↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救った少女が眠り続けているので、大悪魔の俺が今度こそ救うことにした  作者: 和伊 和威
第一章 眠り続ける星継ぎと、目覚め始めた地球の神
PR
12/66

12. 魔物の倒し方は分かる。でも、孫との話し方だけが分からない

いつも応援ありがとうございます!


当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


今回もぜひ、最後までお楽しみください!

【皐月(さつき)視点】

 夕方。娘の春香(はるか)から電話がかかってきた。

「お父さん、美月(みづき)が帰ってこない」

 その一言で、胸の奥が嫌な音を立てた。

「学校じゃないのか?」

「もうとっくに終わってる。連絡もつかない」

「友達のところは?」

「確認した。でも、誰も知らないって」

 嫌な予感がした。普通なら、少し帰りが遅いだけで大騒ぎする必要はない。けれど、美月はハンターになったばかりだ。そして、深層適性者でもある。ただの寄り道で済むと考えるには、俺はその言葉の意味を知りすぎていた。


 今は便利な時代だ。ハンター用のアプリを使えば、誰がどのダンジョンに入ったかまでは確認できる。入場時間。登録番号。どのゲートを通ったか。その程度なら、すぐに分かる。ただし。ダンジョン内部との通信だけは、今もできない。どれだけ技術が進んでも、迷宮の中は外の常識が届きにくい。春香が調べた結果、美月は近くの森型ダンジョンに入っていた。

「……あいつ、一人で行ったのか」

「たぶん」

 春香の声が震えている。深層適性者が。新人のまま。一人でダンジョンに入った。最悪に近い組み合わせだった。

「すぐ行く」

 俺はそれだけ言って、家を出た。


 森型ダンジョンへ向かう間、余計なことばかり頭をよぎった。黒瀬蓮(くろせれん)として行くべきか。祖父として行くべきか。いや、そんなことを考えている場合じゃない。美月が無事なら、それでいい。俺が嫌われるかどうかなんて、あとで考えればいい。深層適性者は、ダンジョンに引き寄せられる。普通なら起きないことが起きる。普通なら出ない魔物が出る。普通なら行かない場所へ、足を向けさせられる。サクラの時に、嫌というほど見た。だから、急いだ。また間に合わなかったなんて、二度と御免だった。


 ダンジョンへ着き、入口へ向かう。今から入るか。そう思った、その時だった。

「……美月?」

 入口から、一人の少女が出てきた。制服も服も汚れている。腕には細かい傷がある。顔も青ざめていた。足取りも危うい。それでも。生きている。

「美月!」

 思わず駆け寄った。顔を見た瞬間、膝から力が抜けそうになる。良かった。本当に。間に合ったわけじゃない。助けたわけでもない。それでも、美月は自分で外へ戻ってきた。生きて戻ってきた。


「怪我は?」

「……ない」

「そうか」

 その答えを聞いて、ようやく息ができた気がした。だが、美月は俺を見るなり、不機嫌そうな顔になった。

「なんでいるの?」

「ちょっとな」

「ちょっとって何?」

 俺は答えられなかった。黒瀬蓮として見張っていた。深層適性者だから心配だった。ダンジョンが、お前を狙うかもしれないと思った。そんなことを、今ここで言えるはずもない。言えば、こいつはまた反発する。だから黙った。その沈黙が、美月を余計に怒らせることは分かっていたのに。


 美月は唇を噛んで、俺を睨んだ。そして、言った。

「……お父さんがいたらよかったのに」

 一瞬、何も言えなかった。美月の父親は、美月が五歳の頃にダンジョンで死んだ。事故だった。遺体も見つかった。春香も、美月も。あの日からずっと、その事実を抱えて生きている。美月は父親の記憶が薄い。だからこそ、余計に思うのかもしれない。生きていたら。ここにいてくれたら。自分をちゃんと見て、ちゃんと話してくれたら。その穴を、俺は埋められない。埋められると思ったこともない。だから、何も言えなかった。


「帰る」

 美月が俺の横を通り過ぎる。

「美月」

 思わず名前を呼んだ。

「ついてこないで」

 そう言われて、足が止まった。追いかけることはできた。力ずくで家まで送ることも、たぶんできた。でも、それをしたら終わりだ。祖父としても。家族としても。美月の中に残っているわずかな何かまで、壊してしまう。

「……分かったよ」

 俺は一人で帰ることにした。


 家に戻ると、玄関を開けた瞬間に春香の怒鳴り声が聞こえた。

「あれほど一人で入るなって言ったでしょ!」

「分かってる!」

「分かってないから行ったんでしょう!」

「だって……!」

「だってじゃない!」

 リビングを見る。美月がソファに座って、完全にふてくされていた。制服は着替えているが、腕の細かい傷には手当ての跡がある。春香は相当怒っている。まあ、当然だ。怒っているというより、怖かったんだろう。連絡もつかず、ダンジョンに一人で入っていた娘が、傷だらけで戻ってきた。普通の親なら、怒鳴りもする。


「ただいま」

 俺が声をかけると、美月がこっちを見た。目が合う。次の瞬間。

「……っ」

 美月は立ち上がると、そのまま廊下へ走っていった。バタン。自分の部屋の扉が閉まる音。俺はしばらく、その方向を見ていた。

「……俺、そんなに嫌われてるか?」

 春香が大きくため息をつく。

「お父さんも、もう少しちゃんと話してあげたら?」

「話をする間もなくいなくなるんだよ……」

「…………」

 春香は何も言わなかった。その沈黙が、一番答えに近かった。俺が何も話さないから、美月は離れる。美月が離れるから、俺は話す機会を失う。分かっている。分かっているが、どうすればいいのか分からない。魔物の倒し方なら、いくらでも分かる。ダンジョンの歩き方も、罠の避け方も、深層の危険も。でも、孫との話し方だけは、今も分からなかった。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださっている方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

第一章も楽しんでいただけていたら嬉しいです!


面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第三部を最後まで駆け抜ける凄まじいエネルギーになります!


(星は1つからでも、ポチッと気軽に押していただけると大喜びします!)


――次回予告――

美月に告げられた《深層適性者》という事実。


それは才能ではなく、魔物も罠も、そしてダンジョンそのものから――悪い意味で“好かれる”適性だった。

ハンターを続けるのか。その選択を、美月自身が迫られる。


次回

『13. 美月は深層適性者だった。だから、ダンジョンに悪い意味で好かれる』


次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。