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世界を救った少女が眠り続けているので、大悪魔の俺が今度こそ救うことにした  作者: 和伊 和威
第一章 眠り続ける星継ぎと、目覚め始めた地球の神
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14. 深層適性者の美月を、ダンジョンは普通に帰してくれなかった

いつも応援ありがとうございます!


当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


今回もぜひ、最後までお楽しみください!

【美月(みづき)視点】

今日は師匠と一緒にダンジョンへ潜っていた。

「師匠」

「師匠はやめろ」

いつものやり取り。でも、今日の私は少しだけ落ち着かなかった。少し前に、支部長から聞かされたからだ。私が、深層適性者だということを。モンスターや罠、迷宮核に好かれる。しかも、一緒にいる仲間まで巻き込む可能性がある。そう言われてから、ダンジョンの空気が前より少し重く感じるようになった。

「私って、大丈夫なんですか?」

「何が」

「深層適性者ってやつです」

師匠は前を歩きながら、何でもないように言った。

「まあ、俺がいれば大丈夫だろ」

「……頼りになるなぁ」

「そうか」

「さすが師匠!」

「だから師匠はやめろ」


そんなことを言いながら進んだけど、今日は本当に調子が良かった。魔物が出る前に、師匠が短く指示を出す。

「右」

「足元を見るな。奥を見ろ」

「今のは踏み込みすぎだ」

言い方は雑。褒めてもくれない。でも、指示は全部当たっていた。その通りに動くと、魔物の攻撃を避けられる。次にどこを斬ればいいのか分かる。怖いと思うより先に、身体が動く。戦闘は順調だった。レベルも二つ上がった。以前あれだけ苦戦した五階層も、師匠と一緒なら驚くほど楽に進めた。あの時は、息もできないくらい怖かった場所。でも今日は違う。私、ちゃんと強くなってる。そう思えた。


ダンジョンを出る頃には、かなり自信がついていた。深層適性者。その言葉はまだ怖い。でも、何もできないわけじゃない。私は戦える。レベルも上がった。前は怖くて仕方なかった五階層も、今日はちゃんと歩けた。

「浮かれるなよ」

ダンジョンを出るなり、師匠が言った。

「分かってます」

「分かってる奴は、そういう顔をしねぇ」

「どんな顔ですか」

「調子に乗る三秒前の顔だ」

「失礼ですね!」

そう言い返したけれど、少しだけ図星だった。私は、前より強くなった。そう思っていた。


地上へ戻ると、スマホに通知が入った。以前一緒に潜ったパーティーメンバーからだった。

『次いつ潜る?』

画面を見ながら、支部長の言葉を思い出す。

『同程度の実力の仲間だけで潜るのも危険だ』

「…………」

断った方がいい。たぶん、それが正しい。でも、前に迷惑をかけたまま終わりたくなかった。私だけが黒瀬(くろせ)さんに教えてもらって、レベルも上がって。みんなとはもう潜れません、なんて言いたくなかった。浅い階層なら大丈夫でしょ。それに、今の私は前よりレベルも上がっている。無茶しなければいい。三階層まで。そこまでなら、きっと平気。

「みんなで行けば平気平気」

師匠には……。まあ、内緒にしておこう。


次の日曜日。私は友達のパーティーメンバーと一緒に、またダンジョンへ来ていた。

「美月、レベル上がってない?」

「二つ上がったよ」

「すご!」

そう言われて、少し嬉しくなる。でも、すぐに支部長の言葉が頭をよぎった。私はみんなのステータスを見る。前とほとんど変わっていない。ちょっと不安になった。もし、また異常が起きたら。もし、私のせいで何かを引き寄せたら。でも。まあ、私がサポートすれば大丈夫。今日は無茶をしない。三階層まで。そこまで決めていた。


実際、三階層までは順調だった。魔物の数も普通。罠も、講習で習った通りに確認できた。私も、前より落ち着いて動けている。友達も笑っていた。今日は大丈夫。そう思えた。

「次どうする?」

仲間に聞かれる。以前の私なら、もう少し先へ行こうと言っていたかもしれない。でも今日は違う。

「帰りましょ」

「えー、もう?」

「今日はここまで」

そう言えた自分に、少しだけ安心した。私はちゃんと判断できている。無茶はしていない。支部長の言葉も、師匠の忠告も、忘れていない。そう思った。その時だった。奥の通路から、何かが走ってくる音がした。


奥の通路から、何かが走ってくる。大きい。人型。角。

「……鬼?」

見た瞬間、嫌な予感がした。三階層に出るような魔物じゃない。少なくとも、私たちが相手にしていい存在ではない。しかも、その鬼は迷わずこちらへ向かってくる。まるで、最初から私たちを見つけていたみたいに。いや。違う。私を見ている。そんな気がした。

「みんな、下がって!」

私は反射的に前へ出た。仲間を守らないと。私が引き寄せたのかもしれないなら、なおさら。


剣を構える。手が震えている。でも、下がるわけにはいかない。私の後ろには、友達がいる。鬼が腕を振り上げる。来る。そう思った。でも。鬼は、殴ってこなかった。

「え?」

腹に、衝撃。蹴られた。

「美月!」

仲間の声が遠くなる。身体が宙へ浮く。壁に叩きつけられる。そう思った。でも――。

「……え?」

景色が変わった。森が消えている。仲間もいない。土と草の匂いもない。代わりに、冷たい石の匂いがした。薄暗い通路。見たことのない壁。重い空気。私は一人で立っていた。


「……どこ、ここ?」

返事はない。仲間の声も聞こえない。さっきまでいた森のざわめきもない。私は慌てて端末を見る。圏外。階層表示も乱れていて、数字が定まらない。ただ、遠くから、何かの鳴き声だけが聞こえた。低くて、湿った音。それを聞いた瞬間、足がすくむ。その時になって、ようやく思い出した。ハンター講習で習ったことがある。階層を強制的に飛ばす鬼。パーティーを分断し、対象を別階層へ孤立させる危険種。第一級危険指定モンスター。――跳(と)ばし鬼(おに)。

「……うそでしょ」

喉が乾く。手が震える。私は、どこか分からない階層へ飛ばされていた。一人で。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださっている方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

第一章も楽しんでいただけていたら嬉しいです!


面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第三部を最後まで駆け抜ける凄まじいエネルギーになります!


(星は1つからでも、ポチッと気軽に押していただけると大喜びします!)


――次回予告――

見知らぬ深層へ飛ばされ、オーガに追い詰められた美月。


両腕を折られ、死を覚悟したその瞬間――黒い仮面のS級ハンター・零が現れる。

そして美月は、また一人“憧れの英雄”を増やしてしまう。


次回

『15. 死にかけた美月の前に、黒い仮面のS級ハンター零が現れた』


次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!

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