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世界を救った少女が眠り続けているので、大悪魔の俺が今度こそ救うことにした  作者: 和伊 和威
第一章 眠り続ける星継ぎと、目覚め始めた地球の神
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10. 嫌いな祖父だと知らないまま、美月はS級ハンター零にも憧れた

いつも応援ありがとうございます!


当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


今回もぜひ、最後までお楽しみください!

【皐月(さつき)視点】

 今日は黒瀬蓮(くろせれん)ではない。S級ハンターとしての仕事だ。アイテムボックスから、いつもの黒い装備を取り出す。黒い外套。そして、仮面。顔だけでなく、ステータスや魔力の特徴まで隠す魔道具だ。装備すると、声色まで変わる。この姿の時、俺は春日皐月でも、黒瀬蓮でもない。S級ハンター――零(ゼロ)。世間に顔を出さず、必要な時だけギルドの依頼を受ける、便利な影みたいな存在。正直、好きな名前ではない。だが、表に出るには都合がいい。そう思って来たのだが。


「今日の仕事は……広報?」

 思わず聞き返した。

「はい。若いハンター志望者へのPRも兼ねています」

「戦わねぇのかよ」

「たまにはお願いします」

 面倒だ。魔物を斬る方がまだ楽だ。だが、S級として名前を借りている以上、こういう仕事も仕方ない。零という存在は、ギルドにとって都合がいい。顔を出さない。所属を明かさない。それでいて実績だけはある。若い連中からすれば、謎のS級ハンターというだけで興味を引くらしい。俺には何がいいのか分からない。そう思いながら、俺は諦めてカメラの前に座った。


「では、零さん。ハンターとしての目標を教えてください」

「目標?」

「はい」

 少し考える。目標。そんなもの、昔なら考えたこともなかった。生き残る。倒す。守る。それだけだった。だが、今は違う。

「……ダンジョンを攻略することだな」

「すべてのダンジョンを、ですか?」

「できるなら」

 まだ、人間が知らない深層は山ほどある。迷宮核が停止しても、すべての謎が消えたわけじゃない。星継(ほしつ)ぎ。魂の接続。世界を越える方法。サクラを救う手がかりだって、どこに眠っているか分からない。だから俺は、潜る。それを、インタビューで言うつもりはなかった。


「では、尊敬する人物は?」

 今度はすぐに答えが浮かんだ。

「サクラ」

 インタビュアーが少し驚く。

「女神サクラ、ですか?」

「女神かどうかは知らねぇけどな」

 俺は仮面の奥で目を細める。女神。世間はあいつをそう呼ぶ。星継ぎとして地球を救った存在。祈りの対象。教科書に載る英雄。だが、俺にとってサクラはサクラだ。泣きながら笑う。怖いと言いながら前に進む。あと五分と駄々をこねる。それでも最後には、自分で選んだ。

「世界を救うために、自分から眠ることを選んだ。俺にはできない」

「だから尊敬している?」

「ああ」

 ただ。できれば、あいつにはもう頑張ってほしくない。そこまでは言わなかった。


「もしかして女神教なのでしょうか?」

「ちがう」

 断固否定しておいた。勘違いされたら困る。サクラを信仰しているわけじゃない。あいつを神棚に置きたいわけでもない。眠ったまま綺麗な伝説にしたいわけでもない。俺はただ、あいつを起こしたいだけだ。だが、そんなことを配信で言うわけにはいかない。だから俺は、仮面の奥で黙った。インタビュアーは少し困ったように笑い、次の質問へ移った。



【美月(みづき)視点】

「美月、これ見てみ〜」

 昼休み。

 友達がスマホを私の前に差し出してきた。

「何?」

「零! 今、生配信やってる!」

「零?」

「知らないの!? S級ハンターだよ!」

 S級。その言葉に、私は反射的に画面を見た。黒い装備。黒い仮面。顔はまったく見えない。表情も分からない。なのに。

「……かっこいい」

 思わず口から出た。


「でしょ!?」

 友達が嬉しそうに言う。画面の中の零は、椅子に座ってインタビューを受けていた。声は低くて落ち着いている。無駄なことを言わない。質問にも、淡々と答えている。黒い仮面のせいで、表情は見えない。でも、そのせいで余計に目が離せなかった。何を考えているのか分からない。どれくらい強いのかも分からない。でも、S級。ギルドに認められた最上位のハンター。それだけで、胸が少し高鳴った。


『尊敬する人物は?』

 画面の中で、インタビュアーが尋ねた。零は少しも迷わなかった。

『サクラ』

「……え」

 思わず声が出た。サクラ。女神サクラ。星継ぎとなり、自ら眠りにつくことで地球を救った女性。おばあちゃんが最後まで守った人。私にとっても、その名前は特別だった。その人を、零は尊敬していると言った。しかも、格好つけている感じが全然ない。有名な名前を出して、好感度を上げようとしているようにも見えない。ただ、本当にそう思っているから答えた。そんな言い方だった。

「……いい」


「美月、顔ヤバいよ」

「うるさい」

 でも、たぶん本当に変な顔をしていたと思う。師匠――黒瀬蓮とは違う。師匠はぶっきらぼうで、口も悪い。でも強い。あの人の強さは、目の前で魔物を斬り伏せる現場の強さだ。零は、それとは違う。静かで。謎があって。S級で。黒い仮面で顔を隠していて。世界を救ったサクラ様を尊敬していて。

「……全部いい」

「惚れた?」

「まだそこまでじゃない!」

 そう答えた。でも、声が少し大きくなった時点で、説得力はなかったかもしれない。


 配信が終わるまで、私は一度もスマホから目を離さなかった。インタビューの内容を全部覚えているわけじゃない。でも、零がサクラ様を尊敬していると言った場面だけは、何度も頭の中で繰り返された。いい。すごくいい。今度、師匠に会ったら聞いてみよう。S級ハンター零のことを知っているかどうか。そう思った。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださっている方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

第一章も楽しんでいただけていたら嬉しいです!


面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第三部を最後まで駆け抜ける凄まじいエネルギーになります!


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――次回予告――

魔物に追われ、命からがらダンジョンを脱出した美月。


助けを求めて思い浮かべたのは、師匠と零。

けれど、そこで待っていたのは――いちばん会いたくなかった祖父だった。


次回

『11. 師匠でも零様でもなく、そこにいたのは嫌いな祖父だった』


次回【朝06:00/夕方18:00】更新です!

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