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世界を救った少女が眠り続けているので、大悪魔の俺が今度こそ救うことにした  作者: 和伊 和威
第一章 眠り続ける星継ぎと、目覚め始めた地球の神
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17/62

17. サクラを起こせるかもしれない。その希望と同時に、地球の神性反応が現れた

いつも応援ありがとうございます!


当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


今回もぜひ、最後までお楽しみください!

【皐月(さつき)視点】

『現在、確認しています』

「早くしてくれ」

 俺は眠るサクラのそばに立った。透明な結晶の中。サクラは、いつもと同じ顔で眠っている。見た目は何も変わらない。呼吸もある。顔色も悪くない。苦しそうにも見えない。それでも、胸騒ぎが消えなかった。何十年も変わらなかったものが、初めて変わった。その事実だけで、悪い想像はいくらでも浮かぶ。

「サクラが弱ってるのか?」

『……違います』

「違う?」


 大賢者の声が、少しだけ間を置いた。

『星継(ほしつ)ぎとしての接続率が低下しています』

「だから、それが危ないんじゃねぇのか?」

 星継ぎは、地球の生命循環を支えている。サクラが眠り、自分の魂を星に繋いでいるから、地球は生き延びた。その接続率が下がっている。普通に考えれば、危険な兆候にしか聞こえない。だが、大賢者は静かに否定した。

『いいえ』

「じゃあ何だ」

『サクラ側の問題ではありません』

 俺は眉を寄せる。

『地球側です』

「地球?」

『地球が星継ぎへ要求している力が、少しずつ減少しています』

「……どういうことだ?」


『長い年月をかけて、地球そのものが回復しているということです』

 俺は言葉を失った。あの日。サクラが眠ることを選んだのは、地球を救うためだった。星継ぎとなり、自分の魂を地球へ繋いだ。怖いと言いながら。寂しいと言いながら。それでも、幸せだと笑って。それから何十年。サクラはずっと、世界を支え続けてきた。返事もしない。目も開けない。誰に褒められることもなく。ただ眠り続けて。その時間が、ちゃんと意味を持っていた。地球は、少しずつ回復していた。


『以前は、サクラの接続を解除すれば地球そのものが不安定になる危険がありました』

「……今は?」

『以前ほどではありません』

 心臓が強く鳴った。俺は眠るサクラを見る。透明な結晶の中で、あの日と変わらない姿のまま眠る少女。何十年も、起こしたくて。でも起こせなかった。起こせば世界が壊れるかもしれない。だから、手を伸ばせなかった。

「つまり」

 声が、自分でも分かるくらい低くなった。

「サクラを起こしても、地球がすぐ滅びるわけじゃないってことか?」

『そこまでは言えません』

「おい」

『現在も星継ぎは必要です。完全に切り離せば、何が起きるか分かりません』

「…………」

 期待しかけた気持ちが、少し沈んだ。


『ただし』

 大賢者が続けた。

『以前のように、解除は絶対に不可能とは言えなくなりました』

「……!」

 俺は再びサクラを見る。眠っている。何十年経っても変わらない姿で。だが今、その眠りに初めて終わりが見えた気がした。

「じゃあ……」

 声が少し震えた。

「何か代わりになるものがあれば?」

『可能性はあります』

「代わり?」

『地球を安定させる存在』

 俺は黙った。

『星継ぎが担っている役割を、別の何かが引き受けることができれば――』

「サクラを解放できる?」

『理論上は』

 何十年。ずっと考えてきた。どうすればサクラを起こせる。どうすれば世界を壊さずに助けられる。答えはなかった。だけど。初めて。ほんの少しだけ。道が見えた。


「……サクラ」

 俺は眠る少女の手に触れた。結晶越しではない。星継ぎの間では、サクラの手だけは、触れられるようになっている。何十年も、何度も握ってきた手だ。温かい。生きている。それだけを確かめるために、俺は何度もここへ来た。

「もしかしたら」

 言葉にするのが怖かった。期待して、また駄目だったら。この希望がただの勘違いだったら。そう思っても、口から出た。

「お前を……起こせるかもしれねぇ」

 サクラは何も答えない。それでも。今日はいつもと違って見えた。眠っているだけじゃない。いつか目を開けるかもしれない。そんなふうに思えた。


『皐月』

「ん?」

『もう一つ、確認したいことがあります』

「何だ?」

『今回の星継ぎ接続率低下と同時期に、地球深部で未知の反応を観測しています』

「未知の反応?」

『はい』

「迷宮核か?」

『違います』

「じゃあ魔力?」

『それとも異なります』

 俺は眉をひそめた。

「何なんだよ」

 大賢者はしばらく答えなかった。そして。

『現時点で最も近いものを挙げるなら――』

 嫌な間。

『神性反応です』

「……神?」

 思わず聞き返した。地球に神はいない。少なくとも、俺たちはそう認識していた。ヴァルメリアには女神がいた。あの白くて厄介な、最悪の観客が。だが、地球は違う。そのはずだった。


「どういうことだ?」

『分かりません』

「ヴァルメリアの女神みたいなものがいるってことか?」

『断定できません』

「じゃあ何だよ」

『ただ』

 大賢者が続ける。

『星継ぎへの依存率が低下し始めた時期と、この神性反応が現れ始めた時期は、ほぼ一致しています』

「……」

 俺は眠るサクラを見る。地球がサクラを必要とする力が減っている。同じ頃。地球の奥で、神のような何かが動き始めた。偶然。そう考えるには、あまりにも出来すぎている。

「偶然じゃねぇよな」

『その可能性は低いでしょう』

 希望が見えたと思った途端に、また面倒なものが顔を出す。俺らしいと言えば、俺らしい。だが、今は文句を言っている場合じゃない。


「調べられるか?」

『時間は必要ですが』

「やってくれ」

『分かりました』

 俺はサクラの手をもう一度握った。

「待ってろ」

 何十年も言い続けた言葉。だけど今日は。少しだけ意味が違う。ただ願うだけじゃない。ただ、いつかと繰り返すだけでもない。初めて、探すべきものが見えた。地球を安定させる存在。星継ぎの役割を引き受けられる何か。そして、地球深部に現れた神性反応。そのどれかが、サクラへ繋がっているかもしれない。

「今度こそ、ちゃんと探してやる」

 サクラを眠らせたままにしない方法を。世界も。サクラも。どっちも救う方法を。初めて。そんな未来があるかもしれないと思えた。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださっている方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

第一章も楽しんでいただけていたら嬉しいです!


面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第三部を最後まで駆け抜ける凄まじいエネルギーになります!


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――次回予告――

地球深部から観測された、謎の神性反応。


その力が持つのは、生命、魔力、大地の循環を安定させる性質――。

それは、何十年もサクラが担い続けてきた《星継ぎ》と同じ役割だった。


次回

『18. 地球の奥にいる何かは、サクラと同じ役割を持っていた』


次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!

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