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観察眼に優れた商人は、世間知らずな錬金術師と共に成り上がる!  作者: ファイアス
第1章:ビジネスパートナーへと育て上げる

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第6話:三度の食事よりも錬金術

 アルケミスターターに記された錬金術のレシピは、何を作っても稼ぐには不向きだった。

 いずれも素材原価、製作の手間に対して、完成品の市場相場が安すぎる。


 とはいえ、これらの基礎なくして上達はしない。

 そのため、この本に記されたレシピの素材を買い揃えた俺はサリアに一通り作らせることにした。

 全部買い揃えても、合計で約7000ゴールドだ。

 黒竜の心臓で得た額の1%に過ぎない。


「俺は露店を開いてくる」

「分かったー」


 全部で10品の調合を終わらせるには、推定15時間はかかる。

 その間ずっと見守っているのはさすがに時間の浪費が過ぎる。

 そう判断した俺は一人仕事へと出かけた。


「おー、いたいたー!」


 露店を開いてから1時間ほど経過したとき、赤髪の小柄な少女が俺に声をかけてきた。

 この寒い季節でも露出の多い格好で行動するショートヘアの冒険者は、お得意様のルーナだ。


「ルーナはまた買い取りの依頼か?」

「もっちろん!お前の店の商品、ロクなものないじゃん」


 当たり前のように失礼な物言いをするルーナは、Cランクの冒険者ライセンスを取得している中級冒険者だ。

 剣や弓の腕はかなりのものだが、素材に対する観察眼はいつまでもGランク未満だ。

 そもそも彼女は自分の扱う道具以外にほとんど興味がなく、覚えようとさえしない。

 だから彼女はいつも拾った素材を全て俺に丸投げしていた。


「今日はどれだけ採集してきたんだ?」

「いっぱいあるよ!」


 ルーナはいつものように籠ごと俺に渡す。


「それじゃお代は後でよろしくー!」


 そう言って彼女は颯爽と走り出す。

 俺はルーナから鑑定料を受け取っていない代わりに、相場よりも5割以上安い価格で素材を買い取っている。

 それでもずぼらな彼女とはwin-winな関係なのだ。


 ルーナの置いていった籠は、帰宅するときもそのまま放置するようにしている。

 放置された籠は営業時間終了後にルーナが回収する取り決めとなっているからだ。

 たまに盗まれることもあるが、籠の中に残しておくものは不要と判断したガラクタばかりなので何の問題もない。


「これは……」


 ルーナの置いていった籠の中には一枚のメモが挟まっていた。

 これはおそらく錬金術のレシピだ。

 アルケミスターターのように市場に流通しているものではないので、レシピ通りに作ってもきちんと仕上がるとは限らない。

 しかし、作成手順が広まっていないものほど価値があるのもまた事実だ。

 作り手が少ない商品ほど、原価に対する取引相場が高い傾向にあるからだ。


 俺は露店にやってくる客を捌く片手間で、ルーナの持ってきた籠の中身を精査する。

 買い取り金額は累計1万3000ゴールドが妥当か。

 これだけ仕入れられれば、それなりの利益が見込めるだろう。


「お買い上げありがとうございました!」


 今日の売り上げは約1万2000ゴールドだ。

 原価を差し引いた純利益は約5000ゴールドと心もとない。

 とはいえ、手元には黒竜の心臓で得た70万ゴールドがあるのだ。

 あまり気にかけなくてもいいだろう。


 露店を畳んだ俺は家へと帰る。


「ただいま」

「……」


 サリアは俺の挨拶に返事することなく、錬金術に集中していた。

 彼女はアルケミスターターに記されたレシピ10個のうち、すでに6個は作り終えていた。


「サリア、食事や休息は取ったか?」

「取ってないよ」


 やっぱりか。

 完成したものにかかる調合時間を考えたら、休息なしでぶっ続けで作業していることは明らかだった。

 集中力があるのは大いに結構だが、自己管理はきちんとしてもらいたい。


 出来上がったものはいずれも商品としての合格ラインに達していた。

 彼女は素材の選定さえできれば、きちんとしたものを作れるようだ。

 様々なレシピを会得できれば、立派なビジネスパートナーに育つことだろう。


 翌日も同じく俺は露店で営業を行い、サリアには錬金術の作業をしてもらった。

 この日は前日と比べて大幅に客足が増えていた。

 売り上げは約2万8000ゴールドで、純利益は約1万9000ゴールドだ。

 ルーナから買い取った商品を中心に売り捌いたため、売り上げに対してかなりの純利益が出ていた。

 彼女もサリアと同じように、利益をもたらすと見込んで囲い込んだ人物だ。

 その判断は正しかったといえるだろう。


「ただいま」

「おかえりー」


 今日は帰宅の挨拶に返答をしてくれたサリアだが、それもそのはずだ。

 彼女は昨日寝る前にはすでに残り2品となるまで作り終えていたのだ。

 昼前にはすべてのレシピを完成させていたことだろう。


「ん?」


 サリアの作り上げた道具の中に一点、見慣れない道具が混じっていた。


「サリア、何だこれは?」

「エルネストさんの机の上に置いてあったレシピメモを元に作ってみたよ」

「このレシピの素材は買い揃えてなかったはずだが……」

「なかった分は自分で買ってきちゃった」

「お前に渡したお金は食事代だぞ!」


 サリアは案の定今日も昼食を食べていなかった。

 好奇心旺盛なのは結構だが、食事を疎かにするな。

 しかもサリアが買ってきた素材は、俺ならば7割は安く仕入れられる。

 ……というか、今日散々売り捌いた素材だ。


 きちんと道具を作れることは分かったから、もう少し金銭感覚を磨いてくれ。

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