第7話
家族連れが無事に助けられた話は、町中でしばらく話題になっていたけど、そのうち誰も話さなくなった。お母さんに聞いてみたら「しょおもないことばっかり言うてへんで、早ようご飯食べてしまいなさい。いつまでも片付けられへんでしょ」と誤魔化されてしまった。
お母さんは洗濯と掃除と片付けを早くすることばかり言う。それでいつも機嫌が悪い。
お父さんが「女はな、だいたい機嫌の悪い生きもんなんや。こういうときはな、耳日曜にかぎるで。よう覚えときや一樹。みみにちよう~やで」と教えてくれた。
結局のところ、あの家族連れが本当はどうやって助かったのかわからないままだ。
僕がしもの家を訪ねた翌日には、しもは必ず登校してきた。そのたびになんだか誇らしい気分になった。先生やほかの女子とかが、何度家を訪ねても会ってもくれないらしい。
僕としもは、六年生になったときも同じクラスになった。六年生になってすぐ、新しい担任の先生が僕を呼んで「中西、下山のこと頼むで」と言った。
僕は先生の言いたいことを一瞬で理解した。やっぱりそういうことかと思った。それで、ひどくがっかりした気分で、控えめに「はい」とこたえた。
六年生になると、僕には新しい友だちがたくさんできた。しもは相変わらず、よくみんなにからかわれる。しかもあの大神ともまた同じクラスになった。相変わらず先生たちは、しもを当てて答えさせようとするし、大神はしもがどもると大声で笑った。
しもは答えがわかっているのに、答えられないもどかしさに涙をこぼした。でもやっぱり誰も助けてはくれない。
気がつくと、しもはまた学校に来なくなった。先生や女子が何度も家を訪ねたが、しもは誰とも会わなかったらしい。
僕はその頃とても忙しかった。はじめたばかりのサッカーとか、そろばん教室にも行かないといけなかったし、来年は中学生になるから塾通いもすることになっていた。
先生は僕に何か言いたそうにしていたけれど、気がつかないふりをした。本当は先生の期待にこたえて、しもを呼びにいく役目を果たさないといけなかったんだけど、どうしても、どうしてもできなかった。
先生はきっとがっかりしただろうな。




