何かは、サクラが背負っている役割に近い力を持っている。なら、追う価値はある。いや。追うしかない。


 それから、サクラの顔を見る。何十年経っても変わらない。あの頃のまま。俺はそっと、その手を握った。

「なあ、サクラ」

 当然、返事はない。

「俺さ」

 少しだけ言葉に詰まった。こんなことを言うのは、初めてだった。今までは言えなかった。起こせるかもしれないとは言えなかった。駄目だった時に全部折れてしまいそうで。期待させる相手が眠っているとしても。聞こえているか分からないとしても。その言葉だけは、どうしても言えなかった。でも。今日は言ってもいい気がした。


「……お前、起こせるかもしれねぇぞ」

 声が少し震えた。そんな自分に、少しだけ腹が立つ。だが、仕方ない。何十年も待った言葉だった。何十年も、言いたくて、言えなかった言葉だった。サクラは眠ったまま。何も答えない。目も開けない。笑わない。それでも俺は、その手を離さなかった。温かい。生きている。ここにいる。世界を救った少女を。今度は。俺が救う番だ。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださっている方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

第一章も楽しんでいただけていたら嬉しいです!


面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第三部を最後まで駆け抜ける凄まじいエネルギーになります!


(星は1つからでも、ポチッと気軽に押していただけると大喜びします!)


――次回予告――

第二章

『女神ではなく、一人の少女として』開幕。


世界を救った“女神サクラ”。

けれど美月は、その眠りを願う人々の言葉に初めて違和感を抱く。


永遠に眠っていてほしい――。

それは本当に、サクラへの感謝なのか。


次回

『20. かわいそうじゃないの。美月は初めて、女神ではなくサクラを見た』


次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!

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